2012年5月11日
【賢く、軽快に生きるために。】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4023310727
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本日の一冊は、スイスの名門プライベートバンク、ピクテの日本代表の座を捨て、1999年に日本初の独立系ファンド「さわかみファンド」を立ち上げた澤上篤人さんが、人生設計全般を語った一冊。
さまざまな経済危機を乗り越え、順調に純資産総額を伸ばしてきた「さわかみファンド」。その投資方針のブレのなさには定評がありますが、やっている本人の生き方にもブレがない。
本書のなかで、著者の思想が垣間見える部分をまとめて抜き出してみましょう。
「自助努力を重ねるのは当たり前」
「人生できる限り単純に、すっきりと生きていこう」
「自分の願う方向で事業を展開している企業を応援」
「人のため世のためにお金をつかう」
「実力者になればいい」
「あえてリスクを取りに行くのが事業の醍醐味」
「生きていくためには、勝たなければならない」
「入るを計るよりも、出ずるを制す」
ストイックな私生活と、一転、リスクを取る社会のための投資活動。それが長期的に富を生むことを、著者は説いています。
また、電気代の節約といった小さな話から、生命保険、住宅ローンの注意点、また財産防衛、キャリアのヒントまで、実践的な内容も、幅広くアドバイスしています。
興味深かったのは、スイスの銀行の日本代表をしていた頃、500万円貯まったと言って喜んでいた50歳ぐらいのおじさんと飲みに行った話、そして著者が付き合っていた、ヨーロッパの大金持ちのお金の使い方に関するエピソード。
これを読めば、彼らが「倹約」→「貯蓄」→「投資」→「社会貢献」という流れに従って生きていることがよくわかります。
怠惰な生活とは無縁、あぶく銭を狙うのではない、潔い生き方。
サブタイトルにある「軽やかな生き方」の意味が、よくわかりました。
今後の日本経済の方向性と、資産運用のポイント、われわれがどう生きていけばいいかのヒントが、まとめて得られる一冊です。
ぜひ読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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自助努力ってなにかって? 「頑張れば、必ずなんとかなる」と信じて、とにかく前向きに生きていくことよ。その上で、自分もまじめに働くが、自分のお金にもゆっくりと働いてもらって経済力を高めていく。これに尽きる
夜間の電気料金が安くなる契約方法があるのは知ってるかい?電力会社によってサービス内容が異なるけど、大体夜11時から朝7時までの電気料金が半分以下になる。ただし、それ以外の時間帯の電気料金が割増になるから、上手につかわないといけないが、そのサービスを利用し、朝7時までに洗濯などを終えてしまえば、電気代は相当に浮く
「こんな社会に住みたいな」「こういった世の中を子どもや孫達に残してやりたいものだ」と強く思い願う方向へ、お金をどんどんまわしていくのが長期投資家の本分である
人々がお金をつかったら、新しい産業が生まれた
長期投資家は、生活に欠かせない企業の株に、株価暴落時などには断固たる応援買いを入れる。たったそれだけのことで、安く買うという投資の基本が自動的にできてしまう
投信を購入したお金は信託財産として管理されるから、はじめから終わりまで投資家の財産として法的に守られる
日本に多い保障と運用とを抱き合わせにした保険商品は、見えないコストが結構かかって割高
いまの間に住宅ローンを固定にしてしまえば、将来にわたってこの異常なまでの超低コストを享受できるのだ。この有利さをつかわない手はない
発想を根本的に変えて、現役の間はずっと賃貸住宅でいくとしよう。マイホーム取得は引退してからだ
なかには、8時間の就業時間内にテキパキと仕事を片付けてしまう人もいよう。しかし、それは今日やるべき仕事を効率よくこなしているだけだ。せいぜい有能なる事務処理屋にすぎない。(中略)これからの企業では、どんどん新しい仕事をつくっていけるぐらいの人間にならなくては、会社が必要とする実力者とはいえまい
一時的にしろ貧しい生活を経験するのも、家族の団結を強める一法と思ったりもしている
これから5年ぐらいの間に、日本の雇用環境はびっくりするほど変わるよ。非正規は不利で正社員なら安泰という現在の図式が、根っ子から崩れてしまうだろうね。おそらくだが、日本の労働行政は抜本的な見直しを迫られると思う
なんとも不甲斐ない日本の政治ではあるが、国には徴税権と印刷権という独占的な権限がある点は忘れまい
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『大丈夫、なんとかなる。』澤上篤人・著 朝日新聞出版
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◆目次◆
第1部 お金や将来のこと
第2部 仕事や暮らしのこと
第3部 経済や社会のこと
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2012年5月10日
【一瞬でデキる人に変わる「重要思考」とは?】
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以前、勤めていた部下から、こんな質問をされたことがあります。
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部下「土井さんはどこに赤ペンを引いているのですか?」」
土井「バカ、ビジネス書なんだから儲かるところに決まってるだろ」
部下「儲かるところってどうやって見極めるんですか」
土井「将来の決算書に影響があるかどうかで見るんだよ。損益計算書でいえば、売上高、売上原価、販売費及び一般管理費にプラスの影響がありそうかどうかだよ」
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この答えを聞いて、部下は「なるほど」と言っていましたが、本当に理解してもらえたかどうかはわかりません。
ビジネスにおいて「重要」というのは、儲かること。この言葉に抵抗があるなら、「相手に与える価値」と「コスト」のバランスが重要だと言い換えてもいいでしょう。
これがわかっていない社員は、上司に「報連相(ほうれんそう)」した時に、ボロが出ます。
伝える内容の軽重がわかっていないと、「ビジネスセンスのない奴」と思われてしまうのです。
本日の一冊は、この「重要なこと」にフォーカスし、いかに伝えるかを説いた、実践的な一冊。
4月の啓文堂書店のダービーで「ビジネス書大賞」に輝いた、三谷宏治さんの『一瞬で大切なことを伝える技術』です。
著者の三谷宏治さんは、かつてボストン コンサルティング グループやアクセンチュアで戦略コンサルタントとして活躍した人物。
PTA会長をやってみたり、ペンギンの本を出してみたり、著者としてはブレがある印象で、これまで食指が動かなかったのですが、先日かんき出版の営業Aさんからのゴリ押しで見本を渡され、読んでみたら大当たりでした。
本書が説く、「一瞬で大切なことを伝える技術」というのは、著者オリジナルの「重要思考」のこと。
本書によると著者は、この「重要思考」を、かつて勤めていたBCGやアクセンチュアの後輩たちにも教えていたそうです。
では、その「重要思考」とは何なのか。
それは、「重み」と「差」の2点から考える思考法のことです。
著者曰く、<たいてい、ヒトは「差がある」ところしか考えません。不思議なことに「ダイジかどうか」がいつも抜けているのです>。
だから、まずは伝える際に、「重要かどうか」を考える。重要だとわかったら、差を伝える、というようにステップを踏めばいい。
この「重要思考」を、「考える」「話す」「聴く」「議論する」の4フェーズで使いこなせるよう解説したのが、本書『一瞬で大切なことを伝える技術』です。
現在ベストセラーとなっている『「超」入門 失敗の本質』のなかに、<目標達成につながらない「勝利」の存在>というのがありましたが、まさに「重要思考」が欠如していると戦いにも敗れてしまう、といういい例だと思います。
勝利するために、最も重要なところにフォーカスする。その上で議論を重ねる。
確かにタイトル通り、一瞬で大切なことが伝わる内容でした。
まだ読んでいない方は、ぜひチェックしてみてください。
なお、明日から本書のDVD版『DVD 一瞬で大切なことを伝える技術 プレミアム版』が発売になるそうですので、著者の講演に興味のある方は、こちらもチェックしてみるといいと思います。
※参考:『DVD 一瞬で大切なことを伝える技術 プレミアム版』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4761225033
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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会話の中で○○マトリクスや□□分析やピラミッドストラクチャーなどは使いこなせません
『重要思考』=「重み」と「差」
◆一瞬で大切なことが伝わる会話・議論への4ステップ
1.言いたいコトをはっきりさせる(重要思考で考える)
2.言いたいコトを相手に伝える(重要思考で伝える)
3.相手が言いたいコトを理解する(重要思考で聴く)
4.相手とちゃんと会話・議論する(重要思考で伝え合う)
日常におけるロジカルの超基本とは、もっと単純です。それはまず「塊」と「つながり」がはっきりしていることなのです
ヒトは「程度」が大ざっぱです。それを、はっきりさせましょう。程度の問題は数字で言い切れれば、一層はっきりします。定量化、ですね。さらにこれらは、どこの国での話なのでしょうか。日本、アメリカ、それとも世界全体のこと? 「範囲」を、はっきりさせましょう
「うちの部品調達コストは他社より1割安い」としましょう。「差」はたった1割です。でも、そのビジネスの全コストのうち、部品代の占める「重み」はどうでしょう。もし6割あるとしたら、それはとってもダイジです
『重要思考』とは、ダイジなところで差があるか、と考える方法です。それだけです。でもたいてい、ヒトは「差がある」ところしか考えません。不思議なことに「ダイジかどうか」がいつも抜けているのです
ビジネスの現場において、最終的に存在するのはコストと付加価値だけです。どれだけの価値をビジネスの相手に、どれだけのコストで届けられるのか。だとすれば、そのコトがダイジかどうかはその付加価値やコストでの「重み」でハカれます
塊ごとに短めに区切ることが、口頭で理解してもらうには必須です。なので短冊一枚一枚を、読みながら渡す感じで、丁寧に話しましょう
上司への報連相に、もし上手下手があるとすれば、それはどれだけのことを伝えられるかではなく、どれだけのことを捨てられる(伝えない)かにあります。だから「1分で話す!」ことを自分に課してください
『重要思考』の超基本は、塊とつながりを明確にする、でした。実はもう1つ大前提があります。それは論理と感情を分ける、事実と推測を分ける、ということです
ほめる、には極意が2つあります。1つは他(自分とか)とちゃんと「比べる」こと。もう1つは、「相手のダイジなところ」でほめること、です。ほめるとは、『重要思考』そのものなのです
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『一瞬で大切なことを伝える技術』三谷宏治・著 かんき出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4761267933
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◆目次◆
Prologue ロジカルに伝える最強の技術、『重要思考』
Step1 言いたいコトをはっきりさせる
Step2 言いたいコトを相手に伝える
Step3 相手の言いたいコトを理解する
Step4 相手とちゃんと会話・議論する
上級編 『重要思考』でほめる・つなぐ・ファシる・決める
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2012年5月9日
【プロコンサルの逆から考える技術】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534049447
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本日の一冊は、BCGでコンサルタントをしていたロブ・ヴァン・ハーストレッチトと、マッキンゼーで働き、その後eBayのオランダでCFOとして活躍したマーティン・シープバウアーが、共著で書いた問題解決マニュアル。
<「逆」から考える>というのは、<問題そのものではなく、理想や目的を考えることから始める問題解決法>のこと。
日本語版序文を書いている細谷功さんによると、<我々はついつい「最終ゴールから」ではなく「目先のことから」、「やるべきことから」ではなく「できることから」、「目的から」ではなく「手段から」、「やるためにはどうするか」ではなく「できない理由から」考えてしまう習性を持っている>。
そこで、<問題を分析するのではなく、最初からはっきりとした解決策に注目する>というのが本書のポイントです。
言われてみれば学生時代、社会問題に関するレポートを書いていた時は、大体問題の分析に始まって、大した解決策に至らず、適当なアイデアを書いてお茶を濁していました。
本書で述べているように、測定可能で明確なターゲットを決め、きちんと解決策を議論すれば、自ずと正しい答えが、導かれてくるはずなのです。
本書のなかで著者らは、「いい分析」の定義について、こう述べています。
<いい分析とは、目的に至るための有効な解決策を見つけるのに役立つような質問への、事実に基づいた答えのことである>
そして、この分析について、1.質問型アプローチ、2.解決策型アプローチ、3.段階的アプローチという3つのアプローチ方法を解説。
その後は、<分析を実行する><解決策を策定する><利害関係者と連携する>の順に説明し、実行までのプロセスを紹介しています。
<ボートを揺らせば揺らすほど、人はその場にしがみついてしまう>
<大きな変化を起こすには、失敗の不安を掻き消すような、強い光が必要>
など、上手い比喩や名言も登場し、ビジネスリーダーの自己啓発書としても読むことができます。
「結果にこだわる」ビジネスマンになるために、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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◆目標設定のポイント
1.方向性
2.測定可能な目標
3.クライテリア(基本方針)
いい分析とは、目的に至るための有効な解決策を見つけるのに役立つような質問への、事実に基づいた答えのことである
解決策型アプローチをベースとしたフレームワークでは、すぐに答えが要求されるということだ。つまり、逆から考えざるを得なくなるのである
真の「いいアイデア」は、綿密な分析を通してさんざん検討され、検証され、バージョンアップされたアイデア
ブレークスルーとなる発見がないと、ブレークスルーとなる変化は起こせない。そしてブレークスルーとなる発見とは、新しい論理と新しい事実からもたらされるものである
意思決定者には、じっくり用意した選択肢を最低ふたつは提出するべきだ。そうすればトレードオフはより明確になるし、決定後には誰にも「選ばれなかった選択肢」がはっきりわかる
ベストな解決策というものは、発案者が誰だったのかは関係なく、誰もが「自分が関わった」と実感できるものである
人は本能的に蜜の味へと傾倒し、苦い水は敬遠するものである。通常、解決策を考える段階で関わる人が多ければ多いほど、蜜の味のほうへ流れがちだ
実行力を分析するのに実践的なやり方は、施策(つまりToDoリスト)をシミュレーションし、本当に実行可能かをひとつひとつ検討してみることだ
ボートを揺らせば揺らすほど、人はその場にしがみついてしまう
大きな変化を起こすには、失敗の不安を掻き消すような、強い光が必要
要点はシンプルで、リソースと目標とはマッチしているべき
大きなプロジェクトを実行するとき、疑わしいときは外から人材を引っ張ってくるようなことはやめたほうがいい
夢を叶えるためには、ひとつやふたつの行動では足りない。気持ちと、リソースと、そして環境とを揃えなければならないのである
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『すべての仕事は「逆」から考えるとうまくいく』 ロブ・ヴァン・ハーストレッチト、マーティン・シープバウアー・著 日本実業出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4534049447
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◆目次◆
Chapter1 目標を設定する
Chapter2 分析のためのフレームワークを構築する
Chapter3 分析を実行する
Chapter4 解決策を策定する
Chapter5 利害関係者と連携する
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2012年5月8日
【オリンパスの真相2】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062175894
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本日の一冊は、オリンパス事件が明るみに出るきっかけを作った月刊誌「FACTA」のジャーナリストが、当該事件の裏部隊を明かしたノンフィクション。
オリンパス経営陣を葬り去った当事者が書いているだけあって、こちらも刺激的な内容です。
「勉強になる」という意味では、『解任』より圧倒的にこちらの方が面白いですが、その理由は、著者がもともと公社債研究所にいて、財務分析に詳しいこと。
それだけに、オリンパスの損失隠しの手口が事細かく解説されていて、ウッドフォードが書いた『解任』以上に事件の真相に迫っています。
※参考:『解任』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152092912
芥川龍之介の『藪の中』ではないですが、この手の話は、誰の話が本当なのか、じつにわかりにくいもの。
※参考:『藪の中』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062764598
これは、情報化社会の必読書かもしれません
あてにできるのは、おそらく数字や事実であり、また登場人物のインセンティブなのですが、そういう意味で、本書はかなり真に迫っている内容だと思います。
知人のオリンパス社員・深町(仮名)から提供された情報、著者がオリンパスの決算書を見て抱いた疑問、事件解明のカギとなる「のれん代」、明らかに割高な値段で買収された企業群、そして謎の人物たち…。
ひとつひとつの事実が解明していく様は、下手なミステリーより刺激的です。
ウッドフォードの『解任』では書かれていなかった事実も書かれており、『解任』と併せて読むと、より問題点が明らかになるでしょう。
また、メディア関係者には、著者がいかにしてセンセーショナルな記事を書くのか、その手法を明らかにしたP60~P62がおすすめです。
ということで、当事者の体験を重視するなら、『解任』。より真相に迫りたいなら、この『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』をおすすめします。
時間がある方は、ぜひ読み比べてみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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社長としてのウッドフォードは猪突猛進型であるだろう。社員に要求する仕事のレベルは高い。オリンパスの英国子会社キーメッドで社長を務めた時期には、社員に会社の半径三〇キロ以内に住むよう求め、会社に電話がかかってくれば、社員が受話器を取るまでに何秒かかっているかを計っている
オリンパスは社内外にあれこれ情報を流し、それがどこにどのような経路で流れ、誰が反応するのかを見極めることで、社内機密の漏出元を探り出そうとしたようだ。官公庁がよく使う手である
オリンパスは損失の穴埋め資金を「企業買収のため」と偽って銀行から借り入れており、これを損失の穴埋めに充てていた。しかもそのカネの一部は、横尾弟たち金融ブローカーにまで億円単位で流れている。カネを貸した銀行から見れば、ペテンにかけられたようなものだった
オリンパスの損失隠しには野村証券OBが多数関わっており、彼らを抜きにして一連の事件を語ることはできないし、事件そのものが発生しなかったかもしれない
オリンパスの損失隠しを可能にし、その発覚を妨げたものの一つに、二〇〇四年に導入した本格的なカンパニー制も挙げられるであろう
オリンパス事件が暴きたててしまった問題は多い。コーポレート・ガバナンスや情報開示の問題だけでなく、日本の経済社会が水面下でいかがわしい金融のプロの存在を許してしまっている点、会計問題や監査法人の能力とそのあり方、営業ツールに堕したアナリストレポートの問題、マスメディアのチェック機能喪失、企業の内部通報制度の不備、株式持ち合いの悪弊…など、数え上げたら切りがない
ウッドフォードが委任状闘争からの撤退を表明する前夜に、私がウッドフォードの宿泊先を訪れた際、ウッドフォードに「私はオリンパスが実質的に債務超過ではないかと思っている」と水を向けると、彼は意外にも“I agree(私もそう思う)”と短く、しかしはっきりと言った。上場維持を訴えていたウッドフォードの言葉としては意外だった
東京証券取引所が不透明な形でしかも過去の同様のケースと整合性がつかない形で上場を維持したことは残念だ。後に悪しき前例として残ってしまうことを恐れる
正義とは日本人にとって失われつつある価値観なのだ。ひょっとすると正義よりも、逮捕された菊川や横尾らの隠れて不正を働いてしまう価値観の方が日本人にとってより親しみやすい友人なのだろう
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『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』山口義正・著 講談社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062175894
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◆目次◆
プロローグ 旅先の告白
第一章 潜行取材
第二章 震えながら待て
第三章 黒い株主
第四章 怪僧登場
第五章 偽りの平穏
第六章 野村証券OBたち
第七章 官製粉飾決算
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2012年5月7日
【オリンパスの真相1】
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今日と明日は、関連した2冊をご紹介いたします。
紹介するのは、マスコミを賑わせたオリンパス事件に絡む2冊。
両方とも読んだ方は、そんなには多くないと思いますので、代わりに土井が読み比べてみました。
まず一冊目となる、オリンパス元CEO、マイケル・ウッドフォードによる『解任』を紹介。
30年勤めたオリンパスを告発し、菊川会長と闘った著者の一部始終を、当事者の目線から書いた、ノンフィクションです。
本書によるとウッドフォードは、16歳で働き始め、21歳でオリンパスの医療事業の英国代理店、キーメッド社にセールスマンとして入社、29歳の時には同社の社長として会社を任されたという辣腕経営者。
本書では、正義感の強い彼が、どうやって不正に気づき、経営陣と闘うにいたったか、どうやって経営陣を追い込んだか、が書かれています。
キーメッド創業社長レディホフ氏が元オリンパス専務宮田耕治氏に語った経営の要諦や、著者が尊敬する内視鏡事業の元トップ河原一三氏のエピソードなども入っており、経営そのものにも示唆が得られる内容です。
これだけを読むと、著者がオリンパスを思う気持ちに、思わずじーんと来てしまう。
経営において大切な「高潔さ」や「闘う姿勢」を問うてくる内容です。
オーナー経営者、後継者は、必読の一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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私がもっとも尊敬するのは河原の公私の区別です。彼の退職後に、一度昼食を共にしたことがありました。彼は席に着くなりこう言ったのです。「今日の昼飯は誰が払うんだ」それは、もう自分はオリンパスに昼飯をご馳走になる理由はない、という意味でした ※「河原」は、内視鏡事業の元トップ河原一三氏
「森さん、あなたは誰のために働いているんですか?」彼は今回ばかりは私の目を見つめ返して、こう答えたのです。「菊川さんです。私は菊川さんに忠誠を尽くしています」
私がいま問題にしていたのは、買収自体の是非ではありません。買収はもう済んだことでした。問題は、二〇一〇年になって、買収総額の三分の一におよぶ七億ドル近い異例の支払いがなぜ追加で発生したかという点です。しかもケイマン諸島の怪しげな投資会社に
オリンパスに真に必要なのは、現経営陣から完全に独立した新しい経営陣です。新しい経営陣なくしては傷ついた会社の評判を回復することはできません。そこで私は仲間たちと相談のうえ、取締役を辞任して、プロキシ─ファイト(委任状争奪戦)に持ち込むことにしたのです
その日の深夜、小さい記事でしたが、朝日新聞のウェブサイトに第一報が載りました。翌日、世界じゅうのメディアが私のプロキシ─ファイトからの撤退を報じました。こうして私の戦いは終わりを告げたのです
一人のセールスマンとしては、日本企業の飛び抜けた商品開発力に魅力を感じずにはいられません。日本の技術者はじつにすばらしい製品を生み出しています。日本の方々は誇りに思うべきです。しかし技術は一流ながら、企業間のもたれあいやジャーナリズムの未熟さのせいで、低級なガバナンスや二流の経営がはびこり、世界で戦うための力が失われているのです
「コウジ、この世の中には掃いて捨てるほどたくさんのグッドナンバー2と、ごく一握りのグッドナンバー1がいる。グッドナンバー2が知識、経験をつんでグッドナンバー1になれる確率は驚くほど小さい。だから経営トップの後継者探しは、グッドナンバー1を探し出し、それに必要な教育を施すことが不可欠になる。それが出来ず、手近なグッドナンバー2を後継者に選んだ時点から、組織の衰退が始まる」(キーメッド創業社長レディホフ氏が元オリンパス専務宮田耕治氏に語ったこと)
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『解任』マイケル・ウッドフォード・著 早川書房
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4152092912
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◆目次◆
はじめに
プロローグ 解任
第1章 発覚
第2章 対決
第3章 苦悩
第4章 決意
第5章 手紙
第6章 帰国
第7章 昇格
第8章 調査
第9章 理由
第10章 孤独
第11章 辞任
第12章 発表
第13章 帰還
第14章 闘争
第15章 拒絶
第16章 撤退
第17章 未来
マイケルのこと
巻末資料
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2012年5月6日
【プルデンシャル生命No.1営業マンの気配り術】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022734469
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本日の一冊は、プルデンシャル生命2000人中No.1のセールスマンであり(2001年)、ロングセラー『かばんはハンカチの上に置きなさい』の著者としても知られる川田修さんによる一冊。
※参考:『かばんはハンカチの上に置きなさい』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478005869
今回は、営業マンに限らず、仕事の気配りを学べる内容で、著者がこれまで見聞きした気配りのエピソード、社員やお客様に気配りができている会社の例が、たくさん出てきます。
女子社員に気を遣わせないよう、昼休みにはお客を連れて行かない社長、社員の子ども用口座に、毎月生まれた時のグラム数と同じ金額を振り込む女性経営者、新人の実家すべてにあいさつに行く若い支店長…。
感動の「気配り」エピソードがたくさん盛り込まれていて、思わず目頭が熱くなります。
また、著者が普段サービスに対して感じている不満も書かれており、これは思わず「そうそう!」と頷いてしまいました。
頼みにくいし、忘れられがちだからこそ、早く持ってきてほしいお水、ケチらないで欲しいホテルのひげそり、声に出さないで欲しいお会計の金額、そして、やめてほしい札・小銭・領収書の同時渡し。
ホテルや飲食店、小売店、タクシー会社など、読者のなかに経営者がいらっしゃったら、即刻本書を読んでやめさせるべき悪しきサービスの例も書き込まれています。
そのまま真似するだけでも相当効果があると思いますが、やはり真似て欲しいのは、その心構え。
著者も言うように、「気配り」とは「相手を好きになること」に他ならないのです。
ノウハウあり、エピソードあり、感動ありの、新書としたら申し分ない一冊。
これはぜひチェックしてみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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私たちが店の外に出ると、店主の親父さんが急いで厨房の裏口から出てきたのです。そして私たちに向かって、深々と頭を下げて言いました。「本当にすいませんでした!」(店が混んでて入れなかった時のエピソード)
私は最初にお会いした時は保険の話をしないことが多いのです。なぜかというと、どんな人か、どんな会社かもわからないのに、商品を売ることなんてできないからです。まずは相手がどんな考え方で、どんな文化を持っているのかを知ること。私の営業の仕事はそこから始まります。相手が会社の社長さんだったら、その会社のことも最初に詳しく知っておきたいのです
お客様の駐車場では、来客用の場所には絶対に車を停めるな
会社に戻ってから、お礼のハガキを書くなら、まだわかります。でも、お客様のところを出た瞬間にハガキを書くなんて発想は、当時の私にはありませんでした
「○月○日(金)のご都合はいかがですか?」と、メールに曜日が書いてあれば、見た瞬間にある程度の判断ができて、相手の方はカレンダーやスケジュール帳を見る手間が省けるかもしれません
私が尊敬しているプルデンシャル生命の日本における創業者、坂口陽史(きよふみ)氏が生前に言っていたこんな言葉があります。「きょう一日、私はひとつだけ良いことをします。人に見られたら、それはカウントしません」この言葉が私はとても好きです
「だってさ、1時間前に俺がお客さんを連れて会社に帰っちゃうと、まだ昼休みの時間なのに、女子社員がお茶を入れたりしなきゃいけなくなるじゃない? せっかくの休憩時間にそんな気を遣わせるのは、彼女たちに申し訳ないからさ」
赤ちゃんが生まれると、その子ども用の口座に、生まれた時のグラム数と同じ金額を毎月振り込んでくれるそうです。たとえば、3215グラムで生まれたとしたら、3215円
彼は支店に新入社員が配属されてくると、その両親がいる実家まであいさつに行くそうです。都内に実家がある新人だけではありません。岐阜でも、仙台でも、鹿児島でも、日本全国どこにでも行くというのです
領収書の上にお釣りを乗せて、さっと一緒に手渡されると、正直、仕舞いにくくないですか?
精算金額は支払いをする人以外には見せない、決して読み上げない。私からのお願いです
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『仕事は99%気配り』川田修・著 朝日新聞出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4022734469
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◆目次◆
第1章 「ちょっとした気配り」が心に大きな変化を与える
第2章 気配りの基本は「相手目線」で考えること
第3章 成功している人は、みんな「気配りの達人」
第4章 あと少しの気配りがあれば……と思う残念な瞬間
第5章 私の気配り実践法
おわりに 「おたがいさま」という気持ちを忘れない
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2012年5月5日
【ステージ別に部下を育てる】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478020442
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この4月から新卒を入れてわかったこと。
それは、「社員はステージごとに教えることが違う!」という、ごく当たり前のことでした。
毎年、新卒が入ってくる従来型の大企業であれば、この認識は当然あると思いますが、戦力のほとんどが中途採用の中小企業では、おそらくどの社員もいっしょくたにして教育を行っているはず。
経営者がどんなに素晴らしい講師を招いて研修しても結果が出ない理由は、まさにここにあるのではないでしょうか。
本日の一冊は、企業の人材教育を手掛けるリクルートマネジメントソリューションズのメンバーが、年間受講者15万人を誇る企業人の成長モデル「トランジション・デザイン・モデル」を公開した、注目の一冊。
なかでも、多くの企業が悩んでいる一般社員層を4つの成長ステージに分け、どうやって育成・指導したらよいか、事細かにレクチャーしています。
◆一般社員層:4つのステージ
1.スターター
ビジネスの基本を身につけ、組織の一員となる段階
2.プレイヤー
任された仕事を一つひとつやりきりながら、力を高める段階
3.メインプレイヤー
創意工夫を凝らしながら、自らの目標を達成する段階
4.リーディングプレイヤー
組織業績と周囲のメンバーを牽引する段階
とりわけ有用なのは、「ステージの変わり目=トランジション」に注目した、指導方法。
部下が今のステージからワンステップ上に上がるための「5つのプロセス」を詳しく解説しており、じつに参考になります。
トランジションの段階で、どんな体験をさせればいいか、周囲はどう関わればいいか、どう声掛けをして意識を変えればいいか、丁寧にノウハウをまとめています。
運用できるかどうかは、マネジャー次第ですが、これは実践的なノウハウだと思います。
ぜひチェックしてみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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職場における部下の能力やキャリアがバラバラな中で、それぞれの部下の成長段階に合った育成や指導ができていない
うまくいっているマネジャーは、部下の成長段階をきちんと捉え、その「段階」に合わせた仕事の任せ方、経験の積ませ方、仕事のプロセスでの関わり方を意図的に行っていた
業務の知識やスキルを身につけるというだけでなく、段階の移行においては、仕事の仕方そのものや、持つべき視界の広さなど、本人の意識や態度、価値観、姿勢といったところまで変化し成長してもらう必要がある
部下に対して、
・新たな段階に転換することを期待していることを告げる
・その「期待」とは具体的にどのようなものかを明らかにする
・サインを発信し、部下本人に気づかせることが、育成の重要なポイント
◆トランジションを促進させる周囲の関わりの例
1.スターターへのトランジション
・自分視点でなく、他社視点や多様な観点を示して考えさせる
・安心して相談してきてくれる関係性を作り、励ます
2.プレイヤーへのトランジション
・報告・連絡・相談の徹底を促し、事実と判断の根拠を求める
・一緒に振り返りを行い、できるようになったことや結果が出たことについて認める、ほめる
3.メインプレイヤーへのトランジション
・日頃から声をかけ、仕事の抱え込みの状況を把握しておく
・仕事に対する考え方や持論を語り合う
4.リーディングプレイヤーへのトランジション
・自分で手を動かして進めようとすることを注意する
・チームの成果を重視することを示す
◆スターターの育て方
・お客様や他部署の視点に触れる機会を作る
・できるだけ多くの同僚・先輩と触れ合う機会を作る
・小さな前進を認める
・社会人として求められる「基準」を明示する
・こまめに声がけを行い、職場への安心感を醸成する
・他者視点で考えさせる
「マネジャーが部下一人ひとりの育成に個別に関わるだけでなく、部下同士がお互いに関わりながらトランジションを促進し合っているチーム」を作る
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『部下育成の教科書』山田直人、木越智彰、本杉健・著 ダイヤモンド社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4478020442
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◆目次◆
1章 「ものさし」を使って部下を育てる
2章 「変わり目」こそが部下育成のチャンス
3章 ステージ別に部下を育てる
4章 ステージ別育成をチームに取り入れる
5章 マネジャー自身の「この先」のステージ
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2012年5月4日
【非常時に問われるもの】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/456980330X
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本日の一冊は、東京都副知事として、東日本大震災の大混乱に対処した著者が、非常時の「決断」について語った一冊。
震災時の政府、東電の決断のずさんさは、もはや万人の知るところですが、同時に、「もしわが社に同様のことが起こったら?」と肝を冷やした人も多かったはずです。
悲しいかな、それが政府であれ、民間であれ、平時が長く続けば、非常時への対応が甘くなるのは人間の性。
この機会に非常時への備えをきちんとしよう、と思うリーダーにこそ、本書はおすすめです。
本書のなかに登場するのは、ほとんどが東日本大震災関連のエピソード。
著者が千葉県からの要請を待たず、迅速に消防艇を出動させた話、ツイッターのリツイートを見て気仙沼にヘリを急行させた話など、迅速な対応がいかに重要か、教えてくれるエピソードがてんこ盛りです。
一方で、福島第一原発に直行したにもかかわらず、命令系統の問題で引き下がり、その後状況が悪化した話など、悔しい話もいくつか載っています。
エピソード中心の本ではありますが、ところどころに、非常時のリーダーシップについての言及があるので、ビジネスパーソンはぜひ参考にしてほしいところです。
平時と非常時で異なる「決断」のルール、現場の状況を素早くつかむ方法、「想定外」をなくすための試み、そして危機をチャンスに変える考え方まで、じつにさまざまなことが書かれています。
東京都民として、これまで知らなかったこともたくさん書かれており、じつに勉強になりました。
これはぜひ読んでおきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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決断は、外見では非連続な思考のように見えるが、そうではない。粘り強さの果てに、ようやく飛躍することのできる蓄えられた力の結果である
たった一人でも東京電力という職場に福島第一原子力発電所の電源のレイアウトを変えなければいけないと主張しつづけた人がいたら、結果は異なっていたのではないか。大震災がなかったとしたら、その人はただの変人と見られたかもしれない。それでもその変人は自分を信じて決断したことを後悔しなかったであろう
既存のルールに従うだけでは、“想定外”の事態に対処できないことは目に見えている。刻々と移り変わる状況に臨機応変に対応し、つぎつぎと襲ってくる危機を乗り越えるためには、最も大事なもの―災害時には、それは人命であり、安全である―を見きわめ、そこに意識を集中しなければならない
千葉県市原市五井海岸にあるコスモ石油のコンビナートが真っ赤に炎上している様子も映し出された。すぐに東京消防庁の防災部長を呼んで、「ただちに消防艇を出そう」と言った。防災部長は「本来なら千葉県から総務省に要請が出され、総務省から東京都に連絡が来る仕組みになっています」と回答。「いいよ、そのプロセスを飛ばそう」と僕は言った。防災部長は「わかりました。消防艇の『みやこどり』は化学薬品も積んでおり、準備はできています」と即答し、その場で出動を決めた。一六時頃のことだ
危機は一瞬で過ぎ去るものではない。刻々と変わる状況に合わせて、つぎつぎと手を打たなければ、機会はどんどん失われ、場合によっては手遅れになる。そのためには、できるだけ正確な状況をつかむこと、集まってきた情報をもとにその場で決断を下すこと、そして結論をすみやかに関係者と共有すること、の三点である
当事者同士でやりとりすれば、ダイナミックな動きも可能になる
「変人」の混ざり具合が重要
いざというときに役に立つのは、普段から使い慣れたものである
自然災害に対する備えでは、時間軸を思いきり長くとって、一〇〇〇年単位で歴史をさかのぼる必要がある。そこまで広げるとたいていのことは“想定の範囲内”になる
東電という巨大な独占事業体の資金調達力が失われているいまこそ、独自の電力会社を育てるときである。東電の代わりに資金を調達し、発電する。“第二東電”をつくる、と言い換えてもよい
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『決断する力』猪瀬直樹・著 PHP研究所
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/456980330X
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◆目次◆
I 即断即決で立ち向かう
II “想定外”をなくす思考と行動
III リスクをとって攻めに転じる
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2012年5月3日
【勇気が湧く、安藤忠雄の半生記】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532168163
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本日の一冊は、「住吉の長屋」「光の教会」「FABRICA(ベネトンアートスクール)」「フォートワース現代美術館」などの建築で知られる稀代の建築家、安藤忠雄さんの半生をまとめた一冊。
日本経済新聞の人気連載「私の履歴書」に加筆したもので、氏の生い立ちから関わった人々、手掛けた作品、作品に込めた思いまでを、エピソード、写真とともに語っています。
元プロボクサーという異色の経歴。しかも学歴なし。
独学で建築を学び、自らの価値観を世に問うてきた著者の、魂と信念が、この本には込められています。
どんな世界であれ、プロを目指す人には、いい刺激になるのではないでしょうか。
そして本書のもう一つの魅力は、彩り豊かな登場人物と、感動のエピソードの数々。
幼い日の著者を育ててくれた気丈な祖母、「数学は美しい」と熱血指導してくれた杉本先生、若き日の著者を支援してくれた建築写真家の二川幸夫氏、「住吉の長屋」を見て心意気を買い、7千坪の美術館の設計を依頼したサントリーの佐治敬三氏など、著者を支えた人々のエピソードが読ませてくれます。
小規模でコストの厳しかった「光の教会」プロジェクトに協力した竜巳建設の一柳幸男社長、著者が東大に赴任する際、「東京でいじめられないように」と、ミナミの料亭で壮行会を開い
てくれた佐治敬三氏、地元の反対にあいながらも、ヴェネチアで歴史的建築物を保存・改修するプロジェクトに挑んだフランソワ・ピノー氏など、とにかく登場人物が粋なのがいい。
著者の仕事論、人生論、教育論もあいまって、じつに読み応えのある一冊に仕上がっています。
「気力、集中力、目的意識」、そして野心。
おそらく著者は、日本人が失ったこれらの資質を、この一冊で取り戻させようとしているのに違いありません。
これから世界で勝てる日本人になるために、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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文筆家が膨大な量の本を読むのと同じように、建築家は空間を身体で体験する必要がある
モノをつくろうとする人間にとって、大切なのは、どれだけの感動に出会えるか、それを若い多感な時代に積み重ねられるかにかかっているのだと、改めて思う
旅はひとりに限る。ただ一人見知らぬ国を歩く。目指す建築をやっと見つける。不安な道中に希望の明かりがみえる。建築をめぐりながら、自分自身と対話する。まさに歩きながら考える。若い頃、何度となくこんな旅を重ねた
「がんばれ。これからお前がつくる建築は全部写す。そのうち作品集をつくってやる」その一言は、私にとって大きな励みとなった(中略)「建築は独創性と勇気だ。全力でやりきれ」。私が今まで、建築家としてやってこられたのも、二川さんの鋭い目と励ましの言葉があったからだ
ボノは遠い国にいても、私の建築を通して私を知っていた。私も彼の歌を身近に聴いて、彼の存在のすごさを瞬時に認識した。それ以降も彼との交流は続いている。お互い、相手の職業を認め合った上での信用は人間同士の強い絆となっていく
「あの住宅には勇気がある。全力でつくっているのがいい」(サントリーの佐治敬三氏が美術館の設計を依頼した時、住吉の長屋を評して)
建築は規模が大きくなると、設計から完成まで5年以上の歳月を要する。仕事をともにしようとする相手が、この先5年間もつかどうかを、自分の目で確かめに来ているのだ
福武さんには強い信念があった。「経済は文化のしもべである」という言葉は、その信条を的確に表している。人間が生きるために本当に必要な力を生み出すのは経済ではなく、芸術・文化なのだ。芸術こそが人間の道標となり、人々の心を豊かにする
連戦連敗で、厳しい世界を戦い抜くと、ときに思いもよらない形で夢が叶うこともある──だから生きることは面白いのである
人々は考えなくなり、闘わなくなった。経済的な豊かさだけを求め、生活文化における本当の意味での豊かさを忘れてしまった
まず飼いならされた子どもたちに野性を取り戻させたい。野性を残した子どもたちが知性を身につけ、自らの意思で世界を知り、学べば、日本を生まれ変わらせる可能性をもつ人材が育つだろう。この国が再び生き残るには技術革命より、経済より、何より自立した個人という人格をもつ人材の育成が急務である
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『安藤忠雄 仕事をつくる 私の履歴書』安藤忠雄・著 日本経済新聞出版社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4532168163
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◆目次◆
建築家の仕事 独学でつかんだ天職
母の生家へ養子 厳しくも優しい祖母
予期せぬこと 初めての大病におろおろ
中学校の先生 「数学は美しい」と熱血指導
ボクシング 弟を追ってプロデビュー
大学進学希望 家計と学力の問題で断念
建築行脚 丹下作品に感動しきり
芸術的感性 若手が集まり互いに刺激
家族 仕事上も妻と支え合い
目標果たす覚悟 専門書片手に昼ごはん
旅行 7カ月ひとりでヨーロッパへ
大阪 強い思い放っておかぬ街
ほか
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2012年5月2日
【大胆予測。ニュー・ノースの時代とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140815353
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日本がやっと重い腰を上げ、中国やアフリカに興味を持ち始めた頃、アメリカ人は「北」に注目していました。
本日ご紹介する一冊は、UCLAで教鞭をとる地理学の教授、ローレンス・C・スミスが、2050年の世界情勢を論じた予測本。
気候の劇的変化やエネルギー、水資源の逼迫により、環北極圏にパワーシフトが起こるという、大胆な予測をしています。
とはいえ、決していわゆる「とんでも本」ではありません。
現在わかっている調査結果や、各種資源のデータ、人口トレンドなどから、極めて慎重かつ理性的に、今後の世界を論じているのです。
読者は、以下を見るだけでも、環北極圏にパワーシフトが起こりつつある現実を理解できるでしょう。
・動植物の生息範囲は平均すると十年ごとにおよそ六キロ両極寄りになり、高度は六メートル上昇している
・世界の未発見の天然ガスの三分の一近くと、未発見の石油の十三パーセントが、北極圏の北に眠っている可能性を示唆
・USGSのデータからは二大勝者が明らかになる。石油ではアラスカ北部、天然ガスではロシアだ
では、われわれはこのパワーシフトにどう便乗し、チャンスをモノにすればいいのか。
本書には、そのヒントが書かれています。
エネルギービジネス、投資すべき銘柄、買うべき資産…。
賢明な読者なら、きっと本書から、多くのビジネスチャンスを見つけ出すはずです。
ビジネスマンの教養書として、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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人類の未来にとって「北」の重要性が拡大する
地球上の人びとが都市に押し寄せている。「二十一世紀は」国連に言わせれば、「都市の世紀だ」
銀と亜鉛は少しばかり隠して取っておくといいかもしれない。四十年後にはかなりの見返りが得られる可能性がある
グリッドと情報交換することにより、車の所有者は電力需要が低いときを選んで充電し、需要が高いときにグリッドに電力供給できる(中略)車の所有者はキャッシュバック・ハイブリッドにより、一台当たり二千ドルから四千ドル儲かる
このままいけば、石炭の需要は二〇五〇年には三倍近くに増えて、電力市場でのシェアは五二パーセントに達するだろう。天然ガスの需要は二倍以上に増え、シェアはおよそ二一パーセントに達する
天然ガスのもうひとつのデメリットは、石油の大きなデメリットと同様、大部分がひと握りの国に集中していることだ
水不足をかかえ、ほかの問題では戦争を始めるような国どうしでも、水の共有に関する条約はうまくいっているケースが多い(中略)水は戦争に負けて失うには重要すぎる
現在のエネルギー部門において最も大量に水を使うのは、発電所の冷却だ
すべての永久凍土が完全に消失すれば、世界の北部の湖と湿地のおよそ半分が消えてなくなる可能性がある
世界の未発見の天然ガスの三分の一近くと、未発見の石油の十三パーセントが、北極圏の北に眠っている可能性を示唆している
USGSのデータからは二大勝者が明らかになる。石油ではアラスカ北部、天然ガスではロシアだ
環北極圏周辺で見込まれる人口増加のほとんどは、グローバル移民によるものだ。とはいえ、その流れが向かっている先は、ストックホルム、トロント、フォートマクマレーといった大都市
NORCsの最も寒冷で最も遠く離れた領域―本書で論じる、より極端な現象の多くが起きているところだ―では、先住民の人口が不均衡に多く、少数民族の大部分か多数派を占めている
何が新たな文明を発展させるのか。私のアプローチでは、最初にして最大の原因は経済的誘引で、意欲的な定住者、安定した法の支配、発展しうる貿易相手国、友好的な近隣国、有利な気候変動が続く
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『2050年の世界地図』ローレンス・C・スミス・著 NHK出版
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4140815353
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◆目次◆
プロローグ フォートマクマレーへ
第1章 しのびよる異変
第1部 プッシュ―高まる圧力
第2章 過密都市
第3章 鉄、石油、風
第4章 干上がるカリフォルニア、水没する上海
第2部 プル―引き寄せる力
第5章 北の生態系が変わる
第6章 北極の地下資源は誰のもの?
第7章 環北極圏の人口とグローバル移民
第8章 先住民の問題
第3部 さまざまな結末
第9章 不確実な要素
第10章 ニュー・ノース
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