2009年7月5日
【名門プラザホテル経験者から見た日本のサービスとは?】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4903721183
[エラー: asin:4903721183 というアイテムは見つかりませんでした]
本日の一冊は、世界有数の名門ホテル、プラザホテルに勤めたことのある著者が、日米ホテルのサービスレベルおよびスタッフの労働環境について比較した一冊。
自身のホテル経験をもとに、エッセイ風に書いた内容ですが、日本で流行のホスピタリティ信仰とは、ちょっとテイストが違います。
まずもって驚くのは、第一章に登場する、暖房が壊れて風邪を引いたというお客様への対応エピソード。
「ゲストが風邪を引いたというのは、その場でホテルに苦情をあげていない可能性が高い。それはゲストの責任といえる。にもかかわらず、私がゲストの立場に立ち、ホテルに金を返せなどというのは、会社にとっての背反行為とも言えることだ」
最初は読んでいて反発を感じたのですが、読み進めていくうちに、確かに著者の言うことも一理あると感じるようになりました。
日本型の滅私奉公の場合、著者も論じているように、他業界に人材が流出する危険性がある。
そうなれば、ホスピタリティを維持する人材を確保することは難しくなるのです。
また、過剰なサービスによって企業の利益を圧迫すれば、それはスタッフの給料もしくは価格に転嫁されることになる。
今後、ビジネスの世界では、人材獲得戦争が起こるわけですから、ホテル業界全体が意識を高めないといけない、という著者の主張はもっともなことだと思います。
では、具体的に経営サイドはどんなことを成し遂げればいいのか。
本書では、著者が勤めていたホテルがどんなことをして、職場環境を改善していたか、その具体例が示されており、参考になります。
また、巻末には日本のホテルマンが辞めて他業界に行こうと思う10の理由が掲げられており、こちらも必読の内容です。
多くの読者が期待する「感動のサービス」といった内容ではありませんが、経営の現実を考えたときには、参考になる一冊です。
エッセイなのか経営論なのかはっきりしないところが不満ではありますが、ホテル経営に携わる方、サービス業に携わる方は、ぜひ読んでみてください。
————————————————————
▼ 本日の赤ペンチェック ▼
————————————————————
あまりにもていねいな対応がスタッフの労働時間を長くする。スタッフは疲れ、仕事への意欲がぼける。また、残業代が生産性を落とす。それにより給与を上げられないという悪循環を引き起こす アメリカのホテルにはかわいそうなスタッフはいない。自分がかわいそうだと思えば働いていないし、その状況が理不尽なものであれば、会社に対して訴えを起こしている。会社は訴訟されることが恐くて、労働環境をつねに向上させようと努力をしている
ある日、上司に怒鳴られた。「君の給料はどこからでていると思っているんだ! ホテルの売り上げからでているんだぞ。顧客側に立ってホテルが利益を守るための条件を崩すようなことをしては駄目じゃないか」私は頭をハンマーで叩かれたような気がした
その道に就きたいと思ったら、それをとことん極めてエキスパート(専門技能者)になるのがアメリカの流儀。会社はエキスパートが欲しくて求人を出すから、技能をもっていれば職場を見つけるのに困らない。これが個人に職場を選ぶ自由を与えている
日本の学校教育のあり方は、自分のやりたい仕事を追求するための技能を育てるシステムになっていない。学生時代の自由な時間と引き換えに、社会にでたら企業に自分の将来を握られる社会構造になっている
◆シンガポールのウエスティンのやり方
日本のビジネスがどんなにたくさん取れるとしても、ホテルの半分を日本のビジネスで埋めるようなことはしない。ある一つの国のビジネスに頼りすぎると、その国で紛争や経済危機などが起きたときに、ダメージを受けることになる。だから、各国から入るビジネスの上限をそれぞれ二〇パーセントまでにするというように決めて、それ以上はとらないようにしていたのだった
プラザでは常連客の延泊依頼を断ることはなかった。どんなに部屋が足りなくても受けた。それはリピーターほどホテルにとって大切なゲストはいないという考えに基づいた方針だった。リピーターの依頼を断ることで、次回から利用してもらえなくなるよりも、初めてのゲストを他のホテルに移動させるほうが戦略上得策だからだ
アメリカ人は謙らない。彼らは、人はみな同じ目線で人を見なくてはいけないと思っている。それは差別との長い戦いを経てたどり着いた終着点
あの時、リノベーションになるかもしれませんなどということを一言でも口にしていたら、団体はプラザを選ばなかっただろう。未定のことに不安を感じてビジネスをするべきではない。これはその後の私のビジネスをする上での方針となった
◆労働環境を改善するための3つの方法
1.定期的にアンケート調査(不満を抱えるスタッフを探し、改善)
2.Job Descriptionを明確に(互いが干渉しないように)
3.月一度の合同ミーティング(表彰や誕生パーティで仲間意識を強く保つ)
————————————————
『サービス発展途上国日本』オータパブリケイションズ 奥谷啓介・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4903721183
————————————————
◆目次◆
はじめに 夢を失いつつある日本のサービス産業
第一章 世界の超一流ホテルに泊まる楽しみを知ってしまった
回想録 日本勤務時代
第二章 海外生活のあまりの楽しさに溺れた
回想録 シンガポール勤務時代
第三章 仕事の苦しみを楽しみに変える術を身につけた
回想録 サイパン勤務時代
第四章 世界中から訪れるセレブを横目に真の一流を見た
回想録 ニューヨーク勤務時代 前半
第五章 ホテルほど感動させられる職場は絶対にないと思った
回想録 ニューヨーク勤務時代 後半
第六章 アメリカにできて日本にできないはずはない!
楽しい職場にするための5つの改革
第七章 サービス業ほど楽しい仕事はないと必ず言えるようになる
仕事を辞めたいと思う10の理由
[エラー: asin:4903721183 というアイテムは見つかりませんでした]