【ついに登場。イーロン・マスク初の公式伝記。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163917306
本日ご紹介する一冊は、稀代の起業家、イーロン・マスク初の公式伝記。
執筆は、『スティーブ・ジョブズI』『スティーブ・ジョブズII』を書いた米国を代表するノンフィクションライター、ウォルター・アイザックソンが担当しています。
『スティーブ・ジョブズI』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062171260
『スティーブ・ジョブズII』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062171279
アイザックらしい、丹念な取材に基づく力作。関係者のコメントと豊富なエピソードで、一瞬たりとも飽きさせることがありません。
生まれ育った南アフリカ、イーロンの人格を形作り、生涯にわたって影響を与えた奇人の父、冒険心にあふれ、いろんな意味で特別だったイーロンを支えた母、兄弟とビジネスパートナー…。
ここまでドラスティックに環境や事業、人間関係が変化する生涯も珍しいですが、それがまさにイーロン・マスクという人物なのでしょう。
本書から浮かび上がるのは、イーロンのリスクを恐れない性格と、前提を疑う力、一見無茶だけれど理にかなった要求、そして人を鼓舞する能力です。
長所が短所に転じるケースもあったようで、この上巻では、次々と去っていくビジネスパートナーや従業員、2人の妻との関係とその後の恋愛関係が書かれています。
上巻で扱っているのは、イーロンの家庭環境と幼少期、大学時代、ZIP2、ペイパル、スペースX、テスラまでの物語。
下巻では、スターリンク、オプティマスロボット(AI)、ロボタクシー、ツイッターなどに加え、ジェフ・ベゾスとの確執(第2ラウンド)、お金や子育てについて書かれています。
さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。
—————————-
「手荒にしてくるやつがいたら顔の真ん中に思いきりパンチをたたき込めばいい、そうすれば二度と手荒なまねはしてこないとわかりました。(略)」
「イーロンくんは知的障害だと思われます」先生方によると、いつもぼうっとしていて話を聞いていないというのだ。「窓の外ばかり見ていて、先生の話を聞いてねと注意しても、『葉っぱが茶色くなってきてます』なんて言うんですよ」でもそれって、イーロンが正しいんじゃないんですか、葉っぱは茶色くなりつつありますよねとエロールは返したらしい
「怖いという理由で判断を変えることは絶対にしないんですよ」とピーター。
「そのあたりは、子どものころからはっきりしていました」
「ビジネスの勉強をしないと、その勉強をした人の下で働くしかなくなりそうだと思ったのです」とマスクは言う。
「物理学を修めて製品を開発することと、ビジネスの学位を持つ人の下で働くのは絶対に避けること、これが目標でした」
揺れがちな感情を鎮めるための方法
・帝国建設型戦略ゲームでゾーンに入る
・百科事典を読みまくる
・パーティに参加する
マスクのやり方は、ありえない締め切りを設定し、なんとかまに合わせろと発破をかける、である
「いやもう腹が立って腹が立って。腹が立つと、私は、問題の枠組みを変えようとするんです」
これは「要件」だからしなければならないと口にした技術者は、マスクにとことんやりこめられる。その要件はだれが作ったのか、と。「軍」とか「法務部」というレベルではなく、その要件を実際に作った担当者個人の名前まで押さえておけというのだ
「リスクを報告し、エンジニアリングデータを見せれば、本人がさっと判断して、責任を我々から自分の肩に移してくれる。イーロンはそういう人なんです」(ブザ)
五つの戒律
1.要件はすべて疑え
2.部品や工程はできるかぎり減らせ
3.シンプルに、最適にしろ
4.サイクルタイムを短くしろ
5.自動化しろ
—————————-
イーロン・マスクは、あまりに人物として特殊過ぎて、真似できることはないだろうと思っていたのですが、意外や意外、ビジネスに使えそうな思想や原理原則、アイデアが数多く出てきて、これは使える本だと思いました。
ウォルター・アイザックソンが書いているだけあって、娯楽としても超一級の内容です。
400ページ超ですが、面白くてあっという間に読めてしまうと思います。
ぜひ、読んでみてください。
———————————————–
『イーロン・マスク(上)』ウォルター・アイザックソン・著 井口耕二・訳 文藝春秋
<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163917306
<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0C5QMW1JY
———————————————–
◆目次◆
序 章 火の女神
第1章 冒険者の系譜
第2章 マスク自身の心
第3章 父との暮らし
第4章 探求者
第5章 脱出速度
第6章 カナダ
第7章 クイーンズ大学
第8章 ペンシルバニア大学
第9章 西へ
第10章 ZIP2
第11章 ジャスティン
第12章 Xドットコム
第13章 クーデター
第14章 火星
第15章 ロケット開発に乗りだす
第16章 父と息子
第17章 回転を上げる
第18章 ロケット構造のマスク流ルール
第19章 マスク、ワシントンへ行く
第20章 創業者そろい踏み
第21章 ロードスター
第22章 クワジュ
第23章 ツーストライク
第24章 SWATチーム
第25章 ハンドルを握る
第26章 離婚(2008年)
第27章 タルラ(2008年)
第28章 スリーストライク
第29章 崖っぷち
第30章 4回目の打ち上げ
第31章 テスラを救う
第32章 モデルS
第33章 民間による宇宙開発
第34章 ファルコン9、リフトオフ
第35章 タルラと結婚
第36章 生産
第37章 マスクとベゾス
第38章 ファルコン、鷹匠に従う
第39章 タルラのジェットコースター
第40章 人工知能
第41章 オートパイロットの導入
第42章 ソーラー
第43章 ザ・ボーリング・カンパニー
第44章 苦難の人間関係
第45章 闇に沈む
第46章 フリーモント工場の地獄
第47章 オープンループ警報
第48章 落下
第49章 グライムス
第50章 上海
第51章 サイバートラック
原注
写真クレジット
この書評に関連度が高い書評
この書籍に関するTwitterでのコメント
お知らせはまだありません。