2017年12月8日

『ファンダム・レボリューション』 ゾーイ・フラード=ブラナー、アーロン・M・グレイザー・著 関美和・訳 vol.4888

【「熱狂」を味方にするビジネス】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152097337

長年、書籍のマーケティングをやってきて思うのは、大ヒットは数字だけでは語れない、ということ。

50万人のメールアドレスにリーチして36冊しか売れないこともあれば、たった1万人のリストなのに1000冊売れることもある。

大事なのは、数ではなく「熱気」、もっと言えば「熱狂」なのです。

本日ご紹介する一冊は、この「熱狂」を味方につけるマーケティングを、人気クラウドソーシング・ホビー会社の経営者コンビが解説した一冊。

これまでにもクチコミマーケティングの本、コミュニティマーケティングの本はたくさんあったのですが、本書はSNS全盛の今書かれているだけあって、事例が豊富で内容もより現代的です。

伝統的なファンダム(=熱狂する集団)の解説に始まり、現在ヒットしている商品、活気あるコミュニティの例がこれでもかというくらい詳しく解説されており、じつに読み応えのある内容です。

初音ミク、バフェットの株主総会、ジャスティン・ビーバー、何度も経営破綻したのに続いているポラロイドコミュニティ、コカ・コーラが復活を決めた炭酸飲料「サージ」、18歳から25歳までの層に刺さるメキシコの芸術家フリーダ・カーロ…。

さまざまな「ファンダム」現象を読んでいるうちに、ビジネスのヒントがガンガン湧いてくる、そんな刺激的な一冊です。

さっそく、ポイントをチェックしてみましょう。

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ファンダムとは、人々が愛するさまざまな文化の周囲にできあがる構造や習慣を指す。それは、大昔から存在するとても人間らしい現象だ

特定の人やモノへの執着と、それに対する活動を引き起こすようなもの。今どきの言葉で言えば、それが「ファンオブジェクト」だ

ファンオブジェクトを手に入れて楽しむのにほとんど労力を使わずに済むようになると、ファンたちはさまざまな方法で対象への愛を表現することに精を出すようになった。余った時間と労力をいろいろなファン活動に充てるようになったのだ

音楽業界といわゆる「キャラクタービジネス」のはざまの市場を一気にかっさらったのが、クリプトンだ。どちらの業界もしゃかりきに著作権を守ろうとする点で評判が悪かった。(中略)クリプトンは著作権を守るのではなく、ファンたちにミクというキャラクターとその音楽を、できるだけ遠くまで広く拡散してもらうことに励んだ。その結果、ファンがほとんどすべての創作を行う世界が生まれた

彼らはバークシャーの株を持つことに新しい意味を見出している。たとえば、経済的な自由。アメリカ的な強さ。似たような人たちと知り合う機会。バケーション。特権

ただの消費者をファンに変えるには、活動に参加させるのが一番いい。できれば、消費から切り離された活動で、大きなグループの一員と感じられる経験がいい

巡礼とは、その場所の景色や立地やもともとの価値ではなく、その場所が象徴するなにかのためにそこを訪れることだ。その場所が聖地なのだ

欠陥品だとわかっていても、ファンが復活を支えてくれていた(ポラロイド)

翌月にはジョージア州アトランタのコカ・コーラ本社脇の道路に新しい看板広告が上がった。そこには「親愛なるコカ・コーラ様、サージを買えなかったので、代わりにこの看板を買いました」と書かれていた

◆ファンダムの3種類
「ユートピアとしてのファンダム」「下克上としてのファンダム」「自己表現としてのファンダム」

他人にどう見られるかを気にせず自己表現したいという方が、今のファン心理に近い

入会の理由として「家族」を挙げるメンバーは多い

グループ活動の原動力になってくれる初期のメンバーを励ますことが、コミュニティ構築の上で一番大切

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最近は、これといったマーケティング本がなかったのですが、本書は、ひさびさにヒットです。

解説を「WIRED」日本版編集長の若林恵さんが書いており、こちらも併せて読むといいと思います。

コミュニティの創設・運営に携わる方はもちろん、マーケター、経営者はぜひ読んでおきたい一冊です。

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『ファンダム・レボリューション』
ゾーイ・フラード=ブラナー、アーロン・M・グレイザー・著
関美和・訳 早川書房

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◆目次◆

序 章 ファンダムの“特異点(シンギュラリティ)”がやってくる
第1章 ファンダムとは行動だ
第2章 ファンダムの商業化
第3章 ファンダム研究の「三つの波」
第4章 個性とファンダム
第5章 世界一幸せな場所を見つけた人たち
第6章 ファンは何の役に立つ?
第7章 本物らしさ
第8章 ファンダムが炎上するとき

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