2014年3月10日

『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』 森岡毅・著 vol.3520

【USJ復活の裏側】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4041106974

本日の一冊は、700万人台の前半まで業績が落ち込んでいたUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)を、奇跡のV字回復に導いた辣腕マーケター、森岡毅氏による一冊。

USJは、オープン当初、来場者数1000万人を突破していたにもかかわらず、その後低迷が続き、700万人台前半まで業績が悪化、2004年には、事実上一度破綻しています。

瀕死の状態だった同社を救ったのがUSJの代表取締役CEO、グレン・ガンペルで、氏がCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)に抜擢したのが本書の著者、森岡毅氏です。

氏は、もともとP&Gで日本ヴィダルサスーン、北米パンテーンのブランドマネジャー、ヘアケアカテゴリー・アソシエイトマーケティングディレクター、ウエラジャパン副代表などを経て、USJに転職した人物。

本書には、氏がUSJ復活のためにどんな施策を行ったか、そのマーケティングの詳細がわかる一冊です。

緻密なマーケティングリサーチの末に導き出した、「TDRとの差別化は不要」「映画は中心にしつつもアニメ、ゲームの要素を柔軟に取り入れる」などの方針が当たり、見事来場者数1000万人台まで回復させています。

なかでも、ハロウィーンの定義を変え、一大ブームを巻き起こした手腕(来場者数が見込みの3倍になった)、モンハン、ワンピースのファンを巻き込んだ大胆な施策、ファミリー層を巻き込み客単価を向上させた新ファミリーエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」の例は、マーケターとして目からうろこが落ちる思いでした。

革命児らしい物言いに反発を感じる人もいるかもしれませんが、USJおよび氏の勢いを感じる、興味深い一冊です。

マーケター、経営者はぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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この日本において、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンが、どうしてディズニーランドと差別化しないといけないのでしょうか? そもそも、USJとTDR(東京ディズニーリゾート)の間には激しい集客競合がほとんどないのです(中略)その理由は、東京と大阪の間には交通費という「3万円の川」が流れているからです。両方のマーケットは分断されているのです。その川を渡って向こう岸に行く人の割合は、USJ側から見ると実は全集客の1割にも満たないのです(中略)業界のガリバーであるディズニーランドと差別化するために、USJが関西マーケットで敢えてニッチ戦略を選ぶとしたら、それは愚の骨頂だとは思いませんか?

ビジネスは本質的な目的を正しく見据えることが大切です。戦略や戦術は目的次第で自由自在であるべきと私は信じています

1年で何かのエンターテイメントを10回消費するとしたら、9回は映画以外のことを日本人はやっている

短期間で自粛ムードを吹き飛ばすには「無料」という強さが必要だと思っていたので、頑としてキッズフリーにこだわりました

私はアイデアを考えるときは、まず目的を徹底的に吟味して定め、その次に相手が満たすべき「必要条件」を一番時間をかけて考えます。そしてその必要条件を組み合わせ、より条件を絞り込んで、自分が必死に思いつくべきアイデアの輪郭をできるだけ明確に絞り込んでいきます。具体的なアイデアを考え始めるのはいつも最後の最後

価値を生み出すアイデアの切り口は、経験上ほとんどの場合は「消費者理解」の中に埋まっています

悪魔や魔女や死体やゾンビやガイコツといったダークサイドの仮装がたくさん登場します。ならば日本のハロウィーンも、清く正しい自分の裏側、つまり「ダークサイドを楽しむ非日常」でのストレス発散ということになれば、もっとユニークで刺激的なシーズンになるのでは、と私は思ったのです

マーケティングをやる人間は、何でも自分自身でやってみることを習慣にすべきです

かくして新ファミリーエリア「ユニバーサル・ワンダーランド」の開発・建設計画は立案されたのでした。身長制限は最小限にして、小さな子供ができるだけ全ての体験ができるように「機能は子供に合わせ、デザインは母親に合わせ」、徹底的に体験価値にこだわった

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『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』森岡毅・著 角川書店
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/ 4041106974

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◆目次◆

プロローグ 私は奇跡という言葉が好きではありません
第1章 窮地に立たされたユニバーサル・スタジオ・ジャパン
第2章 金がない、さあどうする? アイデアを捻り出せ!
第3章 万策尽きたか! いやまだ情熱という武器がある
第4章 ターゲットを疑え! 取りこぼしていた大きな客層
第5章 アイデアは必ずどこかに埋まっている
第6章 アイデアの神様を呼ぶ方法
第7章 新たな挑戦を恐れるな! ハリー・ポッターとUSJの未来
エピローグ ユニバーサル・スタジオ・ジャパンはなぜ攻め続けるのか?

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