【祝・ドラマ化 原作を読もう!】
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本日ご紹介する一冊は、ドラマ化され、初回視聴率14.7%の好スタートとなった『陸王』の原作。
人気作家の池井戸潤さんによる、老舗再生物語です。
舞台となるのは、足袋作り一筋百年の老舗「こはぜ屋」。
毎年縮小するマーケットに閉塞感を感じていた社長の宮沢が、ひょんなことからランニングシューズの可能性に気づき、壮大な新商品開発物語がスタートします。
箱根駅伝・五区でライバル・毛塚とデッドヒートを演じ、一躍有名になったにもかかわらず、ケガでブレーキがかかっている茂木、上司に歯向かい世界的シューズブランド「アトランティス」をクビになったシューズマイスターの村野、就職に失敗し、家業を手伝う宮沢の息子・大地、繭を使った新素材「シルクール」で特許を取ったにもかかわらず倒産し、再起にかける飯山…。
それぞれの人生が交錯し、最終的には働くわれわれに、働くことの意味や意義、良い会社とは何かの再定義を促してくれます。
過去の池井戸作品と比べ、いまひとつセリフが練られていない印象がありましたが、それでも涙があふれるほど感動しました。
さっそく、気になったセリフをチェックしてみましょう。
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競合製品の研究はもちろんですが、走るということについての理解も必要なんじゃないですか
会社にとっての本当の危機とは、実際にお金に困ることになるずっと前にあるのではないか
「オレにいわせれば、会社が大きいから入りたいっていう動機は間違ってるな」飯山は手を止めて大地を見た。「大事なのは会社の大小じゃなく、プライドを持って仕事ができるかどうかだと思うね」
どんな仕事してたって、中小企業の経営だろうと、大企業のサラリーマンだろうと、何かに賭けなきゃならないときってのは必ずあるもんさ。そうじゃなきゃ、仕事なんかつまらない
全力でがんばってる奴が、すべての賭けに負けることはない
たしかに、アトランティスのシューズは品質も悪くないし、機能性も優れているだろう。だけど、彼らはランナーのために作ってない。そんなシューズには魂はない。ただの工業製品だ
実績のあった走法を変えるって大変なことでしょう。過去そのものとの訣別といってもいいのではないですか
諦めたら、そこで終わる。なんだってそうだ。自分で終わりを決めるな。そんなものは単なる逃げだ
いいか、これが世の中に出るということだ。世の中とはそういうもんだ。もし、気にくわないんなら、力でねじ伏せろ。そのためには、自分の走りを見せるしかない。その走りで、毛塚を抜き去れ──
あんたはなんで、そんなに人がいいんだ。なんで、そんなに生真面目なんだ。なんで、もっと──もっと悪あがきしようとしないんだ
利益率を上げることを最優先にしてしまったら、足袋製造をやめなきゃいけない(中略)収益競争から離れた場所にいるからこそ、守られてきたものもあるんです
ビジネスとは本来、釣り合っているものです。シルクレイの価値と、ウチへの買収提案も同様だ。釣り合っているからこそ成立するんでしょう。
この二年間で、茂木にはわかったことがある。自分は、人気取りや世の中からの称賛を得るために走っているのではないということだ。自分が走るのは、自分にとってそれが人生そのものだからだ。そして何より、──走るのが好きだから。
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先日、東京画廊オーナーの山本豊津さんがおっしゃっていたことですが、今のような抽象度の高い時代になると、人は作品に「身体性」を求めるようになるそうです。
先日ご紹介した『SHOE DOG(シュードッグ)─靴にすべてを。』も靴(モノ)の話ですが、これもきっと読者が作品に「身体性」や生きるリアリティを求めているからでしょう。
※参考:『SHOE DOG(シュードッグ)─靴にすべてを。』
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なかでも靴は、「進む」「歩く」「走る」「跳ぶ」などの比喩となるので、余計に心に響くのかもしれません。
感動的な作品ですので、ぜひ、読んでみてください。
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『陸王』池井戸潤・著 集英社
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◆目次◆
第一章 百年ののれん
第二章 タラウマラ族の教え
第三章 後発ランナー
第四章 決別の夏
第五章 ソールを巡る旅
第六章 敗者の事情
第七章 シルクレイ
第八章 試行錯誤
第九章 ニュー「陸王」
第十章 コペルニクス的展開
第十一章 ピンチヒッター大地
第十二章 公式戦デビュー
第十三章 ニューイヤー決戦
第十四章 アトランティスの一撃
第十五章 こはぜ屋の危機
第十六章 ハリケーンの名は
第十七章 こはぜ屋会議
最終章 ロードレースの熱狂
エピローグ
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