【徹底取材であぶり出した成功の光と影】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4296000675
本日ご紹介する一冊は、ベストセラーとなった『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』の著者、ブラッド・ストーンによる待望の第2弾。
※参考:『ジェフ・ベゾス 果てなき野望』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822249816
著者が前作で書いたのは、2012年末時点の、時価総額1200億ドルのアマゾンまで。その後、同社は時価総額1兆ドルに達し、事業も多岐にわたっています。
その後、ジェフ・ベゾス自身も妻マッケンジーと離婚し、CEOも退いたわけで、著者はその辺りも含め、アマゾンとジェフ・ベゾスのその後を書きたかったようです。
<昔ながらのジェフ・ベゾスではなくなっていることはまちがいない。だから私はこの続編を書くことにした。これほど短い期間でアマゾンがこれほど大きくなれた理由を明らかにしたいと思ったのだ>
その理由をシンプルにまとめると、大きなビジョンを描き、M&Aも含め優秀な人を集め、任せるべきを任せて大量に資源を投入した、ということになりますが、本書ではその際に生じた軋轢についても、忖度なしで書かれています。
前作同様、丹念な取材を重ねて書かれており、本書の制作のために数百人への徹底取材を重ねたそうです。
そのため、アレクサ、アマゾンゴー、インド、メキシコへの進出、AWS、ワシントンポスト再建、プライム・ビデオ、マーケットプレイス、アマゾンフレッシュなど、各プロジェクトの主要プレイヤーや詳細についても書かれており、実務面で勉強になることがたくさん書かれています。
前作でも感じたことですが、この著者は皮肉屋で、その分成功の光の部分だけでなく、影の部分についても執拗なほど調べ、書いてきます。
本書でも、新たに明らかになった事実やスキャンダル、関係者の証言がたっぷり盛り込まれており、ノンフィクション好きもビジネス書好きも満足できる内容に仕上がっています。
プロジェクトのゴタゴタが書かれているという点で、前作以上に、経営者にとっては勉強になる一冊ではないでしょうか。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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「事務所に入った瞬間、相性抜群だと思いました」そう言うリンジーは、理由として、研究者の気位が高いせいで進展しにくい分野でイボナ社が成功していることを挙げた。「寄せ集めで純粋学問以外にも目が向くし、科学で目が見えなくなったりしないのです」
「ジェフは、スピードを上げたり規模を大きくしたりに必要なことをやれるようにしてくれました。人というのは、つい、手持ちの資源でできることを考え、自分で自分を制限してしまいがちです……どこまでやっていいのかわからなかったりもします。ジェフは、制限なんかないんだよと我々に示してくれたのです」(アレクサ幹部トニー・リード)
「ふつうの店なんぞつくってもしょうがないとジェフは言っていました。つくりたいのは小売りの世界を変えるようなお店、いままでだれもつくろうとしたことのないお店、何百年もリアル店舗がしてきたやり方を変えてしまうようなお店だというのです」(アマゾンゴーエンジニアリング担当ディレクター バリ・ラガワン)
「ジェフは『今日はだめだが、明日にはなんとかなるかもしれない』と言う人なんです。そして顧客が気に入ることなら、その実現に必要なキャッシュフローを用意してしまうんです」(財務担当役員)
「ジェフが持ち込んだもののなかで一番は実験の文化でしょう。大金をつぎ込んだあげくプロジェクトが失敗したら監査委員会の前に立たされるんじゃないかと心配する人はここにいません。みな、失敗を恐れなくなりました」(ワシントンポストCIOシャイレシュ・プラカシュ)
ホールフーズ経営陣の更迭はなかった。ザッポスとその創業者トニー・シェイの例を見てもわかるように、実際のところベゾスは、会社を買収してもエキセントリックなCEOに経営を任せ自由にやらせることが多い。彼らの経験から学んだりデータや教訓を収穫するほうがいいと考えているのだ
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大失敗に終わったファイアフォンや、中国進出など、失敗のケースについても丁寧に書かれているのが勉強になります。
ジェフ・ベゾスや彼が雇った人々の性格がプラスに働いた面とマイナスに働いた面、両方が書かれており、事業というものが本来持つ複雑さ、運について考えさせられる一冊です。
アマゾンという巨大ビジネスの詳細を書いた本ということで、一回読んだだけでは理解できないディープな内容。その上、500ページ近くある大著です。
読むのは骨が折れますが、中身の有用性と面白さを考えれば、挑む価値のある一冊だと思います。
ぜひ、読んでみてください。
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『ジェフ・ベゾス』ブラッド・ストーン・著 井口耕二・訳 日経BP
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◆目次◆
第I部 発明
第1章 アレクサ
第2章 アマゾンゴー
第3章 インド、メキシコに進出
第4章 AWSとプライムデーの躍進、そして過ちを認める
第5章 ワシントンポスト再建
第6章 プライム・ビデオの成功とハリウッドスキャンダル
第II章 レバレッジ
第7章 マーケットプレイス
第8章 アマゾンフレッシュ、プラムナウ
第9章 物流
第10章 アマゾン内広告
第11章 ブルーオリジン
第III部 無敵のアマゾン
第12章 第2本社
第13章 大スキャンダル
第14章 強くなりすぎた代償
第15章 CEO交代
謝辞
原注
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