2010年9月13日
【マイケル・ルイス20年ぶりのウォール街ノンフィクション】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4163730907
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本日の一冊は、『ライアーズ・ポーカー』『マネー・ボール』などの名著で知られる、マイケル・ルイスの待望の新刊。
※参考:『ライアーズ・ポーカー』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4479302832
※参考:『マネー・ボール』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4270100281
それも、20年ぶりにウォール街について書いたということで、がぜん期待が高まります。
テーマとなっている「空売り」は、金融の専門用語で、下げ相場に賭けることを言いますが、本書の主役たちは、まさにこの「空売り」で財を成した人物。
あのサブプライムローン問題のさなかに、暴落で儲けたスティーヴ・アイズマン、マイケル・バーリ、そしてコーンウォール・キャピタルの若者たち。
困難に直面してもなお、信念を貫き通した彼らの姿を見ていると、知性とは肩書ではなく、「知を愛し、そのために事物を疑うこと」であると確信させられます。
また、そのためにどんな組織を作るべきか、という点についても考えさせられるものがありました。
サブプライムローン問題自体が大きくクローズアップされ、かつ関連書も数多く出ていることから、本書の内容も既知のものが多いのが残念ですが、裏舞台を知る上では、刺激的な書物だと思います。
空売りをテーマにした本として、イチオシはこちらです。こちらも併せてぜひ、読んでみてください。
※参考:『世紀の相場師ジェシー・リバモア』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4047913715
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「オッペンハイマーのアナリストとして給料をもらうには、とにかくまっとうに働くことと、周りに気づかれる程度の波風を立てることです。オッペンハイマーには、反体制の気風があります。これが大企業になると、社員はみんな、総意に従うことで給料をもらうんです」(アリス・シュローダー)アイズマンはやがて、波風を立てること、総意に歯向かうことに特別の才能を発揮するようになる
(アイズマンの)妻が言う。「駆け引きとして、無礼にふるまってるわけじゃないんですよ。裏表がないから、無礼になってしまうんです。みんなに変人と思われてることは知ってますけど、本人はそんなふうには思ってません。自分の頭の中で暮らしてる人ですから」
ダニエルの頭に、ふと皮肉な問答が浮かんだ。収入増の望めない貧者に、金持ち気分を味わわせる妙策は? 金利の低いローンを与えること
「持ち分のない住宅は借金付きの借家にすぎない」
オッペンハイマーのセールスマンだったモーゼズの脳裡には、その時代のアイズマンが、売りサイドのアナリストにあるまじきありとあらゆる言動を見せた姿が焼きついている。例えば、トレーディングが行なわれている真っ最中に、トレーディング・フロアの中央にある演壇に上がって全員の注意を促し、「これから挙げる八社の株券は、ただの紙切れになる」と宣言したうえで、八つの社名を口にすると、事実、その全部がやがて倒産した
「借り手ではなく、貸し手のほうに目を光らせるべきですね。借りる側は、自分にとって都合のいい条件なら、いつだって大歓迎です。節度を保てるかどうかは、貸し手しだいで、貸し手が節度を失ったときは、気をつけないといけません」(バーリ)
投資は一個の定石に煎じ詰められるものではないし、ひとつのロールモデルから習得できるものでもない、というのがバーリの考えだった
信じがたい話だ。あの保険会社は、年間数百万ドルの保険料と引き換えに、二百億ドルが一瞬にして消えかねないゆゆしいリスクを引き受けている
AIG・FPという会社には、ゴールドマン・サックスのトレーダーと互角に渡り合えるごく有能な人材を集めるだけの魅力が、ちゃんと備わっていた。ところが、その有能な人物の頭を、商売の機微もろくに心得ない鈍感で癇癪持ちの社長が押さえつけていたのだ
ウォール街がいちばん起こりそうにないと思っていることを探し出して、それが起こるほうに賭けるのが、ウォール街で稼ぐ最善の方法
バーリの顧客、つまり、預けた金をバーリに倍以上にしてもらった人々は、ほとんど何も言わなかった。謝罪も、感謝の言葉もなかった
賢い決断を下す必要がないとしたら、つまり、お粗末な決断をしても金持ちになれるとしたら、どれくらいの数の人間が賢い決断を下そうとするだろう? ウォール街の報奨制度は、全面的に間違っていた。今でも、間違っている
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『世紀の空売り』マイケル・ルイス・著 文藝春秋
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◆目次◆
序章 カジノを倒産させる
第一章 そもそもの始まり
第二章 隻眼の相場師
第三章 トリプルBをトリプルAに変える魔術
第四章 格付け機関は張り子の虎である
第五章 ブラック=ショールズ方程式の盲点
第六章 遭遇のラスヴェガス
第七章 偉大なる宝探し
第八章 長い静寂
第九章 沈没する投資銀行
第十章 ノアの方舟から洪水を観る
終章 すべては相関する
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