2017年10月28日

『呻吟語』湯浅邦弘・著 vol.4847

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本日ご紹介する一冊は、『菜根譚』と並ぶ中国の処世訓、『呻吟語』に訳・解説をつけて紹介した、角川ソフィア文庫「ビギナーズ・クラシックス」のなかの一冊。

※参考:『菜根譚』
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『呻吟語』の「呻吟」とは、もともと病人が発するうめき声のことで、時代を「末世」と判断した当時の高官、呂新吾が、社会に対して発信したメッセージです。

腐敗する官僚組織のなかで、呂新吾が考えた修身のための教え、言葉とは何か。

成熟社会に生きるわれわれにとって、このメッセージには無視できないものがあると思います。

正しい心のあり方とは何か、偽りの心とどう戦うのか、成功するにはどう考えるべきなのか、子育てはどうあるべきか…。

教訓がてんこ盛りで、最後まで飽きさせることがありません。

どんな教えが書かれているのか、さっそくチェックしてみましょう。

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臨終の際、[あの世へは]一つとして物を身につけて行くことはできない。ただ心だけを持っていくのに、[人々は]それをみずから壊してしまっている

雨の恵みは、潤いすぎると、万物の災いとなる。慈しみ愛する気持ちは、礼儀を逸脱すると、臣下の災いとなる。情愛は、度を超えると、子孫の災いとなる

この世のすべてのものには限りがあるが、人情(欲望)には限りがない。限りあるもので限りないものを満足させようとすると、必ず争いが起きる。だから人々がそれぞれ足ることを知れば、天下の物には余りがでる

古今の士には、おおむね三つのランクがある。上士は名声を好まず、中士は名声を好み、下士は名声を好むことさえ知らない

ある人が言った。「君子にだけは恥とするものがないのだろうか」。そこで私は言った。「いや恥はある。親が存命なのに貧乏なのは恥である。賢者を登用するご時世なのに[採用されず]身分が卑しいのは恥である。年を取ってもそれにふさわしい道徳的な行いがないというのは恥である」

身分が高くなればなるほど、いよいよ見聞が狭くなる。その耳目をふさぐ者が多くなるからである。[逆に]身分が低くなればなるほど、いよいよ聡明となる。その見聞するところが真実だからである

「寛簡」の二字は、政治を行う際の根本である。寛でなければ、威令は過酷になる。簡でなければ、法令は煩瑣になる

不幸がないということより幸せなことはない。ことさらに幸せを求めようとすることより不幸なことはない

剣は長さ三尺であるが、その用をなすのは、ひとすじの鋭利な刃の部分。筆は長さ三寸であるが、その用をなすのは、末端の細い穂先の部分。それ以外は、みな用をなさない余り物である。しかしながら、もし剣と筆とを、その鋭利な部分、先端の部分だけで作ろうとすれば、[剣として、また筆として]用を発揮することはできないだろう。そこで分かるのである。無用のものは有用の資(もとで)であり、有用のものは無用のおかげであることを

君子が人を使うには、その功績が同様であることを求めない。それぞれの長所を尽くすようにさせるだけだ

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国を治めるための知恵、人を使うための知恵、自己修養のための知恵が書かれており、じつに勉強になりました。

立身出世の方法などは書かれていませんが、結果としてこういうことができている人こそが、重用されるのだと思います。

一流の振る舞いを身につけたい人に、役立つ一冊です。

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『呻吟語』湯浅邦弘・著 KADOKAWA

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◆目次◆

内篇
性命──人間の本性と運命について
存心──正しい心のあり方とは
倫理──人間道徳の基本
談道──孔子の道を規範とする
修身──身を修めるための方法
問学──切磋琢磨して学ぶ
応務──対人関係で大切なこと
養生──健康長寿のために
外篇
天地──世界は何でできているのか
世運──世の流れへの対処法
聖賢──聖人賢者も修養努力する
品藻──人間の品格とは
治道──統治の理念と方法
人情──日々の暮らしの心がけ
物理──万事万物の理
広喩──比喩で表す真実
詞章──文章作成の秘訣とは
『呻吟語』をめぐって
一.『呻吟語』と『菜根譚』──中国の二大処世訓
二.呂新吾と科挙──合格者名簿に名が見えないのはなぜ

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