2024年3月21日

『ぼろ着のディック』ホレイショ・アルジャー・著 畔柳和代・訳 vol.6441

【注目の新刊】
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本日ご紹介する『ぼろ着のディック』は、150年以上読み継がれてきたという、アメリカ古典大衆小説の隠れた名著が、初めて文庫化したもの。

著者のホレイショ・アルジャー氏は、1899年に亡くなっていますが、著書累計が2000万部以上売れたと言われるベストセラー作家だったようです。

アルジャー氏は、牧師の子に生まれ、1866年3月にニューヨーク市に出て、新聞売りの宿泊施設に少年指導の牧師の口を見つけ、少年たちと寝食を共にし、一連の作品は、その時の体験が元になっているそうです。

主に、少年向けに100編以上の物語を書いたそうですが、本書はその記念すべき第一作。

みすぼらしい身なりの靴磨き少年ディックが、ひょんなことからチャンスを掴み、蓄財に成功し、教養を身につけていく話で、ストーリーからは、人間が重用されるための大事なポイントが見えてきます。

経済的成功と人間的成功、両方を手に入れるために何が必要か、深く考えさせられる物語です。

貧しいその日暮らしの少年が、友情と一張羅を手に入れ、蓄財に成功し、教育を受けて良い職を得る。

時に嫉妬に遭い、時に財産を奪われかけながらも、周囲の友人や恩人と一緒に成功していくディックの姿に、人生の真理を見る気がしました。

なぜ人間に教育が必要か、道徳が必要か、説教なしでわからせてくれる、素晴らしい作品だと思いました。

大人が読んでも感動的ですが、これはぜひ少年たちに読ませたいと思いました。

さっそく、気になるポイントを赤ペンチェックしてみましょう。

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にもかかわらず、ディックには長所もいくつかあった。卑怯なことや不名誉なことはしない。決して盗みはしないし、人を騙さないし、年下の少年に無理強いもしなかった。率直で、ごまかしがなく、男らしく、自立心がある少年だった。気高い性分の持ち主だったおかげで、ありとあらゆる卑劣な弱点はまぬかれていた

「これは、じいちゃんが子どもの頃かぶっててさ、死んだじいちゃんに敬意を表してずっと大切にしてきたんだ(略)」

「もちろん、きみが世の中で成功していくのを見たいんだ。読み書きができないと、その可能性はあまりないよね」

「人が言ったからって、本当にそうなるわけじゃないよ、ディック。ひとかどの人になろう、社会のまっとうな一員になろうと努めれば、いつかそうなるよ。お金持ちにはなれないかもしれない。誰もがなれるわけじゃないから。でも、いい職を得て、まわりから尊敬
されるようにはなれるよ」

「きみは最初から正しいやり方をしているんだよ。どんな誘惑があっても決して他人の物を盗らない、ずるいことも恥ずべきこともしない、と決めたときから。そうすれば、きみと知り合う人はきみを信頼する。でも、うんと出世するには、どうにかしてなるべく教育を受けないと。そうしないと事務所や会計室で仕事の口は得られない。ただの雑用係としてもね」

「(略)印刷所にいた頃に手に入れて、お金よりも大事にしているものがある」
「なんですか?」
「読書と勉強が好きになったこと。ひまなときに勉強して自分を高めた。いま知っていることの大半はそのとき身につけた。あとで発明の糸口をくれたのも、その頃読んだ本なんだ。だから勉強する習慣は、ためになったし、お金にもなったんだ」

「労働に貴賎はないんだよ。まっとうな稼業を恥じる理由はない。でも、将来の見込みがもっとよくなる仕事につけるときが来たら、そちらを取るといい。それまでは慣れた方法で生計を立て、ぜいたくをつつしんで、できればお金を少し貯めるんだ」

自分ほど恵まれていない友を手助けしよう、自分が上へ登りながら、友が梯子段を上がってゆけるよう手を貸そう

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いわゆる格言っぽいものがあるわけではありませんが、読者は、人生で大事な教えを行間から読み取ることができます。

貧しいながらも決して盗みはせず、卑怯なことも不名誉なこともしなかったディック。

親ならば、きっとこんな風に子どもを育てたいと思うのではないでしょうか。

「アメリカンドリームの原点、自己啓発の源流がここにある」という帯コピーに誘われて読みましたが、これは良い読書体験になりました。

ぜひ、読んでみてください。

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『ぼろ着のディック』ホレイショ・アルジャー・著 畔柳和代・訳 KADOKAWA

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◆目次◆

第一章 ぼろ着のディックを紹介する
第二章 ジョニー・ノーラン
第三章 ディックの提案
第四章 ディックの新しいスーツ
第五章 チャタム通りとブロードウェイ
第六章 ブロードウェイからマディソン・スクエアへ
第七章 財布
第八章 ディックの幼い頃
第九章 三番街の鉄道馬車の一件
第十章 詐欺師を信じた被害者登場
第十一章 ディックの探偵ぶり
第十二章 ディック、モット通りで間借りする
第十三章 ミッキー・マグワイア
第十四章 戦いと勝利
第十五章 ディック、家庭教師を得る
第十六章 最初の授業
第十七章 ディック、上流社会にお目見えする
第十八章 ミッキー・マグワイア、また負ける
第十九章 フォズディックの転職
第二十章 九か月後
第二十一章 ディック、預金通帳をなくす
第二十二章 泥棒追跡
第二十三章 トラヴィス逮捕
第二十四章 ディック、手紙をもらう
第二十五章 ディック、初めて手紙を書く
第二十六章 ハラハラする冒険
第二十七章 結び
訳注
解説 渡辺利雄
文庫版訳者あとがき 畔柳和代

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