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『錯覚の科学』 クリストファー・チャブリス、ダニエル・シモンズ・著 vol.2410


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【モーツァルト効果も脳トレ効果も全部ウソ?】
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悲劇的な事故や冤罪事件、バブルの崩壊、間違った情報の流布…。

これらがすべて、人間の「錯覚」に基づいていると言ったら、みなさんは信じるでしょうか?

本日の一冊は、チェス王者たちの認知メカニズムを研究している心理学者のクリストファー・チャブリスと、同じく心理学者のダニエル・シモンズによる、錯覚に関する論考。

2人の業績として目覚しいのは、本書にも登場する「見えないゴリラ」の実験で、この実験によると、バスケットボールの試合のビデオを観て、パスの回数を数えてもらうよう指示された実験者は、およそ半数がゴリラの着ぐるみを着た女子学生に気づかない。

このゴリラの登場時間が9秒。カメラに向かって胸を叩くシーンもあったのに、です。

この実験によってわかったのは、われわれが、目の前にあるすべての情報を認識できるわけではない、ということ。

しかもたちが悪いことに、われわれは時折、見ていなかったことまで見たこととして、認識・証言することがあるのです。

本書には、こういった「錯覚」の事例がいくつも登場し、人間の認識の限界を知らしめてくれます。

具体的に扱うのは、「注意力にまつわる錯覚」「記憶力にまつわる錯覚」「自信にまつわる錯覚」「知識にまつわる錯覚」「原因にまつわる錯覚」「可能性にまつわる錯覚」の6つ。

なぜ社員のミスがなくならないのか、なぜ工場で事故が頻発するのか、なぜ完璧だったはずの投資家が失敗して一文無しになるのか。これまで謎だったヒューマンエラーの本質がわかる、じつに知的な一冊です。

さらに本書では、よく知られたモーツァルト効果や脳トレの効果、サブリミナル効果などを取り上げて、実験結果をもとに真っ向否定。

科学的態度とは何かを徹底的に教えてくれる、じつに痛快な一冊です。

ひさびさに、読み応えのある一冊に出会いました。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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なぜ、目の前にやってきて、こちらを向き、胸を叩いて立ち去るゴリラが見えないのだろう。なにが、ゴリラの姿を消してしまうのか。この見落としは、予期しないものに対する注意力の欠如から起きる

目に見える世界のある一部や要素に注意を集中させているとき、人は予期しないものに気づきにくい

バイクも見慣れたものになれば、気づかれる確率が高くなりそうだ。実際に、車とバイクによる六二件の事故を詳しく分析した報告によると、事故車のドライバーの中で、バイクに乗ったことのある者は皆無だった

携帯で話している場合、たとえ運転のむずかしい場所にさしかかっても、あなたは会話を続けるようにという強い社会的要求を感じる

記憶に残るのは現実そのものではなく、手が加えられた現実である

9.11の朝に乗ったタクシーの運転手が、テロリストと民族ないし宗教が同じだったという部分は、驚くべき偶然の一致である。こうした具体的なディテールが混じっていると、人は相手の記憶を信じやすい

自分に対する評価が低すぎるというプレイヤーの圧倒的多数は、対局成績が下位半分の人たちだった

記憶に誤りのある目撃者の証言と、その自信をもった発言が陪審員にあたえる影響が、誤審のおもな原因の七五パーセント以上を占めている

歴史的なバブルが起きた過程を見ると、つねにまず新しい”知識”があまねく広くばらまかれ、やがては金融問題に関してもっている情報は一つだけ、という人びとのもとにまで到達する

見慣れたものは、わかった気になりやすい

気象予報官と同じように、私たちも適切なフィードバックがえられるときは、自分の判断を修正し、知識の錯覚を退けられる

いわゆる”陰謀論”は、できごとにパターンを見いだすことを基本にしている。陰謀論を前提にすると、できごとが起きた理由がわかりやすいように思える。原則として、陰謀論は結果から原因を推理しようとする

二つのものの相関関係に因果関係を見てしまう錯覚は、物語への興味と強く結びついている

直感的に感じとった因果関係が大衆に訴える力をもつには、それ以上のものが要求される。因果関係を有効にできる、権威の存在である

モーツァルトが頭を良くしたのではなく、黙って座っている、あるいはリラックスすることが、頭を悪くしたのだ!

「ポップコーンとコカコーラ」の実験はインチキだった

彼ら(任天堂宣伝部)は、認知能力を鍛えることが、脳機能の改善にとって必要だと訴えている。だが実際には、有酸素運動ような、肉体を使うエクササイズのほうが、脳にははるかに効果があるのだ

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『錯覚の科学』クリストファー・チャブリス、ダニエル・シモンズ・著 日経BP社
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◆目次◆

序―私の思考回路に焼きつけた言葉
第1章 答えのない時代に必要なこと
第2章 基本的態度
第3章 禁句
第4章 考える
第5章 対話する
第6章 結論を出す
第7章 戦略を立てる
第8章 統率する
第9章 構想を描く
第10章 突破する
第11章 時代を読む
第12章 新大陸を歩く
第13章 日本人へ

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