『儲けすぎた男 小説安田善次郎』渡辺房男・著 vol.2374


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【儲けまくった人生】
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本日ご紹介する一冊は、ひさびさに読者の方のリクエストにより手に取った一冊。

幕政時代の富山藩に生まれ育ち、裸一貫から財閥をつくった男、安田善次郎の生涯を描いた小説です。

両替商として評判を高め、強盗に襲われるリスクを冒しながら看板を出し、包み金で一財産を築く。

さらに、一世一代の大勝負、太政官札の買い占めで大きく財産を増やした。

その後は、三野村の口利きで本両替商になり、司法省の公金を一手に引き受け、日本一の銀行家へと登りつめる…。

その過程には、数多くの苦労と、彼を見守り続けた支援者たちの存在がありました。

善次郎をわが子のように可愛がり、妻房子まで世話した相模屋の徳兵衛、ライバルながら善次郎に親近感を覚え、本両替商に推してくれた三野村、そしてかつての恩を忘れず、善次郎に公金を預けてくれた山路…。

なかでも、相模屋徳兵衛が亡くなる直前のエピソードは、涙なくして読むことはできませんでした。

「商売は信用である」という基本原則の大切さ、そして人を大切にすることの意味を、痛感させてくれる一冊です。

小手先のノウハウよりも、心意気。
知識よりも行動する勇気。

ビジネスマンにとって最も重要な「何か」を学べる一冊だと思います。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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善次郎が大講堂の建設に寄付した百万円という金額は、当時の白米の小売り価格から類推すると、約四億円に値する大金である

死の前年の大正九年、善次郎率いる安田家の勢力範囲にあった銀行は、主力の安田銀行(戦後富士銀行を経て現在みずほ銀行)を始め二十行、その預金総額は六億六千九百万円あまりであった
※当時の一円は現在の四千円弱

「いいかい。世の中の動きにただ身を任せていては駄目だ。世の中を先取りするような商いを見つけることだ」(徳兵衛の言葉)

「何が起きても不思議はない。でもね。金だけはどんな時でも大事なもんだ。金さえあれば、すべてを乗り切れるのがこの世だよ」(徳兵衛の言葉)

「一方だけに肩入れしてはいけない。商いというものはまつりごとに深入りしてはいけないんだ。いいね」(徳兵衛の言葉)

(老人は)一文を届けた善次郎の行為に報いるためか、自分の店の近くに大きな両替屋があるにもかかわらず、わざわざ善次郎の店で両替をしてくれるようになった

―もし、よろしかったら、こちらから両替に出向きますよ。
善次郎が愛想良く言うと、風呂屋の主人は喜んだ。
―来てくれるなら、うちだけではすまないから、近所の店にも声をかけてみるよ

「鰹節や卵の売れ行きがいいと、本業である両替屋のことを忘れる輩が多い」(徳兵衛の言葉)

「いいか、多少は損だと思っても、いい海苔を勧めるんだ。ひとつひとつの品で商いの損得を考えるのは愚かなことだよ。いつも言っているが、馴染みの客をどれだけ増やすかが商いだ」(善次郎)

一時の不安や戸惑いで、商いの本筋から逸れてはならない

力を持った者は、必ずその力で人をねじ伏せるものだ(父・善悦の言葉)

「長吉、しばらく時期を待て。いずれ、この札を買いまくる時が来る」
―時には流れに逆らってでも、商いの勝機をつかめ

―商いは世の動きでどうにでも変わる。時期を待つのも商いの道だ

「いいか。安田屋。わしは何も求めぬ。あの慶応三年という物騒な年に、お前は身の危うさを顧みず、わしの用を果たしてくれた。わしも、それ相応の礼をしたとは思う。だが、あの頃、勇気を持って御用を務めてくれたのはお前だけだ。今度のことは、その豪胆な気構えに対するわしの礼だと思ってくれ」(山路の言葉)

「こちらが欲しがっていることを素直にさらけだすのはまずいのだ」(善次郎)
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『儲けすぎた男 小説安田善次郎』渡辺房男・著 文藝春秋
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◆目次◆

序 章 東大安田講堂
第一章 鰹節と一文銭
第二章 金貨銀貨を集めねば
第三章 維新の嵐
第四章 太政官札を買い占めろ
第五章 円が生まれる
第六章 公金を手に入れろ
第七章 公債を買い占めろ
第八章 わが安田銀行
終 章 栄光、そして不慮の死

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