2013年11月2日

『創業一四〇〇年 世界最古の会社に受け継がれる一六の教え』 金剛利隆・著 vol.3392

【世界最古の会社の教えとは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478017913

本日の一冊は、創業1400年の歴史を持つ、世界最古の企業、金剛組の経営哲学を、同社相談役がまとめた、じつに貴重な一冊。

じつは本書が出版される直前、2013年10月28日に著者が永眠されたそうで、残念ながら、これが遺作となってしまいました。

578年、飛鳥時代に創業し、聖徳太子の命で四天王寺の建立を手掛けたという金剛組が、何を大切にし、何を引き継いできたのか、本書には、その奥深い教えが書かれています。

金剛組の教えの中心にあるのは、「遺言書」と呼ばれる、十六条の戒律ですが、本書にはそのすべてが書かれており、著者の解説が付されています。

・御殿ならびに武家のことは深く考えなくともよい。その主人 の好みに従うこと
・読書・そろばんの稽古をせよ
・なにごとも諸事万端取引してくれる方々へは無私正直に対応しなさい

さまざまな教えが書かれており、じつに興味深い内容ですが、土井が興味を持ったのは、十六条とは違う、この一文でした。

<いつの時代に、誰に見られたとしても恥ずかしくない仕事をする>

「誰に見られたとしても恥ずかしくない仕事をする」なら、よくある話ですが、これに「いつの時代に」が加わると、まるで意味が変わります。

自分の仕事は、数十年後、数百年後誰かに見られても恥ずかしくない仕事だろうか。

そんなことを考えていたら、これまで満足していたはずの仕事が急に恥ずかしくなってしまいました。

本書によると、宮大工は完成した寺社に、工事関係者の名前を書いた「棟札(むなふだ)」を残すようですが、じつはこれが見つけられるのは、次の解体作業の時。

短くても数十年、長ければ数百年間、誰の目にも触れない棟札もあるそうです。

<いつか評価されるときに備えて最高の仕事をすること。そして、それができる弟子を育てること>

それが宮大工の使命であり、棟梁の責任でもあると、著者は語っています。

世界に誇る金剛組が代々伝えてきたこと。その教えに触れられる、じつに貴重な機会です。

ぜひチェックしてみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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確かな技術を持つ人材を育てること。後継者は、血縁以上に能力で選ぶこと

いつの時代に、誰に見られたとしても恥ずかしくない仕事をする

伝統を守ることとはすなわち、それを次世代に伝えられる人間を育てること

器用さよりも仕事への姿勢が成長を決める

「別に、わからんでもええんやで」
弟子には、こうも言ってやります。
言葉で教えられて、たとえ頭では理解していたとしても、実際に手を動かして現場でやってみないと身につかない技術。それをわかっているからこそ、弟子を安心させ、伸び伸びと仕事をさせるのも棟梁の務めです

若いときに、小さく無難に仕事をまとめることを覚える必要はないでしょう。まずは自分なりにやってみて、壁にぶつかったときに学べばよいのです

あえて難しい方法に挑戦させることは、弟子の成長を促し、どんな仕事がやってきても満足に対応できる人材を育てることにつながります。そうして完成した寺社に、宮大工は、工事関係者の名前を書いた「棟札」を残します。とはいえ、多くの場合が屋根裏に置かれるため、次の解体作業まで見つかることはありません。短くても数十年、長ければ数百年間、誰の目にも触れない棟札もあるでしょう。いつか評価されるときに備えて最高の仕事をすること。そして、それができる弟子を育てること。それが宮大工の使命であり、棟梁の責任でもあります

なにごとも諸事万端取引してくれる方々へは無私正直に対応しなさい

「私たちの仕事は、お施主さん、檀家さん、氏子さんの浄財で建てていることを忘れてはいかん。儲けは後からついてくるもの。必要以上の金儲けに走ってはいけない」(金剛よしゑ)

経営悪化の原因は不得手な事業に手を出したこと

二〇〇五年の八月、いよいよ後がなくなりそうになったとき、「ここが最後だ」と銀行が声をかけたのが高松建設でした。
「金剛組はもうどうにもなりません。?松さん、何とかなりませんか?」すでに何社にも断られていたため、銀行の担当者も期待していなかったと思います。しかし、それを聞いた会長はこう言ってくれました。「何でもっと早く言ってくれんのや!金剛組を潰したら、大阪の恥や!」

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『創業一四〇〇年 世界最古の会社に受け継がれる一六の教え』 金剛利隆・著 ダイヤモンド社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478017913

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◆目次◆

はしがき
第1章 一四〇〇年の伝統を支える人づくり
第2章 聖徳太子の命で始まった世界最古の会社
第3章 いまも受け継がれる「遺言書」一六の教え
第4章 「なにわの女棟梁」が老舗を立て直す
第5章 義理と人情が救った存続の危機
第6章 原点回帰で歩み出す次の三〇〇年
あとがき
金剛家関係年表

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