2009年7月19日
【「ウォール街の良心」ボーグルが語る職業哲学とは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4270005157
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本日の一冊は、バンガード・ミューチュアルファンド・グループの創業者であり、「ウォール街の良心」と称される米金融界の賢人、ジョン・C・ボーグルによる一冊。
タイトルから予想できるように、今回は金融の話が主ではなく、強欲資本主義によって失われた職業哲学について述べています。
自らの施策によって投資家や従業員に多大な迷惑をかけておいて、リスクを一切負わず、多額の報酬を受け取ったCEO、「受託責任」から「販売精神」へとシフトし、投資家をないがしろにするファンド。
サブプライムローンの原因となった価値観を批判し、本来あるべき金融の姿と、労働の尊さを説く、ありがたい一冊です。
説教じみていると敬遠する向きもあるかもしれませんが、引用されているイギリスの風刺詩を読めば、著者の言わんとするところは、理解できるのではないでしょうか。
自然から、自分の手で生計を立てる者がいる。それを「労働」と呼ぶ。自然から、自分の手で生計を立てる者から、生計を立てる者がいる。それを「商売」と呼ぶ。自然から、自分の手で生計を立てる者から生計を立てる者から、生計を立てる者がいる。それを「金融」と呼ぶ。
以前読んだ、藤沢武夫さんの『経営に終わりはない』にも、こんなことが書かれていました。
※参考:『経営に終わりはない』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167130025/
「物をつくる会社に働いている物をつくる人たちは、自分たちの働きが、あるひとつの知恵による稼ぎよりも劣ったものでしかないと思ったときに、寂しさを感じて、情熱を失ってしまうだろうと思う。(中略)ですから、どんなに儲かる話があっても、その話には乗らない。儲けるならみんなの働きで儲けるんだということを、ホンダの金科玉条にした」
まっとうな職業観によって人々を幸せにしたい、心からそう思える人に、ぜひ読んでいただきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「足る」という感覚が失われると、「職業人」としての価値観が堕落する
ビジネスの世界では、計算できるものを重視するあまり、信頼し、信頼されるということを大切にしなくなった
成功ばかりに目を奪われ、人格をないがしろにしている。人格を失えば、成功は意味をもたないというのに
個人の満足ばかりを追求する一方で、職業は天から授かった使命であり、働くということは自分自身やコミュニティや社会への奉仕であるという考え方を失ってしまった
自然から、自分の手で生計を立てる者がいる。それを「労働」と呼ぶ。
自然から、自分の手で生計を立てる者から、生計を立てる者がいる。それを「商売」と呼ぶ。
自然から、自分の手で生計を立てる者から生計を立てる者から、生計を立てる者がいる。それを「金融」と呼ぶ。
どんな職業を選ぼうとも、その職業に備わった伝統的な価値観を尊重すること
金融業界に向かうかくも多くの人々が、自分が社会から得るものばかりに執着し、逆に社会に対して自分が何を恩返しできるかを考えていないのは、恐ろしいことだと思う。金融機関のサービスにかかるコストを合計すると金融業界が生み出す価値を超えることは、計算上まちがいない
市場シェアは手段であって目標ではない。市場シェアは、得るものであって買うものではない。企業とは自然に成長していくもので、無理やり成長させるものではない
他人の金の管理者は、自分の金を管理するときのような慎重さをもって、その金を管理することなど(めったにない)。……彼らはいとも簡単に、自分たちを特別扱いする。怠慢と浪費が必ず蔓延するにちがいない(アダム・スミス)
ファンドの仕事はこの半世紀あまりで「受託責任」から「販売精神」へと重点を移した。すなわち、投資家から託された「資産を管理する」ことから、自分のために「資産を集める」ことに変わっていったのだ
責任ある関与と勇気。これらは人生の価値を測るものさしとなり、さらに神の導きを呼び込むことができる、本当に大切なものの一部だ。それと比べれば、生活の糧を得るためにどんな仕事に就いているかなど、とるに足らない。私たちはパンのみで生きているのではないのだから
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『波瀾の時代の幸福論』ランダムハウス講談社 ジョン・C・ボーグル・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4270005157
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◆目次◆
序章
第I部 マネー
第1章 「コスト」より「価値」を
第2章 「投機」より「投資」を
第3章 「複雑さ」より「シンプルさ」を
第II部 ビジネス
第4章 「計算」より「信頼」を
第5章 「ビジネス」より「職業人の行動」を
第6章 「販売精神」より「受託責任」を
第7章 「マネジャー」より「リーダー」を
第III部 人生
第8章 「モノへの執着」より「責任ある関与」を
第9章 「二一世紀的価値」より「一八世紀的価値」を
第10章 「成功」より「人格」を
終章 「足る」ということ
あとがき──私のキャリアについての個人的メモ
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