【ダイソン本人による、必読の起業物語】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4296113062
本日ご紹介する一冊は、革命的と言われたサイクロン式掃除機を開発し、ダイソンを世界的企業に押し上げた、同社の創業者兼チーフエンジニア、ジェームズ・ダイソン本人による起業物語。
画期的掃除機の発明の裏に、どんな失敗や努力があったのか、ビジネス特有の理不尽さがあったのか、本人の口から赤裸々に語られる、超絶面白いノンフィクションです。
帯に「成功の陰に、5126回の失敗あり。」と書かれていますが、なぜこの数字を正確に覚えていられるのか? そこに、ダイソン氏の常人離れした実験への執念を見ることができます。
<世間では、発明とは才気のひらめきであるかのように語られる。例の「ユーレカ!」の瞬間だ。だが、残念ながら、そういう発明はめったにない。発明の本質とは、成功の瞬間に至るまで、失敗を受け入れ続けることにある>
著者は、この「ユーレカ!」幻想について、本書のなかで、再度こう語ります。
<僕だってそうあってほしいと思う。だが、ユーレカ的な瞬間はめったにない。むしろ、まず一つの設計を試し、それから一カ所ずつ変更してみることで、うまくいくこと、いかないことがわかってくる>
つまり、5126回の失敗はその結果であり、その間15年間、著者と家族は借金まみれの生活に耐えなければならなかったということです。
では、その間、著者を支えたものとは何だったのか? 何を心の糧に、障害だらけの道を突き進むことができたのか?
著者が憧れたエンジニアリングの偉人たち、決定的瞬間まで付き合ってくれた妻、危機を救ってくれた同志や取引先…。
読者は、ダイソンの起業物語を追体験することで、起業の困難と醍醐味、そしてなぜ理想を叶えるために挑戦する必要があるのか、その理由を知ることになるでしょう。
これから活躍するアーティストやエンジニア、起業家はもちろん、それを支援する大人たちにもぜひ読んで欲しい一冊です。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
—————————-
研究とは、科学に則って得られた理論に従い実験を繰り返し、失敗を受け入れるどころか喜びさえしさらに実験を続けることである。発明には、ひらめきよりも、持続力や忍耐強い観察のほうが重要だ
僕は新しいものーー見た目は変わっているかもしれないものーーを創りたかった。売れるとわかっているから作るのではないものだ。独創的でまったく新しい製品をデザインして作って売ることこそ究極の挑戦である、と僕は考える。これを実現するためには、しっかり教育を受けただけではだめで、単なるデザイナーやエンジニアを超える何者かになる必要がある。僕が模範とする本田宗一郎やアンドレ・シトロエン、そしてソニーのウォークマンを生み出した盛田昭夫のように、プロセス全体をコントロールする必要がある
あなたの発明家気質に賭けましょう、と彼女は言ってくれた。そして、僕たちはそうした。僕にとっては、リスクこそが惰性に対する解毒剤なのだ
起業家精神を持っていなければ、発明家は自分が作ったラディカルで革命的なプロダクトを市場に出せなくなったり、あるいは権利を失ったりすることもある。起業家にならなければ、自分の技術をライセンスするしかなく、特定の新しいアイデアや未来に対する考え方への長期的にコミットするかどうかもわからない他人の会社のなすがままになる
たいていの掃除機の三倍以上もするDC01の価格は高すぎると警告されたことがあった。だが、本当によく売れた。(中略)掃除機が吸い込んだ塵や細かなホコリが透明な容器の中に溜まっているのを見たい人なんていないと言われたこともある。簡単な市場調査もこの主張を裏付けていた。しかし、ピートもシミオンも僕も、吸い込んだ細かなホコリが透明容器の中に溜まっていくのが見えるのは面白いと思ったから、市場調査を無視した
ダイソンでは、電力が失われても電圧は維持されるソフトウェアと電子機器を開発した。これにより、電池が「空になる」スピードは速くなるが、少なくとも最後まで性能が落ちることがなく、電源は突然切れる形になる。ライバル企業から、ダイソンの充電は持ちが悪いと言われかねず、リスクの高い方針だった。しかし、掃除機を使う人はできるだけすばやく効率的に掃除をしたいと思っているため、モーターがだんだん遅くなる音が聞こえたり吸引力が衰えたりするほうを嫌がるだろうと僕たちは考えた
—————————-
起業モノのノンフィクションとして読んでも面白いですが、土井が本書を推す一番の理由は、スーパーカブを生んだ本田宗一郎、ウォークマンを生んだ井深大と盛田昭夫、市場調査を無視し、英国史上最も売れた車、ミニを生んだアレック・イシゴニスなど、ダイソンに影響を与えた素晴らしいイノベーターたちのストーリーが、ダイソン自身の言葉で語られているからです。
彼がイノベーターたちや自身の経験から何を受け取り、どうやってそれを製品やビジネスに実装していったのか、そのプロセスを辿ることは、どんな勉強よりも著者に「起業家精神とは何か」を教えてくれるでしょう。
1000冊に一冊の、優れたビジネス書だと思います。
ぜひ、読んでみてください。
———————————————–
『インベンション 僕は未来を創意する』ジェームズ・ダイソン・著
川上純子・訳 日本経済新聞出版
<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4296113062
<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0B1PQX7XM
———————————————–
◆目次◆
イントロダクション
第1章 少年時代
第2章 アートスクール
第3章 シートラック
第4章 ボールバロー
第5章 コーチハウス
第6章 DC01の誕生
第7章 コアテクノロジー
第8章 真のグローバル企業へ
第9章 最高の電気自動車
第10章 農業を再生する
第11章 教育を変える
第12章 未来をつくる
あとがきにかえて
謝辞
付録
この書評に関連度が高い書評
この書籍に関するTwitterでのコメント
お知らせはまだありません。