2024年3月22日

『少子化』海老原嗣生・著 vol.6442

【少子化克服と女性たちのキャリアのために】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4833425300

本日ご紹介する一冊は、リクルートワークス研究所で雑誌Works編集長を務め、2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げ、雑誌HRmics編集長に就任、現在は雇用ジャーナリストとして活躍中の海老原嗣生さんによる少子化論。

海老原さんに関しては、漫画「エンゼルバンク」の主人公、海老沢康生のモデルとなった人物、といえばピンと来る人が多いかもしれませんね。

雇用問題に関わらず、社会保障や教育などにも詳しい著者ですが、一度、1999年に第一子が生まれた13年後に、『女子のキャリア』という本を出しています。

本書は、その11年後に改めて書かれた少子化論・女性キャリア論ですが、直近のデータと社会的風潮を受けて、大きく刷新されています。

なぜ働く女性が苦しいのか、なぜ結婚できないのか、どうすれば少子化が食い止められるのか、鋭い指摘がなされています。

政策担当者や経営者、働く男女は、基礎知識として、読んでおくといいでしょう。

・大正時代の日本では40代初産も多かった
・女性の地位上昇が、「職場のいい男」を減らす原因に
・同棲割合が高くなれば出生率上昇に寄与しない

読めば少子化の原因も、解決法も明確になります。

著者いわく、「日本における最大の雇用問題は女性」。

男女ともに考え、古い常識を書き換えていかないと、立ち行かない時代になったと思います。

ぜひ読んでみてください。

さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。

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労働シフトは、出生数が半減レベルまでしか成り立ちません。男女ともに働いてもその労働量は、男性だけ働く場合の2倍にしかならないからです

今までの少子化対策は、育児費用補填、子育て支援、結婚相手と出会う機械の確保など、「お金と確率」の問題が重視されがちで、心のほうはないがしろにされてきました

「家庭」と「職場」が分離され、子どもたちは「働くリアル」を知らずに育つことの是非。育てる苦しみは「母」しか知らないという男女の非対称性。こうした問題を問いかける原点が「アグネス論争」だったと言えるでしょう

エンゼルプランで謳われた「女性支援」とは、女性が働きながら育児や家事ができるようにするということです。それは、とどのつまり、女性に「働け、産め、育てろ」という三重苦を負わせることに他なりません

同性の優秀な成功者から正論を振りかざされれば、一般女性はそれに頷くしかないでしょう。そして、その教えをまっとうしようと無理をして疲れたり、自分を責めることにもなる

今、話しているその言葉は、多くの女性の気持ちを萎ませていませんか。女性を道具にしていませんか。20年後の人たちから嗤われることはありませんか

働き方は変わったが、意識と仕組みが取り残されたまま

2022年の大企業(従業員数1000人以上)の大卒正社員に占める女性比率を見ると、30代前半で36.2%、後半でも31.2%となっています

少子化の第一因は「未婚化」にあると言えそうです

未婚のまま残るのは「低年収男性と高年収女性」

少子化対策を考えるなら、40代前半の出生率を戦前並みに戻すことも一策でしょう。それだけで、出生率は0.3ポイントも上がります

「育児って大変だな」と思われる部分を取り除き、同時に、「育児は社会全体で」という常識をつくっていく

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見当外れの政策や公費誘導、不毛に疲弊する働き方をやめるためにも、ぜひ読んでおきたい一冊。

政治家・官僚が読むのも大事ですが、経営者が読んで身近なところから意識改革することも必要だと思います。

ぜひ、読んでみてください。

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『少子化』海老原嗣生・著 プレジデント社

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◆目次◆

はじめに 底なしの少子化が問いかけること
第1章 社会は女“性”をいかに弄んだか
第2章 「女は働くな」と「女も働け」の軋み
第4章 30歳「不安」、35歳「焦燥」、40歳「諦め」
第5章 もう一度、女性が子どもを産みたくなるために
おわりに

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