2014年12月6日

『21世紀の資本』トマ・ピケティ・著 vol.3791

【トマ・ピケティ『21世紀の資本』を読む】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4622078767

本日の一冊は、翻訳前から話題となっていたトマ・ピケティの新刊『21世紀の資本』。

本文だけで600ページ、文字もビッシリ詰まって内容も難易度高し。

しかしながら、今年中にぜひ読みたい、名著です。

富と所得の歴史的変動に注目し、3世紀にわたる20カ国以上のデータを引っ張り出して分析するという壮大な試み。

難しい経済書は嫌だ、という人でも、お金持ちになることや所得の格差には興味があると思いますが、本書はまさに、そんなど真ん中の欲求に答えてくれる内容です。

単なる心構えや短期的テクニックではなく、何が所得格差を決定づけているのか、どんな人が金持ちになるのか、資本収益率はどうやって決まるのか、「見えざる構造」に迫った、じつに興味深い内容です。

・過剰な資本は資本収益率を減らす
・労働の格差は常に、資本の格差より小さい

などというシンプルな原理や、お金持ちになればなるほど不動産の重要性が激減するという指摘など、資産形成にも役立つ視点が盛り込まれています。

本書の主題である格差については、経済成長率が低迷し、資本収益率が上がれば拡大する傾向にあるようですから、今後は貯蓄よりも相続の方が大事な世の中になるのかもしれません。

後妻業が流行るはずです…(苦笑)。

<果てしない格差スパイラルを避け、蓄積の動学に対するコントロールを再確立するための理想的な手法は、資本に対する世界的な累進課税だ>と説く著者の政策提言にどこまで同意するかは読者次第ですが、富の偏在がどのようにして起きるか、われわれの経済活動の仕組み・枠組みを考える上で、重要な示唆を与えてくれます。

読むのにかなり骨が折れますが、知的刺激あふれる良書です。

ぜひチャレンジしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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◆資本主義の第一基本法則
α=r×β
ここでrは資本収益率だ。たとえば、β=600%でr=5%なら、
α=r×β=30%となる

過剰な資本は資本収益率を減らす

労働の格差は常に、資本の格差より小さい

不動産の重要性は富の階層を上がると激減する(中略)住宅は中流階級と小金持ちに人気の投資だが、本当の富は常に金融、事業資産が主体なのだ

米国における格差拡大が金融不安の一因となったのはほぼまちがいない。理由は簡単。米国での格差拡大がもたらした結果のひとつとして、下層、中流階級の実質購買力は低迷し、おかげでどうしても質素な世帯が借金をする場合が増えたからだ。特に規制緩和され、金持ちがシステムに注入した預金で高収益をあげようとする恥知らずな銀行や金融仲介業者が、ますます甘い条件で融資するのだからなおさらだ

高所得者米国人の割合が増えた主な理由は、金融セクターだけでなく非金融セクターでも大企業重役への報酬が青天井になったこと

長い目で見て賃金を上げ賃金格差を減らす最善の方法は、教育と技能への投資だ。結局のところ、最低賃金と賃金体系によって賃金を5倍、10倍にするのは不可能だ

最も富める人はしばしば自分のポートフォリオを最も利益が高い機会に配分しなおせる立場にある

資本収益率が経済成長率よりも大幅かつ永続的に高いなら、(過去に蓄積された財産の)相続が(現時点で蓄積された富である)貯蓄よりも優位を占めるのはほぼ避けがたい(中略)r>gという不等式はある意味で、過去が未来を蝕む傾向を持つということだ

21世紀には、スーパー経営者と「中級不労所得生活者」を兼ねられる。新たな能力主義秩序はこれを奨励するし、おそらくそのしわ寄せをくらうのは低・中賃金労働者、中でも財産がないかごくわずかな人々だ

一般的に、経済的な相続と贈与の年間フローの国民所得比を指すbyは、三つの力の積に等しい。
by=μ×m×β
ここでβは資本/所得比率(正確には、公共資産とちがって相続により遺族に与えられる総民間財産が国民所得に占める割合)を指し、mは死亡率、μは生存者1人当たりの平均財産に対する死亡時の平均財産の比率を指す

ひとたび築かれた財産は、資本の動学にしたがって増加して、ただその規模ゆえに、数十年にわたって急速度で増加を続けられる。特に、財産の規模がある閾値を超えると、ポートフォリオとリスク管理における規模の経済によって、規模効果が強まることに注目。資本所得のほぼすべてを再投資にまわせるからだ

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『21世紀の資本』トマ・ピケティ・著 みすず書房
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4622078767

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◆目次◆

はじめに
第I部 所得と資本
第1章 所得と産出
第2章 経済成長──幻想と現実
第II部 資本/所得比率の動学
第3章 資本の変化
第4章 古いヨーロッパから新世界へ
第5章 長期的に見た資本/所得比率
第6章 21世紀における資本と労働の分配
第III部 格差の構造
第7章 格差と集中──予備的な見通し
第8章 二つの世界
第9章 労働所得の格差
第10章 資本所有の格差
第11章 長期的に見た能力と相続
第12章 21世紀における世界的な富の格差
第IV部 21世紀の資本規制
第13章 21世紀の社会国家
第14章 累進所得税再考
第15章 世界的な資本税
第16章 公的債務の問題
おわりに

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