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『大いなる不安定』 ヌリエル・ルービニ、スティーブン・ミーム・著 vol.2268


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【世界で最も注目される経済学者の予言とは?】
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本日の一冊は、リーマン・ショックの到来を予言し、いま世界で最も注目されている経済学者、ヌリエル・ルービニの初の邦訳。

「アメリカ経済で近く、一生に一度しかぶつからないほどの住宅バブルの破裂」が起こると予想し、かつ実名を挙げ、ファニーメイとフレディマックの経営難を予言。

金融危機はブラックスワンではないと喝破しながら、危機を見破る方法を指南し、かつ今後の世界が向かうべき方向性を示した、今注目の金融読み物です。

本書ではまず、危機の引き金となるバブルを検証し、歴史的なバブルと今回の金融危機を分析。

その上で、当局による規制のあり方や、揺らぐ基軸通貨(ドル)の問題、人民元の基軸通貨の可能性、そしてトレーダーや銀行幹部のインセンティブの問題を論じています。

過去を概観して終わるのではなく、「先進国でも二〇一二年にはインフレに戻る可能性がある」など、著者ならではの見通しが示されており、かつ提言もなされている点が読み応えあり。

個人的には、「大きくて潰せない」事態を防ぐため、金融機関の分割を提案したところが新しいと思いました。

人民元の今後についての考察も、じつに参考になります。

奇抜な主張や儲け話は期待できませんが、経済の本質を見失わないために、読んでおくとためになる一冊だと思います。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「報酬制度に問題があるために銀行経営幹部やトレーダーがリスクとレバレッジ(自己資本に対する総資産の倍率)を過大にすれば有利になる仕組みになっており、世界の金融システムが深刻な危機に陥りかねなくなっている」(シカゴ大学 ラグラム・ラジャン教授)

現代経済学の見方では、危機は変わった出来事なのだと思えるし、他の論者の主張では、めったにない「黒い白鳥(ブラック・スワン)」だとされている。だが、実際には普通に起こる出来事であり、比較的簡単に予想できる「白鳥(ホワイト・スワン)」と呼ぶべきだ

危機はほとんどの場合、バブルからはじまる。ある種類の資産の価格が、基礎的な条件(いわゆるファンダメンタルズ要因)で決まる価値をはるかに超える水準まで上昇する。こうしたバブルは往々にして、債務の行きすぎた積み上げと表裏一体の関係にある

資産の価格が急騰していくと、楽観論者が登場して、割高になったのは正当だと熱心に論じるようになる

バブルにはレバレッジが必要であり、容易に借りられる資金が必要だ。そうした条件が消えてくると、価格が下がりはじめ、レバレッジ解消の動きがはじまる

「資本収支危機」が新興国でつぎつぎに起こるようになる。どの危機にも共通する点が一つあった。持続不可能な経常赤字を危険な方法で穴埋めしていたのである。短期債務に大きく依存し、しかも外貨建てで資金を借り入れていたのだから、破局への道をみずから選んでいたことになる

フィッシャーの有名な指摘によれば、一九二九年十月から一九三三年三月までに、債務者は債務を名目ベースで二十パーセント減らしたのだが、デフレによって、実質ベースの債務残高は逆に四十パーセントも増えている

銀行などの金融機関が大きすぎ、レバレッジをかけすぎ、相互に関連しすぎになって、破綻した場合に金融システム全体を揺るがしかねなくなったとき、規制当局に分割権限を与える法律を制定することである

長期的にみてドルに代わる基軸通貨の候補になりうるのは人民元だけである。中国は大国になったときのアメリカに似ている。経常収支が大幅な黒字であり、世界最大の輸出国になり、財政赤字がかなり小幅であり、他国とくらべて債務が少ない

しかしいまのところ、人民元が世界の主要通貨の地位を獲得するのは容易ではない。中国も急速にそうなることは望んでいない可能性がある。準備通貨になれば、為替相場をもっと柔軟にしなければならず、人民元がこれまでよりはるかに急速に上昇するのを許容することになり、中国の輸出産業が価格競争力を失っていくことになろう

過去の危機の後には、政治家が世論に押されて金融システムの抜本改革を行っている。現在も改革の機会になっている。この機会を活かさなければならない。活かさなければ、過去に何度もそうなったように、終わったはずの危機がじつは序章にすぎなかったことに気づかされるだろう

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『大いなる不安定』ヌリエル・ルービニ、スティーブン・ミーム・著 ダイヤモンド社
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◆目次◆

はじめに
第一章 白い白鳥
第二章 経済危機と経済学者
第三章 プレート・テクトニクス
第四章 崩壊
第五章 世界大流行
第六章 最後の拠り所
第七章 財政支出の増額と減税
第八章 金融改革の第一歩
第九章 抜本的な改革案
第十章 活断層
結 論 八十年ぶりの改革へ
展 望 大いなる不安定

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