【問題は上流から解決せよ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478108773
昔、アマゾンでバイヤーをやっていた頃、仕入れでミスって、あわてて在庫の手当てをしたところ、上司に褒められました。
「さすが土井君、よく調達できたね」
そこで気づいたことは、「上司は問題が起こらないように仕事をしている時よりも、問題が起きてから対処したことの方を高く評価する」という事実でした。
『20代で人生の年収は9割決まる』の初版で、運転中、道路の真ん中に段ボールが落ちていたら、停車して段ボールをどかせという話を書きましたが、本来、問題というのは、そもそも起こらないようにする、起こったとしたら根本から解決する、が正解なのです。
名医を目指すよりも医者がいらなくなる世界を考える、優れた翻訳家になるよりも翻訳自体がいらなくなるテクノロジーを考える。
こういう考え方を、「上流思考」と呼び、その思考法を解説したのが、本日ご紹介する一冊『上流思考』です。
著者は、名著『アイデアのちから』を、兄・チップとともに書いた、ダン・ヒース氏。テキサス大学オースティン校を卒業後、Thinkwell社を共同創設し、ハーバード・ビジネススクールでMBAを取得。現在、デューク大学ビジネススクール社会起業アドバンスメントセンター(CASE)でシニアフェローを務めている人物です。
※参考:『アイデアのちから』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4822246884
本書は、日々の問題解決に躍起になっている方々に、より上流の問題に目を向けさせる、問題解決の良書。
SECTION1では、私たちを下流に押し戻し、問題を防止する能力を妨げる3つの要因を解説。SECTION2では、上流リーダーが答えなくてはならない7つの根本的な質問を説明。最後SECTION3では、「さらに上流」の考え方を取り上げています。
まだ一度も起こったことがない問題にどう取り組むか。東日本大震災、リーマンショックで惨事を経験し、現在コロナ禍にあるわれわれが学んでおくべき事柄が満載です。
さっそく本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。
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エクスペディアで旅行の予約を入れた顧客、つまりフライトやホテル、レンタカーを予約した顧客の100人につき58人が、予約後に問い合わせの電話をかけてきたというのだ(中略)理由の第1位は何だったか?「旅行の日程表がほしい」だった。2012年の1年間に、顧客は日程表をもらうために約2000万回も電話をかけてきていた
オカストロムが言っているのは、「集中」は組織の強みであり弱みでもあるということだ。組織の本質である分業によって、効率性は大いに高まる。だがその半面、新しい有益なやり方や上流の手法を取り入れにくくなっているのだ
上流活動の見分け方は、「システム全体のことを考えているかどうか」がポイントになる
問題盲からの脱却は、異常が常態化していることに気づいた衝撃から始まる
カネや時間の「欠乏」が視野狭窄を生む
トンネリングのたちが悪いのは、際限なく繰り返されるからというだけではない。トンネリングには達成感があるのだ。大失敗を土壇場で防いだ人は賞賛される
英雄的な救済が必要になるのはたいていの場合、システムに障害が起こっている証拠なのだ
若者の自由になる時間は限られているから、お行儀よく過ごす時間が増えれば、お行儀が悪い時間が必然的に減る
上流活動を成功させるには「問題を包囲する」こと、つまりすべての重要な側面に対応できる多様な人材を引きつけることがカギとなる
よくできたシステムは、最良の上流介入
パターンには時間的なもの(夜間より日中の方が発生しやすい、など)と、地理的なもの(若者の多い地域より高齢者の多い地域の方が発生しやすい、など)がある
子どもを助けるいちばんの方法は、母親に手をさしのべること
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CHAPTER1に書いていた、以下の言葉が刺さりました。
<後手に回るより、先手を打とう。いま世界に必要なのは、救命がもはや必要でなくなる世界をめざして果敢に戦う、静かな英雄たちだ>
そもそも問題を発生させないために何ができるのか。リーダー、マネジャーは、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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『上流思考』ダン・ヒース・著 櫻井祐子・訳 ダイヤモンド社
<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478108773
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◆目次◆
CHAPTER1 上流に向かえーー根本から解決する「新しい思考法」
CHAPTER2 問題盲ーー「そういうものだ」と思ってしまう
CHAPTER3 当事者意識の欠如ーー自分で解決できるのに気づかない
CHAPTER4 トンネリングーー「目の前の問題」しか見えなくなる
CHAPTER5 「しかるべき人たち」をまとめるには?ーー多様なメンバーで問題を「包囲」する
CHAPTER6 「システム」を変えるには?ーー目の前の「水」に目を向ける
CHAPTER7 「テコの支点」はどこにある?ーー問題に寄り添う
CHAPTER8 問題の「早期警報」を得るには?ーー価値の大きい警報を見抜く
CHAPTER9 「成否」を正しく測るには?ーー「幻の勝利」に気づく
CHAPTER10 「害」をおよぼさないためには?ーー「フィードバックループ」で改善する
CHAPTER11 誰が「起こっていないこと」のためにお金を払うか?ーー「払った人が得をする」仕組みをつくる
CHAPTER12 予言者のジレンマーー「いまそこにない危機」に対処する
CHAPTER13 あなたも上流へーー一個人として上流活動をする
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