2007年9月10日
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本日の一冊は、「世界最高のホテル」と呼ばれるニューヨークのプラザホテルで活躍した敏腕マネージャー、奥谷啓介さんによる一冊。
先日、中経出版さんを訪れた際、『オトナの極上ホテル』を担当したホテルフリークのYさんと話をしていて、薦められた一冊です。
※参考:『オトナの極上ホテル』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4806128147
これだけホスピタリティ関連の本が出ているにもかかわらず、本書
があまり知られていないのは、これがビジネス書として出されなか
ったのが原因だと思います。
エッセイ風にまとめられた本、ということでおそらくはビジネス書
コーナーに並ばなかったのだと思いますが、実際には、ホスピタリ
ティやサービスを学ぶ上で、じつに参考になる内容です。
現在、ベストセラーとなっているサービス関連の書籍は、そのほと
んどが日本的価値観で書かれた本。つまり、「お客様は神様」とい
う思想に基づいた本だと言えます。
その点本書は、日本人宿泊客の無理な要求とアメリカ文化との間で
板挟みとなり、苦しみ続けてきた著者が書いているだけに、ちょっ
とテイストが違います。
アメリカのビジネスのルールと、その視点から見た日本人のいびつ
な姿が見えてくる、いわば日米比較文化論です。
「情報化」ばかりが注目される昨今ですが、それに伴う「国際化」
については、あまり論じられなくなっています。
多様な価値観を持った宿泊客が泊まって、なお満足できるサービス
とは何か。本書を読んで考えさせられました。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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世界広しといえど、プラザほど映画や小説の舞台となったホテルは
ない。それに異論を唱えるアメリカ人はいないだろう。私が勤務し
た一〇年間だけでも、じつに多くの映画撮影依頼がきた。マーケテ
ィングのトップがその内容を詳細に検討し、プラザに相応しい映画
かどうかを判断する。ホテルが受け取る撮影料も、半端な額ではな
い。その上、宣伝にもなるのだから一石二鳥だ
”アメとムチ”が有効かどうかは、その国の国民性、あるいは国民
性が政策に反映されない独裁国ならば、国を動かしている人物の特
性によるのではないか(中略)食べ放題、飲み放題、踊り放題のク
リスマス・パーティはその象徴だろう。従業員の家族は喜び、この
ホテルで働いている伴侶や親に感謝する。それにより、従業員の会
社に対する誇りは高まる。プラザのように勤続三〇年を超える従業
員が多数いるホテルなど、アメリカ中を探しても見つからない
日本の団体は、とにかく突然の変更が多い。日本のホテルはそれに
も柔軟に対応できる優秀な従業員を集めた組織だから、変更に関し
て甘く考えているのだろう。だが、それは日本だからこそ可能なの
であり、アメリカで宴会を成功させたければ、急な変更ができない
ことを理解し、こちらの歩調に合わせて動く必要がある
自分の業績だけを優先して勝手にスペースを約束するような行ない
は、会社に不利益をもたらす背任行為となる。いちばん大切なのは、
ホテル全体の利益率を上げること。次に大切なのが、自分の業績を
伸ばすこと。これは厳然たる掟で、この順番を守れない営業マンは
失格となる
アメリカのビジネスでは、潔白であることが何よりも大切だ。「バ
レたら困る」ような行ないは絶対に許されない。それは会社を裏切
ることであり、結果は解雇あるのみ。情状酌量はない
ホテルという職場で働いてきた私が感じる、ホテルマンの醍醐味。
そのひとつは、大勢の人々と強い絆を持てることにある。私には、
ホテルマンとゲストという金銭的な関係を超えた、多くの友人がいる
謝罪の言葉がひと言あれば問題にはならなかった、というケースは
よくある。しかし、アメリカ人はなかなか謝らない。アメリカは
”訴訟社会”だ。彼らの脳裏には、非を認めたら何を要求されるか
分からないという強迫観念がある
アメリカで金銭的な補償を求める際には、一度冷静になって、「自
分には法的な権利があるだろうか?」と考えてみるといい。アメリ
カの法律を知らなくても、非常識な要求を口走ってしまうことへの
抑止力にはなるだろう
私には、チェックインの時間にこだわる理由が理解できない。こだ
われば、その時間帯に手続きが集中し、ロビーには長い人の列がで
き、フロントも急に忙しくなる
「マッサージ師の指定は受けられないので、諦めてください」
「それなら今日は仕方ないですけど、次回は必ず白人にしてくださいよ」
こんな人には、ホテルの従業員とゲストというよりも、ひとりの人
間として諭したほうがいいのではないかと思ってしまう
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『世界最高のホテル プラザでの10年間』
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┃▼目次▼
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┃ ようこそ、プラザへ
┃ 劣等生たちのアメリカ
┃ ホテルに見る”アメリカ的思考法”
┃ ホテルマンという職業
┃ 日本とアメリカの隔たり
┃ 日本のお客様は神様か
┃ さよなら、プラザ
┃ あとがき
┃
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