2023年8月10日

『植物に死はあるのか』稲垣栄洋・著 vol.6295

【『植物に死はあるのか』稲垣栄洋・著】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/481561895X

本日ご紹介する一冊は、『面白くて眠れなくなる植物学』『「雑草」という戦略』などの著書で知られる植物学者の稲垣栄洋さんによる一冊。

『面白くて眠れなくなる植物学』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569901042

『「雑草」という戦略』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/453405792X

「生物模倣」という言葉があるように、生物の戦略や生態からわれわれは多くを学ぶことができるわけですが、この稲垣さんの本は、特にその辺を意識して書かれているため、ビジネスや人生の勉強になります。

都市に住んでいると、どうしても植物に対する関心が薄れがちですが、世界が都市化に向かうなか、植物から学ぶことは、差別化の大きなヒントになると思われます。

本書では、著者が学生の質問に答える形で、植物に関する考察・解説を進めるという、エッセイ風のスタイルをとっています。

肩肘張らずに読めて、ところどころに気づきがある、休日の読み物にピッタリの内容です。

植物が動かない理由、植物が巨木となれた理由、なぜ植物は進化して「草」になったのか、被子植物はなぜすごいイノベーションなのか、ビジネスパーソンが学べば、即ビジネスにつながる興味深い考え方が示されています。

また、クローンと種の違いを学べば、日本の家庭教育が、本来は種で生殖した子どもに対し、クローンの教育を押し付けているから上手く行っていない、ということがよくわかります。

子どもの才能を開花させたい親、部下を伸ばしたいマネジャーは、読んでおくといいと思います。

やはり、ジャンル違いの本を読むと、学ぶことが多いですね。

さっそく本文のなかから、気になった部分を赤ペンチェックしてみましょう。

—————————-

植物が動かなくて良いのは、光合成を行なうためである。(中略)空気と水だけで、自らエネルギーを作り出すことができるのだから、動き回る必要はない。むしろ動かずにじっとしていた方が、作り出したエネルギーをムダ使いせずにすむ。そのため、植物は動かないのだ

酸素は生物にとって危険な物質ではあるが、爆発的なエネルギーを生み出す力がある。危険を承知で、この禁断の酸素に手を出した単細胞生物は、これまでにない豊富なエネルギーを生み出すことに成功したのである

プラトンは「人間は」と言った。つまり、プラトンにとって大切なことは「人間とは何か?」なのである。一方、アリストテレスは「植物は」と言った。(中略)プラトンは、真理は神のものであると考えていた。そして、神の真理の下で「人とは何か、人はどう生きるべきか」を問い続けたのである。一方、アリストテレスは、「真理は目の前の物質や現象の中にある」と考えた。そして、それを観察することで、真理を明らかにできると考えたのである。このアリストテレスの考え方は、現在の自然科学研究の基礎となっている。そのため、アリストテレスは「万学の祖」と呼ばれているのだ

動き回るためには、細胞が小さくて軽い方が動きやすいかも知れない。しかし、植物の細胞は違う。動き回る必要がないから、できるだけ細胞が大きい方が、よりたくさんの葉緑素を持って、よりたくさんの光を浴びて、よりたくさんの栄養を作ることができる

多細胞生物となった植物は、どんどん細胞を積み上げて体を大きくしていく。体を大きくして背が高くなればなるほど、光を浴びやすくなるから、植物はどんどん体を大きくしていく。このとき、細胞がやわらかいと、たくさん積み上げることができない。そこで細胞壁で細胞を固く補強することによって、積み木やブロックを積み上げるように、細胞を積み上げて、体を大きくすることができるようになったのである

被子植物は、胚珠が子房の中に大切に守られているのである。そのため被子植物は、花粉が来るよりも前に、あらかじめ成熟した胚を子房の中に準備しておくことができる。そのため、花粉が来れば、すぐに受精をしてタネを作ることができるのである

優れた個体が生き残るのではなく、優れた乗り物に乗っている遺伝子が生き残るのだ。これが、リチャード・ドーキンスの物の見方である

—————————-

なぜ日本の家庭教育が上手く行かないのか、高齢化社会で行き詰まるのか、ビジネスでイノベーションが起こらないのか、その理由がよくわかる内容です。

植物から生き方やイノベーション、効率的な生産のヒントも学べてしまう、魅力的なエッセイです。

ぜひ読んでみてください。

———————————————–

『植物に死はあるのか』稲垣栄洋・著 SBクリエイティブ

<Amazon.co.jpで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/481561895X

<Kindleで購入する>
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B0C4NWWCTQ

———————————————–
◆目次◆

プロローグ 命を考える一週間
月曜日 どうして植物は動かないのか?
火曜日 植物と動物はどこが違うのか?
水曜日 草って何?
木曜日 木は何本あるのか?
金曜日 木は生きているか?
土曜日 植物は死ぬのか?
日曜日 植物は何からできているのか?
エピローグ 最後のメール

この書評に関連度が高い書評

この書籍に関するTwitterでのコメント

NEWS

RSS

お知らせはまだありません。

過去のアーカイブ

カレンダー