2022年9月14日

『生まれが9割の世界をどう生きるか』安藤寿康・著 vol.6080

【親ガチャは正しいか?】
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本日ご紹介する一冊は、行動遺伝学の専門家であり、『日本人の9割が知らない遺伝の真実』の著者、安藤寿康さんによる新刊。

※参考:『日本人の9割が知らない遺伝の真実』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4797389745

すっかり定着した「親ガチャ」という言葉がどこまで正しいのか、教育はどこまで子どもの未来に影響を及ぼせるのか、教師や親に厳しい現実を突きつける、注目の一冊です。

著者は、一卵性双生児と二卵性双生児の比較をし、遺伝の影響を見極める「双生児法」の研究者。

本書では、この研究により得られた知見をもとに、何が遺伝で、何がそうでないか、何が変えられなくて何が変えられるか、リアルな見解を示しています。

本書によると、身長や体重の遺伝率は90数パーセント、神経質さや外向性、勤勉性、新奇性といったパーソナリティについては、遺伝率は50パーセント程度。統合失調症、自閉症、ADHDに関しては、80パーセント程度が遺伝で、反社会的な問題行動に関しては、60パーセント程度の遺伝率だそうです。

驚いたのは、優秀な親と優秀な親の組み合わせだと、子どもの知能の平均は両親の中間より、集団全体の平均に近づく確率が高くなるということ。

また、先生や親にとっては残念なことに、子育てや教育の影響というのは、思ったほど大きくないことも示されています。

では、一体何が子どもの成功に影響するのか。それこそが、本書の最大の読みどころです。

本文を読む気のない親御さんには、「静かで落ち着いた雰囲気の中で、きちんとした生活をさせること」と「本の読み聞かせをすること」だけをおすすめしておきましょう。

しっかり学びたい方は、買っていただいた方がいいと思いますが、まずは本文のなかから、気になったところを赤ペンチェックして行きましょう。

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遺伝子の塩基配列を全部読み解くゲノムワイド関連解析(GWAS:Genome Wide Association Study)から算出されるポリジェニックスコアによって、一人ひとりの知能の遺伝的素質を描くことができるようになりました

親ガチャはまず遺伝ガチャで、親による環境ガチャの影響は限定的、むしろ誰のせいにもできない予測すらできない偶然の状況との出会いこそが、環境ガチャの本質である

一卵性双生児のペアは二卵性双生児のペアよりも、似たような子を友達として選ぶケースが多い

両親共に知能が平均よりもずっと高かった場合、子どもの知能の平均は両親の中間より、集団全体の平均に近づく確率が高くなります。これは逆もしかりで、両親ともに知能が平均よりもずっと低い場合にも、子どもの知能は両親の中間より平均に近づきます

その人が自分で作る環境、自ずと呼び寄せてしまう環境には、その人の遺伝的素質が多かれ少なかれ反映されるので、環境は純粋に環境の影響とは言えない

「才能のある人」に見られる3つの条件
1.特定の領域に対してフィット
2.学習曲線が急上昇のカーブを描く
3.十分な環境が与えられている

子ども自身が「もう勉強したくない」と強いストレスを感じているのであれば、勉強の内容と遺伝的素質がマッチしていない可能性があります

学校の先生についてではなく、「師匠」がもしかすると能力にかなりの影響を与えているかもしれない

何らかの形で「本物」に触れる機会があることは、能力の発現にポジティブな影響がありそうです

これまでの研究で、子どもの知能や学力に効果がありそうな要因を2つ挙げることができます。それは「静かで落ち着いた雰囲気の中で、きちんとした生活をさせること」と「本の読み聞かせをすること」です

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教育に関する意見が、どの程度エビデンスに基づくものなのか、わかりにくい部分もありましたが、習い事や学校が擬似的な環境に過ぎないということや、子どもに本物に触れさせることなど、現在の教育に欠如している考え方がいくつも示されており、勉強になりました。

<「才能のある人」に見られる3つの条件>は、ぜひ読んでおくといいでしょう。

これは、おすすめの一冊です。

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『チンプ・パラドックス』スティーブ・ピーターズ・著 依田卓巳・訳 海と月社

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◆目次◆

第1章 遺伝とは何かーー行動遺伝学の知見
第2章 学歴社会をどう攻略する?
第3章 才能を育てることはできるか?
第4章 「優生社会」を乗り越える

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