2022年11月15日

『ネットワークエフェクト』アンドリュー・チェン・著 大熊希美・訳 vol.6120

【起業家なら、知っておくべき】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4296001256

本日ご紹介する一冊は、ウーバーの高成長期にライダー・グロースチームを率い、現在はシリコンバレーのベンチャーキャピタル、アンドリーセン・ホロウィッツのゼネラルパートナーを務めるアンドリュー・チェン氏が、起業家に向けて、いわゆる「ネットワークエフェクト(ネットワーク効果)」を理論化した一冊。

参入障壁が低いインターネットビジネスにおいては、「ネットワークエフェクト」と「ブランディング」がその対抗策として知られていますが、どちらもその実践においては、深く論じられてはいません。

本書では、テクノロジー界隈に豊富な人脈を持つ著者が、ドロップボックス、スラック、ズーム、リンクトイン、エアビーアンドビー、ティンダー、ツイッチ、インスタグラム、ウーバーなどの創業者や初期社員100人以上に取材し、ネットワークエフェクトの実際と、どんな時にどんな理論が使えるのか、理論の精緻化を図っています。

ネットワークエフェクトを発揮するには、提供者と消費者、両方のネットワークを充実させる必要がありますが、立ち上げ段階では、それが望めません。

本書では、このいわゆる「コールドスタート問題」をクリアするためのアトミックネットワークの構築法、ネットワークのハードサイドの押さえ方など、ネットワークエフェクトを味方につけるための起業家必須の理論を紹介しています。

事例も豊富で、ウィキペディアやティンダー、ズーム、クラブハウス、リンクトイン、インスタグラム、レディット、ウーバー、ペイパル、ツイッチ、イーベイ、ユーズネット、ユーチューブ、クレイグスリスト、グーグルプラスの成功例/失敗例が紹介されています。

どんな理論も、単純に当てはめるだけでは上手く行かないものですが、本書はネットワークエフェクトをどう自社の事業に活かせばいいのか、実践面の詳細が見えてくる内容で、起業家や新規事業の担当者は必読の内容です。

本文のなかから、さっそく気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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一般的な「ネットワーク効果」の定義は、「多くの人が使えば使うほど製品の価値が高まる」こと

ドライバーが少ない都市では、クルマが来るまでに時間がかかる。これはETA(到着予定時刻)が遅い状態だ。すると、コンバージョン率が低くなる。30分も待てる人なんてそういない。つまり、ドライバーが50人くらいにならないと、乗客にとってサービスの価値はほぼゼロということになる

ネットワークには買い手と売り手、あるいはコンテンツのクリエイターと視聴者など、性質の違うユーザーがいる場合が多い。ネットワークを立ち上げるときに重要なのは、惹きつけるのが難しい「ハードサイド」のユーザーの獲得だ

必要最小限の数が多いほどネットワークの構築は難しくなるが、長い目で見れば他者を跳ねのける防御壁にもなる

次にビッグになる製品は、初めはニッチ市場向けに見える

新しいネットワークの立ち上げで大事なのは、特定のニーズ、状況、タイミングに当てはまるひと握りの人たちに的を絞ることだ

マーケットプレイスのハードサイドは供給側

人気サービスを見てみると、時間や遊休資産を持つ人たちのネットワークが土台にあることがわかる

ネットワーク製品で重要なのは「ひとつのことを完璧にできる」こと

プラットフォームに合わせて新時代のキラープロダクトが登場するのだ。高解像度カメラ、位置情報、アプリストアを内蔵したスマホが登場したときは、スナップチャット、ウーバー、ティックトックといった大人気アプリが次々と誕生した

用途が増えるとエンゲージメントが高まる

市場の飽和に対抗する方法
・隣接ネットワークを獲得せよ
・新しい使い方を増やす
・市場を積み増す

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「エンゲージメントのないユーザー獲得はうまくいかない」「ビッグバン型の立ち上げは失敗しやすい」など、未然に失敗を防ぐアドバイスも散見され、起業家は転ばぬ先の杖として、ぜひ読んでおきたい内容です。

「元ウーバーの著者」と聞いて、最初は「単なる体験談だったらどうしよう」と思っていたのですが、かなり緻密にネットワークエフェクトが論じられており、起業家・投資家必読の教養書だと思いました。

ぜひ、読んでみてください。

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『ネットワークエフェクト』アンドリュー・チェン・著 大熊希美・訳 日経BP

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◆目次◆

序章
第1章 ネットワーク効果
第2章 コールドスタート問題
第3章 転換点
第4章 脱出速度
第5章 天井
第6章 参入障壁
最後に
原注

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