本日の一冊は、日本経済に見られるさまざまな現象を「心理学」というキーワードで説いた、ソフトな読み物です。
不景気になればなるほど宝くじが売れる現象や、お金がない、といいつつ高級子供服に群がるお母さんたち、そして雪印乳業や三菱自動車の不祥事まで、さまざまなトピックを取り上げて、説明しています。
身近なニュースや社会現象について読み進めていくうちに、心理学のエッセンスを学べるという、なかなか興味深い一冊です。
では、いつものように、さっそく赤ペンチェック行ってみましょう。
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本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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人は個人でいるときと集団でいるときでまったく別人として振る舞う――ギュスターヴ・ル・ボン(フランスの心理学者)
人は利益が出ている局面では危険を避け、損失局面では危険を好む――カーネマン教授(ノーベル経済学賞の行動経済学者)
経済状況が悪化するほどギャンブルや宝くじの人気が高まる(日本総合研究所)
ブームとは「自分の感覚や好みより他人の判断や行動に従いたいという本能」(社会心理学者のアッシュ)が生み出す
経済学と心理学を融合させた行動経済学では「途中で購入をやめると、それまでにつぎ込んだお金を無駄遣いしてしまったように感じる「心理」をある種の「強迫観念」と位置づける
選択肢が増えるとある種の心理的重圧で商品を選びかねてしまう「決定マヒ」に陥る。機能で細分化され、高度化した「最先端」を、あえて選ぼうとしない消費者の数は無視できない
米国の心理学者アルバート・メラビアンの研究によると、聞き手が話し手の態度を推し量る判断材料の五五%は相手の顔の表情。好印象を持たれる笑顔で接すれば買い物客の財布のひもも緩む
「ニッポン人は和を尊ぶ」。だが、実験経済学の世界からは、意外にも協調的でない国民性が浮かんでくる
「みんなで、できるだけ大きな声を出してください」。呼びかけに応じた声を騒音計で測る。一人、二人、四人、六人……参加者が増えるにつれ一人当たりの声量が小さくなる。心理学者ラタネはこれを、「社会的手抜き」と名付けた
コインを投げる。表か裏か。「いかさま」がなければどちらが出る確率も同じだ。五回続けて表が出た。「次は裏だな」。そう思ったら罠にはまった可能性がある。どちらも出る確率は同じ。社会心理学ではこれを「ギャンブラーの誤謬」と呼ぶ
心理学の「社会的インパクト理論」は、情報の影響力を「情報発信源の強さ(地位、権力など)」と「発信源と受け手との近さ(空間的、時間的近さ)」などをかけ合わせたものとする
文化心理学では、ある文化圏で「普通の人はこうするものだ」という暗黙の通念のことを「文化的自己観」と呼ぶ。相手の文化的な背景を理解し、個々の胸を打つ戦略を練らなければ成功はない
人がよりつらい努力をして一層高い目標を成し遂げようとする気持ちは、心理学でいう「達成動機」のひとつ。良薬は口に苦し。時に逆説的でわかりにくい消費者のココロがにじむ
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理論的な部分だけをピックアップしましたが、この本、ほかにも時事ネタやマーケティングのヒントが満載です。読んだ後は、これまでとは違った視点で日経新聞が読めるようになりそうです。
というわけで、本日の一冊は、
『けいざい心理学!』
http://tinyurl.com/4jpk2
です。薄い本で、さらりと読めます。ぜひ読んでみてください。
目次
まえがき
1.「非合理」が動かす景気の話
2.心をめぐる会社の攻防
3.数字にもてあそばれる人々
4.人間心理の内外格差
5.誤算が生まれる方程式
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