【経営の視点が変わる】
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BBMでは度々、ファイナンス思考に関する本をご紹介していますが、本日ご紹介する一冊もまた、ビジネスパーソンにファイナンス思考の有用性を説く一冊。
著者は、三菱UFJフィナンシャル・グループCFO、米国ユニオンバンク取締役を経て、現在、ニコン取締役専務執行役員CFOを務める、徳成旨亮(とくなり・むねあき)さんです。
「インスティテューショナル・インベスター」誌の投資家投票でベストCFO(日本の銀行部門)に4年連続で選出された実力派で、本書では著者がこれまでCFOとして関与してきた3つのトピックスを主に扱っています。
その3つとは、
「グローバルM&A」
「ターンアラウンド(経営改革による業績回復)」
「サステナビリティ・ESG」
です。
M&Aが利益の7割近くを占める三菱UFJのM&A投資の話、史上最大の赤字から復活したニコンの再生物話、エーザイのESG経営の話などが紹介されており、興味深く読めますが、なかでも参考になるのは、CFOがどういう投資判断を行うか、業績改善するために、経営指標のどこに目をつけるか、という視点でしょう。
リーマン・ショック後、90億ドルを投じて米国経済を救ったMUFGのモルガン・スタンレーへの出資や、PER改善のため、ニコンがr(資本コスト)低減、g(期待利益成長率)引き上げの両面からどうアプローチしたかという話が、特に勉強になりました。
主にアメリカの話ですが、創業者やCEOが大きな議決権を持つ「クラス株」導入の話なども、興味深く読ませていただきました。
さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。
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「100年に一度」とも言われたリーマンショックの直後に、90億ドルの巨額小切手で「落ちてくるナイフ」とも思われたモルガン・スタンレー株を買い、M&Aアドバイザリー業務を強化したMUFGの行為は、日本企業の成長を支援したいという思いや戦略に沿ったものだった
ニコンの経営陣が行ったイニシアティブ
1.バランスシートの最適化
2.2年連続営業赤字だったカメラ事業の黒字化
3.新たな収益の柱の確立
ニコンのPER改善のための2つの方策
r(資本コスト)低減のために
・業績予想の精度向上
・事業ポートフォリオ戦略による収益の安定化
・「守り」のESG
g(期待利益成長率)引き上げのために
・サステナビリティ戦略と一体化した成長戦略
・成長を支える「バランスシートマネジメント」
・成長のための「人的資本経営」
資本コストを下げるためには、投資家にとって「サプライズのない経営」を行うことが肝要
人的資本への投資を含む非財務価値増大への取り組みが、将来の財務的成長や企業の収益力確保にどのようにつながっているのか、あるいはつなげようとしているのか、このストーリーこそが重要
金融機関に選ばれるために行った3つの施策
1.バランスシートが再び拡大するストーリー提示
2.金融機関にもメリットのある新しいファイナンス機会の提供
3.M&Aの世界的プレイヤーであることのアピール
「CFO思考」が最も必要になるのは、M&Aの実効フェーズでもPMIのフェーズでもなく、撤退・売却フェーズだと考えています
CFOは社内外のステークホルダーに対する最良のスポークスマンであるべき
多くの場合、主力事業が衰退する企業は早く見切りをつけて、経済資本(現預金)や人的資本(技術者や従業員)を市場に解放したほうがよい。資本や有能な人材を欲しているベンチャー企業が米国にはたくさんあるのだから(米国の有名投資家)
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途中、ファイナンスの基礎知識の話が続いたり、CFOの実務の話が続いたり、中だるみする部分はありますが、個別ケースでCFOがどう判断するか、という部分は、じつにスリリングで読み応えがありました。
CFO思考を身につけ、経営やキャリアに活かそうとする向きには、役立つ本だと思います。
ぜひ、読んでみてください。
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『CFO思考』徳成旨亮・著 ダイヤモンド社
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◆目次◆
はじめに なぜ今「CFO思考」が必要なのか
第1章 CFOは誰と向き合い、何を動かす存在なのか
第2章 CFOはどのような仕事をしているのか
第3章 CFOが担う10の責任領域と役割
第4章 「CFO思考」で日本経済に成長を
第5章 グローバルで活躍できるCFOへのキャリアステップ
おわりに
CFOのチェックリスト
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