2004年11月7日

『人の値段 考え方と計算』

http://tinyurl.com/6uoxu

本日の一冊は、野球選手や指揮者、教授、中村修二、『バカの壁』編集者などの貢献度と値段を、社会物理的研究の手法で割り出した、ユニークな一冊です。

複雑な要素が絡み合う事象を数値で割り出そうというのですから、もちろん計算は細かくなるのですが、考え方の部分だけを読んでも十分楽しめます。

では、具体的にどのような事例が取り上げられているのか、さっそくポイントを見ていきましょう。
—————————————-
 本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
—————————————-
●野球選手の優勝への貢献度の評価

18のゲーム差に相当する得点差が40点
・打率3割2分・ホームラン30本の3番打者と4番打者は8.75点
・1番打者と2番打者は3.75点
・先発投手陣は4.6点
社会物理的研究の結果わかったことは、野球は一般に思われている以上に投手で決まるゲーム
→にもかかわらず、投手への評価・報酬が不当に低い

●小澤征爾のギャラ、一公演400~700万円は妥当か

たとえば、小澤征爾と親日フィルが組んだコンサートで、2000人の聴衆がホールを埋めた時、「何を求めてコンサートに来たか」を聴衆に聞けば、七~八割が小澤征爾、残りが曲目と答えるでしょう。
つまり小澤と親日フィルの二者の共同といっても、主役は圧倒的に小澤なのです。それなら金銭的評価としては、六対四あるいは七対三で小澤が過半をとるのが当然と思われます。オーケストラが400万円なら小澤への報酬は600万円あるいは700万円あって当然
一方ビジネスの立場から見ても、小澤なら平均8000円の券で2000人のホールを埋め、1600万円の収入をあげることが可能です。小澤に700万円払い、ホールに100万年払っても企画は成立するのです

●主観的な判断を定量的評価として表現する「8-4-2方式」

多数の品物がある時、その全体の重さを8と仮定し、天秤を使って重さの等しい二つのグループに分けます。するとその重さは4ということになります。つぎにまた天秤を使って重さ4のグループを重さ2のグループに分けます。さらに重さ2のグループは重さ1のグループに分けるのです。品物がかなりの数に分割できる場合は、このようにすれば天秤だけを使ってそれぞれの品物の相対的な重さを正確に決定できます。これを仕事の重みづけに使おうというのが提案です

●中村修二の報酬の評価

中村修二の青色発光ダイオード事業における貢献度は、約40%
貢献度は結局のところ、発明者50%、事業化リーダー25%、オーナー経営者25%です。発明者全体の中での中村修二の寄与は(中略)結論だけいうと75~80%。
中村修二の(全体への)貢献度は約40%、著者が算定した分配対象利益に40%をかけ、算定金額は約70億円

●『バカの壁』編集者が受け取るべき対価(著者予測値に基づく)

売上(680円×0.7)×(370万×0.95)=約17億円
総費用 680円×0.7×14,000=660万円
※損益分岐冊数を14000冊と見ている
増刷分について一冊あたりの原価はもろもろ含めて50%
営業利益8億円の税引後利益が約5億円
オーナー経営者の危険負担コストを引いて、分配すべき利益は4億円この4億円をオーナー経営者、事業化リーダー、企画編集者の三者で
貢献に応じて分配→著者の見解は三者等しく1/3ずつつまり編集者が受け取るべき額は1億3000万円
———————————————
一冊通して読んだ感想は、結局、測ることは難しい、ということでした(笑)。

著者は研究者ながら経営的な視点もきちんと盛り込んでいらっしゃるのですが、やはり見方や考え方の点で、完全に客観的にはなれないようです。また、単純に計算だけでは割り切れない、法律解釈や考え方、未来予測などの部分が、どうしても入り込んできます。

それよりも気になったのは、中村修二さんの事件の話がボリュームとしてあまりに多く、ほかの部分が付け合せのような印象を受けた点です。ひょっとしたら、タイトルは『人の値段』となっていますが、もともと中村修二事件の原稿だったのかもしれません。それぐらい、内容は偏っています。基本的に読み応えのある本ですが、その点だけは注意してください。

というわけで、本日の一冊は、

『人の値段 考え方と計算』
http://tinyurl.com/6uoxu

です。まさに、考え方と計算方法を学ぶ、という意味では、参考になる一冊だと思います。次回は、もっとたくさんの事例を、偏りなく、ほどほどのボリュームで出していただけたら、と思います。

目次
第1章 野球選手の個人貢献度の算定
第2章 監督の役割と貢献度の評価
第3章 指揮者への報酬はどうして決まるか
第4章 教授の業績評価
第5章 論文共著者の役割と貢献度
第6章 貢献度評価の原理と実際問題
第7章 中村裁判二〇〇億円の衝撃
第8章 裁判批判への正面切っての反論
第9章 枠組みか中身か
第10章 枠組みとしての特許法三五条
第11章 中身としての発光ダイオードとその事業化
━━━━━━━━━━━━━━━
■ご意見、お問い合わせは、
eliesbook@yahoo.co.jp
■マガジン登録、変更、解除
http://eliesbook.co.jp/bbm/
━━━━━━━━━━━━━━━

この書評に関連度が高い書評

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー