2011年10月19日
【井上ひさしの読書論】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4120042944
[エラー: asin:4120042944 というアイテムは見つかりませんでした]
毎日のように読書をしていると、たまに自分の読書を点検したくなることがあります。
自分の読み方は正しいのだろうか? 特定の関心に偏っていないか?などと考えるのですが、そんな時に役立つのが、読書の達人たちによる、読書論。
土井が一番好きなのは、ショウペンハウエルの『読書について 他二篇』ですが、今日はちょっと趣向を変えて、故・井上ひさしさんの読書論を紹介します。
※参考:『読書について 他二篇』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4003363221
本書のもとになったのは、読売新聞に連載していた書評集で、辞典からノンフィクション、理論書、新書、白書まで、じつにさまざまな本が紹介されています。
チェックしてみたところ、アマゾンで酷評されているものも含まれていますが、注目したいのは、井上ひさしさんが、その内容をどう受け取り、自身の気づきにつなげたか。
大江健三郎さん著『「自分の木」の下で』から感じた21世紀の希望、同時多発テロの後、『冷泉家 時の絵巻』を読んで感じたこと、人名辞典で偉人を格付けする方法、中小企業白書を読んでわかった成長企業の条件、「米原万里の行くところにきまって笑いが興った」理由…。
一流の作家が本を読むとき、何に注目しているのかを読めるだけでも、本書を読む価値があります。
読書好きはもちろんですが、作家、編集者にも、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
————————————————————
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
————————————————————
核状況下で生きるとはどういうことかを、全生涯かけて考え続けてきた大江健三郎さんは、その最新刊『「自分の木」の下で』(朝日新聞社)の最後を、次のように締め括っています。<子どもにとって、もう取り返しがつかない、ということはない。いつも、なんとか取り返すことができる、というのは、人間の世界の「原則」なのです。>
ひとはなにを信じようと構わないが、それは自分だけが信じていればいいのであって、その信仰箇条をむやみに他人に押しつけようとするから、こんな悲劇的な時間が発生する。グローバリズムを唱えて世界中に金融テロを仕掛けようとする人たちも、また、自分たちの信仰で世界は運営されるべきだと唱えて残酷無惨な人身テロを加える人たちも、この世界を自分たちだけのものだと考えていることでは同罪ではないか
『プルトーンの火』(高木仁三郎著作集第四巻、七つ森書館)自然からあまり欲張りにものをとりだそうとすると、手痛いしっぺ返しを受ける
人はよくだまされていたといって逃げますが、しかし人はだまされていたという自分の愚かさにはやはり責任を持たなければならない
『二十一世紀の遠景』(潮出版社)
<東京都内でもっとも大量に水を消費する機関は、第一位が東京大学、第二位がホテル・ニューオータニでした。>という一片の情報に注目し、そこからさまざまな学問知を駆使して、以下筆者が勝手にまとめれば、<水を大量に消費する機関は(かつてのように)工場ではなくて、知識、サービスを提供する施設に変わりつつある>という思考に至り、ついに、<二十一世紀には、都市の持つ、この情報と知識の生産能力と増幅機能が、さらに重要視されるだろう。その際に大切なのは、異業種の専門家たちが、都市に一緒に住むことである>という新しい英知へ読者を導いて行きます(中略)<……要するに私たちは、二十一世紀という、とりわけて複雑で高度な問題に満ちた社会を生きるに当たって、一つの覚悟を身につけるほか方法はなさそうです。それは、「たとえ明日世界が滅びるとしても、それでも今日、一本のリンゴの木を植える」という、賭のような楽観主義を持つことのほかにはありえないでしょう。>
『中小企業白書二〇〇三年版』(中小企業庁編、ぎょうせい発行)右腕がいる会社は成長するのです。これを裏返して言えば、ワンマン独裁の中小企業は、倒産しやすい
『ニュルンベルク軍事裁判』(原書房)
<政策を決めるのはその国の指導者です。……そして国民はつねに、その指導者のいいなりになるように仕向けられます。国民に向かって、われわれは攻撃されかかっているのだと煽り、平和主義者に対しては、愛国心が欠けていると非難すればよいのです。このやり方はどんな国でも有効ですよ。>
彼女(米原万里)の筆は遅かった。その理由は、徹底的に調査取材をするからで、それはたとえば、「ウォトカをめぐる二つの謎」を読めばよくわかる
まことに残念なことだが、「見ても見えず聞いても聞こえず」というのが人間の常である。米原万里はこの壁を破ろうとして必死になっていた
————————————————
『井上ひさしの読書眼鏡』井上ひさし・著 中央公論新社
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4120042944
————————————————-
◆目次◆
井上ひさしの読書眼鏡
不眠症には辞書が効く
知識を磨く二冊の事典
古本、今が絶好の買い時
歴史教科書、徹底論議を
絶望からつむぐ希望の言葉
三番目はサイモン
ほか
米原万里の全著作
藤沢さんの日の光
[エラー: asin:4120042944 というアイテムは見つかりませんでした]