2011年1月26日
『競争の作法』齊藤誠・著 vol.2380
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【競争にいかに向き合うか?】
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みなさんご存知のように、古代ギリシアは競争の社会でした。
ホメロスの『イリアス』にもあるように、人々は自らの技を競い、その上で、自らを高めていったわけです。
※参考:『イリアス』
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その結果、古代ギリシアでは、優れた彫刻や壺絵、建築物など、優れた文化が生まれ、オリンピックのような行事も生まれました。
われわれが今なお、オリンピック競技を見て感動するのは、競争を通じ、人間が自らの限界に挑む、その真摯な努力ゆえでしょう。
しかしながら、現在の日本において、この「競争」は軽んじられるばかりか、悪者扱いされる傾向があります。
本日の一冊は、この「競争」を真正面から取り上げ、新しい「市場主義」を宣言した一冊。
一橋大学大学院経済学研究科教授の齊藤誠さんが、ここ20年の日本経済を概観し、日本経済が抱える本質を、ズバリ指摘しています。
著者の結論は、極めてシンプル。
「誰一人幸せにすることができない無用の長物になりはててしまうものには、いっさい豊かさを投じないこと」。そして、競争を前向きにとらえ直すことです。
いわく、「一人一人が真摯に競争に向き合うときにこそ、真に人間性が培われ、豊かな幸福を実感できる社会に近づける」。
日本は、中国含むアジアに対し、すっかり後れを取ってしまいましたが、今こそ競争の尊さを思い出し、リスタートすべきでしょう。
競争を前向きにとらえるための制度改革から、個人の働き方まで、幅広く網羅した一冊です。
ぜひ読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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誰一人幸せにすることができない無用の長物になりはててしまうものには、いっさい豊かさを投じないこと
投資家も、企業経営者も、「ほどほど」の儲けで諒とすることが、苛酷な競争社会を生き抜いていく秘訣である
われわれは、貧困問題の悲惨さばかりに目が奪われていなかっただろうか。貧困にあえぐ少数の陰に隠れて、組織にしっかりと守られてきた多数の人々から緊張感が失われたことには目をつぶってきたのでないだろうか
◆各人が自らに投げかけるべき四つの質問
一、自分は、自らの生産への貢献に比べて給与が多すぎないか?
二、自分は、自らの生産への貢献に比べて給与が少なすぎないか?
三、他人は、彼の生産への貢献に比べて給与が多すぎないか?
四、他人は、彼の生産への貢献に比べて給与が少なすぎないか?
競争原理とは、「生産への貢献に応じて生産の成果を分配する原理」のことである。市場経済において競争原理が最優先されるのは、競争原理こそが社会の豊かさの基盤を形成するからである
労働組合側も、外に向かって貧困問題や格差社会を批判するぐらいであれば、自分たちの足許のところでほんのわずかな賃下げに応じればよかった
どんな学問分野だって、若いときには、厳正な業績評価を前提として、充実した研究機会が与えられてはじめて優れた研究が生まれてくる
若者への伝達という仕事も、高齢者の大切な仕事だと思う
モノを大切に使うためには、手入れも必要だし、それなりに時間も工夫も必要になってくる。そのようにみれば、モノを大切に使うということも、立派な広義の経済活動であることが分かるのではないだろうか
日本の資本主義には、株主らしい株主と経営者らしい経営者が真剣勝負で議論する風景が存在しない。その代償として、設備投資に投じた資金の何割をも無駄にしてしまうという破廉恥なことが毎年繰り返されてきたのである
そろそろ、固定資産税の見直しに着手し、地主たちが土地を有効に利用する方向に追いつめていくべきではないだろうか
競争に向き合うことを考えるとき、いつも、中島敦が命を削りながら書いた右の文章を思い出してしまう。競争を正視するとは、自身の内なる虎に克ち、他者を尊重することにあるのだと
人間は可憐であり脆弱であり、それ故愚かなものであるが、堕ちぬくためには弱すぎる(坂口安吾『堕落論』より)
一人一人が真摯に競争に向き合うときにこそ、真に人間性が培われ、豊かな幸福を実感できる社会に近づける
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『競争の作法』齊藤誠・著 筑摩書房
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◆目次◆
第1章 豊かさと幸福の緩やかな関係
第2章 買いたたかれる日本、たたき売りする日本
第3章 豊かな幸福を手にするための働き方
第4章 豊かな幸福を手にするための投資方法
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