【傑作です。】
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歴史は繰り返すと言いますが、実際に繰り返すのは人間。そしてもっと正確に言うと、同じ人間が繰り返すのではなく、歴史を学ばない人間が、過去と同じような失敗をするだけなのです。
名著『詐欺とペテンの大百科』はじめ、これまでにもいくつか、詐欺的手法について書かれた本を紹介してきましたが、それでも騙される人は後をたちません。
※参考:『詐欺とペテンの大百科』
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後述しますが、現在は人々が騙されやすい社会状況になっていますので、くれぐれも安易な儲け話には食い付かないように。
と、前置きをした上で、本日ご紹介するのは、ジャーナリスト、東谷暁(ひがしたに・さとし)さんが書いた、『世界史を変えた詐欺師たち』。
歴史的に有名な詐欺師である、チャールズ・ポンジを取り上げるのはわかるのですが、本書が面白いのは、フランスの財政赤字に挑んだジョン・ローやアイザック・ニュートン、ベンジャミン・フランクリン、ヒャルマー・シャハト(敗戦後のドイツのハイパーインフレを抑えた)、ジョン・M・ケインズといった経済の功労者までを「詐欺師」と呼んでいる点。
というのは、著者によると現在用いられている詐欺的手法は、すべて彼らに端を発しているからです。
オビには、「一人を騙せば犯罪だが、みんなを騙せば経済政策?」と書かれており、なるほどなあ、と思った次第です。
相手が個人であれ、国家であれ、詐欺に遭えば財産を失ってしまうのはみな同じ。
そうならないためにも、ぜひ読んでおきたい内容です。
さっそく、いくつかポイントを見て行きましょう。
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このときオルレアン公が目を付けたのはジョン・ローという人物だった。この男は、「紙の紙幣を印刷すれば、すべて解決するだけでなく、フランスのさらなる繁栄も可能になる」などと吹聴していた。当時、フランスにおいては、貨幣とは金か銀でなければならなかった。それを紙で作ればいい、とこの男はいうのである
イギリス人がミシシッピー・バブルに見出したのは、たいした根拠がなくても金儲けができるということだった
フランクリンは紙幣の発行が決まるや、それを自分が経営している印刷所で引き受けることにした
「ポンジ・スキーム」という言葉がある。これは集めた金を投資に回すことなく、一部の投資者に再分配してみせて事業実態があるかのように装い、さらなる投資を集めて最終的には持ち逃げする詐欺のことだ
降って湧いたような儲け話でも、相手の気が変わってふいになったら大損だと思わせるのは、詐欺師の典型的な手口である
詐欺はインフレーションの産物である(中略)インフレーションになると、生計費が家計を圧迫し、追加収入を得るために家長に危険を冒させる、というのである
「ポンジ金融」というのは、元本と利益の安全は最初から守られないことが前提となっている。投資をしても情況のいかんにかかわらずマイナスの利益であることが、ほぼ運命づけられている。では、そんな金融的行為をなぜ行うのか。それは金融的行為を行うわずかの人が、だまされた他の参加者の犠牲によって利益を得ることが可能だからである
同月十五日、シャハトはそれまでの紙幣印刷を停止して、新しい通貨である「レンテンマルク」を印刷させた。一レンテンマルクが旧一兆マルクに相当するとして、交換するか否かは個人の自由としたが、瞬く間に人びとはレンテンマルクに交換し、それまでの超インフレは終息に向かった。一兆倍の超インフレを終息させたのである
一九四四年七月、ついにシャハトはヒトラー暗殺計画に関係しているとの疑いで、警官に逮捕される。すでにドイツ帝国銀行総裁を辞任した時点で、彼に「魔術」を生みだす力はなかった。魔術が効果をあげるためには、魔術が存在すると信じる人たちの共同体が存在し、魔術師とされる人間が構成員によって畏怖されていることが条件なのだ
ノースがこの小論のなかで論じたのは二つの点だった。ひとつが、ビットコインはポンジ・スキームだということ、ふたつ目が、通貨の歴史や学説からすればビットコインはまったく通貨の資格を持っていないということである
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それぞれの「詐欺師」たちの生い立ちとエピソード、人生ドラマが書かれており、読み物としても楽しく読めました。
現在、ビットコインはじめ仮想通貨にハマっている人は、ビットコインがいわゆる「ポンジ・スキーム」ではないかという著者の指摘は、ぜひ読んでおくべきでしょう。(条件が当てはまりすぎている)
「相場は悲観の中に生まれ、懐疑の中で育ち、楽観の中で成熟し、幸福感の中で消えていく」(ジョン・テンプルトン卿)
これから投資をする人は、ぜひ本書を読んでから。
これはおすすめの一冊です。
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『世界史を変えた詐欺師たち』東谷暁・著 文藝春秋
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◆目次◆
はじめに
プロローグ──巨大な詐欺は詐欺でなくなる
第一章 ジョン・ロー フランスの財政赤字に挑戦した「賭博師」
第二章 アイザック・ニュートン 天才の二つの錬金術
第三章 ベンジャミン・フランクリン 米国紙幣の「父」の希望と悪夢
第四章 ネイサン・ロスチャイルド ナポレオン戦争で台頭した金融政商
第五章 チャールズ・ポンジ ただの詐欺師が生んだ「国家的詐欺」の手法
第六章 ヒャルマー・シャハト 敗戦国ドイツで振るった「魔術」の正体
第七章 ジョン・M・ケインズ 「ジョン・ローの再来」インサイダー取引に手を出した大経済学者
第八章 ジョージ・ソロス 世界の金融当局を「味方」にしたヘッジ・ファンド
第九章 ケネス・レイ 史上最大の倒産エンロンの内幕
第十章 アラン・グリーンスパン バブル「形成者」にして「始末人」の欺瞞
最終章 サトシ・ナカモト 新しい通貨の「神」か、金融詐欺の「悪魔」か
エピローグ 国民の信頼を裏切る「サギノミクス」
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