2012年5月8日
【オリンパスの真相2】
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本日の一冊は、オリンパス事件が明るみに出るきっかけを作った月刊誌「FACTA」のジャーナリストが、当該事件の裏部隊を明かしたノンフィクション。
オリンパス経営陣を葬り去った当事者が書いているだけあって、こちらも刺激的な内容です。
「勉強になる」という意味では、『解任』より圧倒的にこちらの方が面白いですが、その理由は、著者がもともと公社債研究所にいて、財務分析に詳しいこと。
それだけに、オリンパスの損失隠しの手口が事細かく解説されていて、ウッドフォードが書いた『解任』以上に事件の真相に迫っています。
※参考:『解任』
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芥川龍之介の『藪の中』ではないですが、この手の話は、誰の話が本当なのか、じつにわかりにくいもの。
※参考:『藪の中』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4062764598
これは、情報化社会の必読書かもしれません
あてにできるのは、おそらく数字や事実であり、また登場人物のインセンティブなのですが、そういう意味で、本書はかなり真に迫っている内容だと思います。
知人のオリンパス社員・深町(仮名)から提供された情報、著者がオリンパスの決算書を見て抱いた疑問、事件解明のカギとなる「のれん代」、明らかに割高な値段で買収された企業群、そして謎の人物たち…。
ひとつひとつの事実が解明していく様は、下手なミステリーより刺激的です。
ウッドフォードの『解任』では書かれていなかった事実も書かれており、『解任』と併せて読むと、より問題点が明らかになるでしょう。
また、メディア関係者には、著者がいかにしてセンセーショナルな記事を書くのか、その手法を明らかにしたP60~P62がおすすめです。
ということで、当事者の体験を重視するなら、『解任』。より真相に迫りたいなら、この『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』をおすすめします。
時間がある方は、ぜひ読み比べてみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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社長としてのウッドフォードは猪突猛進型であるだろう。社員に要求する仕事のレベルは高い。オリンパスの英国子会社キーメッドで社長を務めた時期には、社員に会社の半径三〇キロ以内に住むよう求め、会社に電話がかかってくれば、社員が受話器を取るまでに何秒かかっているかを計っている
オリンパスは社内外にあれこれ情報を流し、それがどこにどのような経路で流れ、誰が反応するのかを見極めることで、社内機密の漏出元を探り出そうとしたようだ。官公庁がよく使う手である
オリンパスは損失の穴埋め資金を「企業買収のため」と偽って銀行から借り入れており、これを損失の穴埋めに充てていた。しかもそのカネの一部は、横尾弟たち金融ブローカーにまで億円単位で流れている。カネを貸した銀行から見れば、ペテンにかけられたようなものだった
オリンパスの損失隠しには野村証券OBが多数関わっており、彼らを抜きにして一連の事件を語ることはできないし、事件そのものが発生しなかったかもしれない
オリンパスの損失隠しを可能にし、その発覚を妨げたものの一つに、二〇〇四年に導入した本格的なカンパニー制も挙げられるであろう
オリンパス事件が暴きたててしまった問題は多い。コーポレート・ガバナンスや情報開示の問題だけでなく、日本の経済社会が水面下でいかがわしい金融のプロの存在を許してしまっている点、会計問題や監査法人の能力とそのあり方、営業ツールに堕したアナリストレポートの問題、マスメディアのチェック機能喪失、企業の内部通報制度の不備、株式持ち合いの悪弊…など、数え上げたら切りがない
ウッドフォードが委任状闘争からの撤退を表明する前夜に、私がウッドフォードの宿泊先を訪れた際、ウッドフォードに「私はオリンパスが実質的に債務超過ではないかと思っている」と水を向けると、彼は意外にも“I agree(私もそう思う)”と短く、しかしはっきりと言った。上場維持を訴えていたウッドフォードの言葉としては意外だった
東京証券取引所が不透明な形でしかも過去の同様のケースと整合性がつかない形で上場を維持したことは残念だ。後に悪しき前例として残ってしまうことを恐れる
正義とは日本人にとって失われつつある価値観なのだ。ひょっとすると正義よりも、逮捕された菊川や横尾らの隠れて不正を働いてしまう価値観の方が日本人にとってより親しみやすい友人なのだろう
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『サムライと愚か者 暗闘オリンパス事件』山口義正・著 講談社
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◆目次◆
プロローグ 旅先の告白
第一章 潜行取材
第二章 震えながら待て
第三章 黒い株主
第四章 怪僧登場
第五章 偽りの平穏
第六章 野村証券OBたち
第七章 官製粉飾決算
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