【イェール大学人気講義】
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本日ご紹介する一冊は、韓国出身、弱冠25歳でアメリカで心理学の博士号を取り、イェール大学で人気教授となった、アン・ウーキョン氏による認知心理学の本。
人間のバイアスについて論じた本ですが、さすが大講堂を毎週満員にするだけあって、説明が面白い。
出てくる理論は、確証バイアスだったり、損失回避だったり、王道の話が多いのですが、理論を紹介して終わっていないところがいい。
類書だと、「人間にはこういうバイアスがあるから気をつけましょうね」で終わっているところが、ではどうすればいいのか、までが書かれているところが新しいと思います。
著者いわく、<バイアスを避けるには、「そのバイアスをかけるな」と注意する以上の処方箋が必要>で、本書には現時点でわかっている有効な戦略がいくつか紹介されています。
<何度も見ると、なぜか「できる」と思ってしまう>流暢性効果に対しては、「やってみる」「自分の知識を書き出す」が効果的。
ネットのデマやエピソード、身近な人の話に惑わされないためには、「大数の法則」「平均への回帰」「ベイズの定理」を理解するなど、対策が書かれているのが親切だと思います。
一時期盛んだった乳がんとマンモグラフィー検査の関係に関しても、そのトリックが暴かれており、興味のある人は読んだらいいと思います。
認知心理学をビジネスやセールスに活かしたい人はもちろん、バイアスに惑わされず、賢明な生き方をしたい方にもおすすめの一冊です。
あ、でもあんまり完璧主義だったり、自己管理し過ぎるとやばいということも書いています。お気をつけください。
さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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人は新たな知見を得たときに、それが見出された経緯を知ると、その知見が事実だと信じる気持ちが強くなる
基本的なメカニズムを思い描くことができると、相関関係に因果関係を見出そうとする傾向が強くなる
自分の知識を書き出すと過信が軽減されうる
少し説明を求めるだけで、人は謙虚になる
何かを完了させるのに必要となる時間と労力は、少なく見積もられることが多い
ひとつのタスクを複数の小タスクに解すると、計画錯誤が軽減される
見積もりより「50パーセント」多く時間を確保する
アメリカでは、拳銃、ショットガン、ライフルを合法的に購入でき、州によっては半自動小銃まで買える。銃乱射事件が起きるたびに、乱射した犯人を責める人々がいる。それは、銃所持者でも人を撃つ人はほとんどいないので、乱射した犯人には、心の健康、怒りを抑える努力、価値観など、どこか普通でない部分があるに違いないという論理だ。しかし、世界の観点から見ると、異常なのは明らかにアメリカという国である
「しなかったこと」より「したこと」のせいにしてしまう
イェール大学の同僚で、53歳で亡くなったスーザン・ノーレン・ホークセマは、臨床心理学の分野で画期的な調査を実施した。それにより、こうした反芻がいかにしてうつを招くかが明らかになっている
人は一般に、問題を抱えている人に関する統計データより、問題を抱える特定の人に対して強い反応を示す
ジンクスは選手のせいというよりも、「平均への回帰」として知られる統計現象
自分のもともとの信条に相反する証拠は、対立を深める結果を招いた
自分にとって重要な成果の内容が不確かな状態にあると、意思決定の能力がうまく機能しなくなる
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一番最後に引用したことを仕事に応用すると、重要な健康診断の結果や、親しい人の手術の結果を待っている部下には重要な意思決定を任せてはいけないということですね。
うーん、勉強になります。
この分野の本は、たくさん読んでいますが、なかでもとりわけ面白く、役立つ内容だと思います。
「大数の法則」「平均への回帰」「ベイズの定理」について、丁寧な解説があるのがいいですね。
ぜひ、読んでみてください。
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『思考の穴』アン・ウーキョン・著 花塚恵・訳 ダイヤモンド社
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◆目次◆
INTRODUCTION わかっていても避けられない?
Chapter01 「流暢性」の魔力
Chapter02 「確証バイアス」で思い込む
Chapter03 「原因」はこれだ!
Chapter04 危険な「エピソード」
Chapter05 「損したくない!」で間違える
Chapter06 脳が勝手に「解釈」する
Chapter07 「知識」は呪う
Chapter08 わかっているのに「我慢」できない
最後に
謝辞
訳者あとがき
参考文献
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