著者は、東京大学助教授で、労働経済学を専攻する玄田有史さん。若年層の雇用に関し、衝撃的な問題提起を行った『仕事のなかの曖昧な不安』が話題を呼んだことでも知られています。
今回は、その玄田さんが、働くことにも学ぶことにも希望を失っている「ニート」(NEET:Not in Education, Employment, or Training)と呼ばれる人々に焦点を当て、この新しい概念と、それに当てはまる人々の問題点や悩みを紹介した、注目の一冊です。
ただ、正直、注目の一冊とは言え、中身の大半は読むに値しない、雑誌に毛が生えた程度の内容です。
この本は玄田さんとフリーライターの共著になっていますが、二人の論調はかみ合っていませんし、たわいない「ニート」との会話がだらだらと続くインタビュー部分は、正直、退屈以外の何ものでもありません。
ただ、最初と最後の玄田さんの論考は、読み応えがあります。
ということですので、本日の赤ペンチェックは、玄田さんの執筆部分から、おもしろいところだけを抜き出してみることにします。
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本日の赤ペンチェック ※本文より抜粋
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多くの若者が失業した原因は、職業意識の低下でも甘えでもない。不況のせいで求人が激減したことこそ、失業が増えた直接の理由である
業績の悪化と人件費の増大に追い込まれながら、多くの企業にとって、社員との軋轢がもっとも少ない人員調整の手段として選んだのが、若者の採用凍結だった
就職にも進学にも希望を失っている無業の若者が、今、日本に40万人いるのだ。なのに、この働くことも学ぶこともすべて放棄した40万人という巨大な存在は、社会のなかで、完全に忘れ去られている。
ニートにあるのは、将来見通しについての限りない希望のなさと、状況を転換することの困難さだ。ニートの日常の多くは、昼過ぎまで寝て、日常はぼんやりテレビを見たり、ときには夜まで「ブラブラ」したりといった生活を繰り返している
学業成績、不登校など、学校時代の状況がニートへのなりやすさと強い関連を持っている
ニートでは、最終学歴が中卒もしくは高校中退だという場合が、きわめて多い
衝撃をおぼえるのは、求職活動をやめてしまった理由として、「なんとなく」という、明確な原因を欠いている場合が一番多い事実だ
ニートが抱える対人関係の難しさは、多くが中学・高校時代にはじまっている
自分の存在意義に過大な不安を感じなくてすむような体験。他人と交わり働く自分に対するささやかな自信を実感できるような体験。そんな自信を持つためのリアルな方法を、義務教育を終えるまでの段階で、生きる知恵として身につけること。それこそが、今考えられる、ほとんど唯一のニート予防策だ
(兵庫県・富山県の職場体験プログラムをうけて)
教師に指示されるのではなく、自分たちだけで、遅刻することなく五日間通う。そのことが、教室にはない緊張感や責任感、そして充実感を、生徒たち一人ひとりに個人的な体験としてもたらすのだ
14歳が一週間働く意味は、そこでやりたい仕事をみつけることではない。自分がやりたいと思ってやってみた仕事の現実に触れ、自分の持っていた希望や夢がいかに表面的な印象や理解であったかを知ることのほうが、ずっと意味がある。(中略)やりたいことがあって、それが仕事にできれば、幸せだろう。だが、やりたいことがないからといって、それは不幸なことではない。仕事はそれがやりたいことであってもなくても、できるのだ。そこそこ、意外な面白みだってある
この本を読んだ人はわかるはずだ。ニートは、働く意欲の弱い一部の若者の問題ではけっしてない。自分も一歩まちがえれば、ニートだったかもしれない
私は、社会の深刻化の原因を意識や意欲の低下のせいと、単純に結論してはいけないことを経済学から学んだ。社会的に望ましくない事態が生じたとき、それを特定個人の悪しき意識の変化として解釈することには慎重でなければならないと経済学は教える。意識の変化という現実がそこにあったとしても、責めるべきは個人ではない。変化を生み出してきた、社会もしくは経済のシステムそのものなのだ
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最後の部分は、経済学者としての著者の真摯な姿勢を感じますね。きっと素晴らしい先生なのでしょう。
というわけで、本日の一冊は、
『ニート』
http://tinyurl.com/4bvak
です。仕事と幸せの関係について考える、よいきっかけとなる一冊かもしれませんね。
目次
第1章 「ニート」という若者
第2章 ニートに会う
第3章 14歳の分岐点
第4章 14歳と働く意味
第5章 ニートからの卒業
第6章 誰もがニートになるかもしれない
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