2022年10月3日

『伝説の授業採集』倉成英俊・著 vol.6091

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本日ご紹介する一冊は、植物学者を父に持ち、自身は電通出身のクリエイターという著者が、これまでに採集してきた「伝説の授業」を紹介した一冊。

生徒に気づきや自主性、考える力を与える授業とはどんなものか、国内外のさまざまな事例が掲載されています。

本書で紹介されている「伝説の授業」の内容は多岐にわたります。

電通出身の著者らしい創造性に関するもの、自然環境を大切にする意識を高めるためのもの、戦争の悲惨さや命の尊さを学ぶものなど。

ただ注目したいのは、いずれの授業も一見しただけでは意味がわからない、ということ。

著者は、採集した「伝説の授業」の共通項として、以下の3つを挙げています。

1.パッと見、面白い。
2.そして意味がある。為になる。
3.が、その出題意図ははじめには明かされない。

内田樹さんは、著書『下流志向』のなかで、「教育の逆説は、教育から受益する人間は、自分がどのような利益を得ているのかを、教育がある程度進行するまで、場合によっては教育過程が終了するまで、言うことができないということにあります」と述べましたが、本書にもそれに近いことが書かれています。

※参考:『下流志向』
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天才コピーライター仲畑貴志氏が考案した、1分でテーブルに雑巾がけをする問題、青山フラワーマーケットの「バラを分解する」社員研修、伝説の国語教師大村はま氏が行っていた授業など、興味深い授業が目白押しで、あっという間に読んでしまいました。

章見出しに書かれた「問題」を読んで考えるだけでも、思考力が磨かれる、知的好奇心をくすぐる一冊です。

本文のなかから、さっそく気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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自己紹介してください。ただし10文字以内で。(まえがきより)

彼女(彼)とケンカしました。絵だけで謝りなさい。(電通の試験問題)

クリエイティブテストには別に答え合わせがあるわけでも、出題者が解説してくれる機会があるわけでもないので、明かされたことはないが、「発想力」と「客観性」を問うている、というのが僕の見立てである。なぜなら、これは広告クリエイティブの選抜試験だから、発想が狭くてもいけない。それでは見る人がつまらない。逆に、飛びすぎていてもいけない。広告は、見る人にわかる、共感されるものじゃないといけないから。実業の世界は常に、二項対立のバランスを求められるのである

「ここにあるテーブルを、布巾で拭いてください 制限時間は1分です!」

「花屋はね、ビジネスを横展開したり、エクセルを使うといった左脳も大事だけど、一番大事なのは右脳や感性だから。うちの社員にもいつも言ってるんですよ。花の美しさを観察しろってね」(中略)「ただ観察しろって言ってもね、なかなか難しいんでね、バラを分解するんですよ」(青山フラワーマーケット)

「人が作るものは直線が多いから、都会は直線ばかり。一方、自然界には直線はない。だからなるべく直線をなくしてるんですよ」(青山フラワーマーケットの会議室の話)

大村さんは、毎回オリジナルで教材を生み出し、同じ教材を使わないことで有名

常識から逸脱して世界を変える人物。その人の側には必ずいつも、逸脱をちゃんと評価する大人がいるのである

沖縄戦で亡くなった方と同じ数、23万6095個の石に番号を振って、積み上げる

草で、自分の体重を支えられるロープを、2週間以内につくりなさい。

◆薩摩の「郷中教育」における「詮議」いわば「究極の選択」問題。これに理由付きで即答しなくてはいけない

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タイトルのフォーカスが「採集」に当たっていて、内容が伝わりにくいのがもったいないですが、コレクションされた授業は、本当に素晴らしい。

また、著者が考案した問題や電通で出された問題なども紹介されていて、こちらもクリエイティビティを刺激する内容でした。

教師や親はもちろん、この国を変えたいと願うすべての人に読んでいただきたい一冊です。

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『伝説の授業採集』倉成英俊・著 宣伝会議

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◆目次◆

はじめに ホームルーム的まえがき
会社
学校(国内)
学校(海外)
歴史
コンテンツ
家庭
あとがき
謝辞

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