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『資本開国論』


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本日の一冊は、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授で、ベストセラー作家としても知られる野口悠紀雄さんが、日本の「資本開国」を提唱した一冊。

著者によると、「世界経済の構造が激変するなか、日本は製造業中心の産業構造を温存した。ここにこそ、現在の日本経済が抱えるすべての問題の根源がある」。

本書では、そのことを極めて理性的に論じた上で、現在起こっているグローバリゼーションの潮流と、そこで日本が成長していくための考え方を説いています。

著者が参考にしている一人当たりGDPを見ると、現在、アイルランドとイギリスは、なんと日本よりも高水準。

これは、産業構造を「サービス産業や金融業に大きくシフト」したことが、その原因だそうです。

驚いたことに、本書で示されたデータを見ると、一人当たりGDPが高い国は、総じて製造業の比重が低く、脱工業化を実現している。

日本も、いつまでもトヨタに頼らず、新たな産業構造にシフトするべき、というのが著者の主張なのです。

そのなかでも、中心となるのは、タイトルとなっている「資本開国」。つまり、資本面において日本企業を世界に向かって開くこと。

産業構造の変化により、社会や人々の心にどんな影響があるか心配ではありますが、やはり流れは止められないようです。

データを交えながら、慎重に論を進めた、いかにも学者らしい本ですが、意外と読みやすいのが特徴です。

今後の日本経済を見通す上で、ぜひ読んでおきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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世界経済の構造が激変するなか、日本は製造業中心の産業構造を温
存した。ここにこそ、現在の日本経済が抱えるすべての問題の根源がある

中国をはじめとする低賃金国との貿易拡大によって「要素価格均等
化定理」が働き、賃金が低下するのである。格差問題の根底には、
グローバリゼーションがある

最近の日本経済の回復と言われる現象は、家計の犠牲において企業
が回復する過程なのである

社会保険料の雇用主負担分は利益の有無にかかわらず掛かってくる
ため、企業はその回避のために、非正規労働者を増やしたり、生産
拠点を海外に移転するなどの方策を講じている

企業所得の増加は、配当所得の増加を通じて、あるいは役員報酬な
どの増加を通じて、比較的高額所得者の所得を増やしている

現在の産業構造を維持したままで経済成長率を継続的に引き上げる
のは、きわめて難しい

イギリスやアイルランドに顕著に見られるのは、産業構造がサービ
ス産業や金融業に大きくシフトしたことだ

◆21世紀型グローバリゼーション
1.アメリカからのオフショアリング
2.東ヨーロッパから西ヨーロッパへの移民
3.先進国間の資本移動

資本面において日本企業を世界に向かって開くこと――「資本開国」
――によってこそ、日本経済が活性化する可能性が大きい

いま出生率が上昇したとしても、今後二〇年間程度は、依存人口比
率が高まるだけの結果しか生じない

トヨタもキヤノンも、未来の産業構造において中心的な位置を占め
る企業かと言えば、疑問がある

日本の金融機関は、専門的な金融技術の面で、欧米諸国の主要金融
機関と比べるとかなり立ち遅れている。このために、日本の金融機
関の利益率が低いのである

外資脅威論は、経営者が自信をもっていないことの裏返し

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『資本開国論』
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┃▼目次▼
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┃ はじめに
┃ 第1章 企業栄えて家計滅ぶ
┃ 第2章 世界の大変化に追いつけない日本
┃ 第3章 量の拡大でなく、質の向上を
┃ 第4章 難題山積の財政改革
┃ 第5章 法人税減税では日本経済は活性化しない
┃ 第6章 資本開国こそが日本を活性化する
┃ 付論I グローバリゼーションが賃金に与える影響
┃ 付論II 対外投資と為替リスク
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