【古代ローマ最強の弁論家、キケロの話し方】
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本日ご紹介する一冊は、プリンストン大学出版局による、「古代の哲人に学ぶ人類の知恵シリーズ」、キケロによる話し方の本です。
キケロは、貴族階級ではなく、政界ではいわゆる「新参者」でしたが、弁論術を駆使することにより、出馬資格を得た初めての年にトップ当選を果たし、ローマの属州シチリアの財務官となりました。
そして、その後も造営官、法務官と出世の階段を昇り続け、ついには共和制ローマにおける最高官職である執政官にまで昇りつめたのです。
本書には、当時のローマの教養人の必須教育とされた、キケロの弁論術のエッセンスが書かれています。
話し方本全盛の世の中ではありますが、2000年前にこれほど精巧な弁論術を完成させたキケロの実力には、驚くばかりですね。
話し方は目的や話し手、聞き手によって変えるべきこと、またその具体的手法を述べており、今でも有用な内容です。
最近の話し方本は、わかりやすさを追求するあまり、シチュエーション別の臨機応変さを欠くきらいがありますが、本来話し方は、ファッションと同じでTPOに合わせて使い分けるべきでしょう。
そういう意味で、話し方は結局トレーニングが大事なのですが、本で学べる理論としては、本書はかなりハイレベル。
人前で話す人は、ぜひ押さえておきたいところです。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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雄弁に語られることのない知性は社会の役に立たず、知性を伴わない雄弁さは、社会に害悪をもたらすことはあっても、けっして有益にはなり得ない
弁論術として使われる説得の方法には、自分の主張を論理的に証明する方法(ロゴス)、聴衆に好感を抱かせる方法(エートス)、弁論の内容に合わせて聴衆の感情を誘導する方法(パトス)の3種類がある
人の心というのは、相手の品格、功績、名声に惹かれやすい
アントニウスは『弁論家について』の続く1節のなかで、感情を使った説得を上手におこなうには、聴衆の心にかき立てようとしている感情を話し手自身が感じていなくてはならないと断言している
現代でも活用される基本の5手順
・着想(主題の発見)
・構成(内容の順序立て)
・表現の選択(内容に対する適切な言葉選び)
・記憶(内容の暗記)
・演出(声、表情、身振りの工夫)
どのような立証も、次のいずれかの方法で反証できるーー。
(1)1つ、もしくは複数の根拠を否定する
(2)根拠そのものは正しいと認めた上で、根拠から導かれる結論を否定する
(3)根拠と結論の間に論理的な誤りがあることを示す
(4)その根拠と同等、もしくはより強い説得力のある別の根拠を示す
弁論の表現を論じるもう1つのアプローチとして、「スタイル」という観点を用いる方法がある。最もよく知られているのは、弁論をその特徴によって「簡素」「中間的」「荘重」の3種類に分類する方法だ。キケロは『弁論家』のなかで、この3種類の分類を元にした、独自の理論を展開している。それは、アリストテレスの提唱した、ロゴス、エートス、パトスを、それぞれラテン語の3つの動詞
「probare(証明する)」「delectare(楽しませる、魅了する)」「flectere(心を動かす)」に結びつけて、それを3種類のスタイルとして定義する、というものである
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いわゆる社交やエンターテインメントでは使えないノウハウですが、リーダーの弁論術としては、学んでおいて損のないノウハウです。
話し方のプロも、教養として読んでおくといいのではないでしょうか。
ぜひ、チェックしてみてください。
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『心を動かす話し方』キケロ・著 文響社
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◆目次◆
第1章 「言葉」がもたらすもの
第2章 「言葉」で人を納得させる
第3章 話の「主題」を見きわめる
第4章 話の「構成」を組み立てる
第5章 最も伝わる「表現」を選ぶ
第6章 「記憶」して自分の言葉にする
第7章 心を動かす「仕草」と「表情」
第8章 伝える力を高める「訓練法」
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