【世界の見方が変わる本】
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先日、『くらべる!決算書図鑑』を紹介した際、数字において比べることの大切さを述べましたが、比べるのが大切なのは、文明においても同じ。
※参考:『くらべる!決算書図鑑』
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本日ご紹介する一冊は、東アジア哲学を専門とする京都大学大学院人間・環境学研究科教授、小倉紀蔵さんによる、画期的日本論です。
日本を論じる際、多くの論者は「欧米」と日本を比べるわけですが、これでは日本の真実は見えてこない。
本書では、「群島の文明と大陸の文明」という比較で日本、アメリカ、中国、韓国を論じており、さらには日本の各時代を説明しています。
日本史の教科書を読んだだけでは見えてこなかった各時代の精神性と、現在につながる影響がわかり、じつに興味深く読むことができました。
なかでも面白かったのは、著者が提唱する、「三つの生命」の考え方。
<第一の生命>=生物学的生命、肉体的生命
<第二の生命>=霊的生命
<第三の生命>=美的生命
この三つの生命の観点から各時代を眺めると、これまでとはまったく違った時代の評価ができるのです。これには驚きました。
最近、長崎で頻繁に物々交換をしているのですが、物々交換で感じる喜びと、貨幣の何が違うのか、よくわかった気がしました。
ブロックチェーンやメタバースの時代、教養として読むことを強くおすすめしたい書籍です。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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海洋性を発揮して中国・朝鮮との交流を活発に行っていたときに日本は大陸文明化し、その交流を遮断してからは国風文化つまり非大陸文明化(群島文明化)したのだ、というメカニズムを明晰に認識すべきです
米中の対立は、両国がともに「大陸国家でありしかも海洋国家としても覇権を握りたい」から生じるのです
ここでは群島文明というものを、思想的・哲学的に理解してみたいと思います。それは帰納的(反演繹的)思考、経験主義(反理念・反理性主義)、そして反超越主義……などによって規定されるものです
群島は、大陸から完全に分離されているのではありません。大陸の文明を移入しながら、それを島の力で相対化・分解しつつ、風土や文化に合わせて再構成するのです
大陸文明は、普遍主義・理念主義・本質主義・超越主義などを基盤とせざるをえない傾向を持ちます。陸続きで侵略や略奪が横行し、革命や政変が伝播しやすく、政権を維持するためにもそれを打倒するためにも、超越的な神・理念・価値を絶対的に必要とするのです
群島文明は大陸文明を排除するのではありません。包摂し、相対化するのです。その日本が、大陸文明的な演繹性・理念性・超越性に自己を同一化させてしまうとどうなるか。わたしたちは戦前の日本にその姿を見ることができます(中略)この悲惨な記憶を日本人は絶対に忘れないでしょう。日本という群島文明に、巨大な使命感を持って演繹的・統合的な大陸文明を性急に導入しようとしたことによる失敗だったのです
わたしたちは、「もののあはれ」や「美」という感覚だけで生きていくことができる
わたしたちが生権力に対抗しつつ、しかも宗教的な絶対性・普遍性に回収もされずに生きることのできる道はほぼひとつです。それは、<第三の生命>に生きることです
物と物を交換した瞬間、そこには偶発的な<第三の生命>が立ち現われていたはずです。この感覚がなくなっていくのが、貨幣という<第二の生命>の出現以降のことです
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これまで自分が学んだ歴史は何だったのか、と思うぐらい、衝撃の一冊でした。
佐藤優さんが「日本論の最高傑作」と言ったのもよくわかります。
ぜひ、読んでみてください。
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『群島の文明と大陸の文明』小倉紀蔵・著 PHP研究所
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◆目次◆
第1章 日本の文明・文化・思想とはなにかーー方法論の問題
第2章 日本の文明の群島性
第3章 群島文明と『論語』の<アニミズム>
第4章 <第三の生命>
第5章 三つの生命で文明を読み解く
第6章 三つの生命で日本思想史を読み解く
第7章 「もののあはれ」「わび」「さび」とはーー日本文化と美意識
第8章 日本経済はなぜ衰退したのか
第9章 コロナ禍以後の世界
あとがき
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