2011年5月4日
【これは名著だ】
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本日の一冊は、あのベストセラー『銃・病原菌・鉄』以来の知的興奮を味わえる、感動の名著。
※参考:『銃・病原菌・鉄』
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以前、東京農業大学にお邪魔した時に、生協で購入したものですが、これは、農大生だけに読ませておくには、あまりにもったいない。
われわれは、文明の興亡の原因を、戦争や自然災害に求めがちですが、本書によると、その原因は、じつは「土壌」にある。
人口増加を、土壌が支えられなくなった時、また土壌が消失して、大地がもろくなった時、悲劇は起こる。
文明の興亡の原因を「土壌」に求め、見事に説明しているばかりか、その戦略的重要性を明らかにし、人類の歴史をダイナミックに描き出したあたりは、見事としか言いようがありません。
なぜエジプトはナイルの賜物と言われたのか、なぜギリシャ・ローマは滅びたのか、なぜヨーロッパは世界を植民地化したのか、なぜ南北戦争は起きたのか、なぜイースター島の繁栄は続かなかったのか…。
土壌調査により、ここまで人類の歴史がわかるとは、本当に驚きました。
原発事故の影響で、福島県の土壌汚染の問題がクローズアップされていますが、土壌の損失というのは、どうやら単に作物の問題だけではなさそうです。
国レベルで土壌の戦略的重要性を知ること、文明がどうやって繁栄と衰退を繰り返してきたかを知ること。
これこそが、日本復興のカギを握るのだと思います。
ひさびさに出合った名著、ということで、もちろんイチオシの一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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土壌肥沃度を高めることが重要であるとわかっていながら、土壌の喪失は初期の農耕文明から古代ギリシア、ローマに至る社会の終焉の一因となり、後にはヨーロッパにおいては植民地制度の勃興、北米大陸においてはアメリカの西進を助長した
土地が支えられる以上に養うべき人間が増えたとき、社会的政治的紛争がくり返され、社会を衰退させた。この泥の歴史は、土壌の扱
いが文明の寿命を定めうることを暗示している
おおまかに言って、多くの文明の歴史は共通の筋をたどっている。最初、肥沃な谷床での農業によって人口が増え、それがある点に達すると傾斜地での耕作に頼るようになる。植物が切り払われ、継続的に耕起することでむき出しの土壌が雨と流水にさらされるようになると、続いて地質学的な意味では急速な斜面の土壌侵食が起きる。その後の数世紀で農業はますます集約化し、そのために養分不足や土壌の喪失が発生すると、収量が低下したり新しい土地が手に入らなくなって、地域の住民を圧迫する
行き場のない人々が農耕を発展させた
シュメールの農業が塩類化に弱かったのとは対照的に、エジプトの農業は、古代のファラオからローマ帝国を経てアラブ時代に至る七〇〇〇年にわたって、絶えず文明を養ってきた。両者の違いは、ナイルの生命の源である洪水が、確実に毎年川沿いの農地に新しいシルトを運び、そこには塩類がほとんど含まれていなかったからだ
通常、狩猟採集社会では食糧はすべての人のものと考えられ、持っているものは快く分配し、貯蔵することはなかった
ローマ人は農場管理、輪作、堆肥を知っていたのに、イタリアの土壌はなぜ劣化したのだろうか? そのような行為は、土壌を改良するために農家の収入の一部を使うことを要求するが、一方で当座の収穫を最大にするには土地の肥沃度を利用する必要がある
技術が高度になるにつれ土地を損なう能力も増大する
土壌が消える速度は非常に遅く、人々はなくなったことに気づかない
土地への欲求が宗教改革を後押しした
「人間は、無知あるいは習慣から土を荒らすこともあるが、経済または社会的条件が、完全に人間の制御を離れて、破滅的な結果しか生まない土地の扱いにつながったり、それを強いたりすることのほうが多い」(歴史学者エイブリー・クレイブン)
文明の寿命は、最初の土壌の厚さと土壌が失われる正味の速度との比率によって決まる
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『土の文明史』デイビッド・モントゴメリー・著 築地書館
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◆目次◆
第一章 泥に書かれた歴史
第二章 地球の皮膚
第三章 生命の川
第四章 帝国の墓場
第五章 食い物にされる植民地
第六章 西へ向かう鍬
第七章 砂塵の平原
第八章 ダーティ・ビジネス
第九章 成功した島、失敗した島
第10章 文明の寿命
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