2009年11月11日
『人間の運命』五木寛之・著 vol.1941
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【成功の前に「宿業」を受け止める】
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本日の一冊は、作家・五木寛之さんが、『日刊ゲンダイ』に連載していた「流されてゆく日々」の一部を改稿し、部分的に収録した一冊。
タイトルの通り、「人間の運命」をテーマに、さまざまな事例を挙げながら、人が運命とどのように接していけばいいか、心安らかに生きるにはどうすればいいか、ヒントを示しています。
最近は、ビジネス書でも教育書でも、後天的な努力にばかり光を当てるきらいがありますが、本書はそこに、「宿業」という概念を持ってきて、もともと持っているものの重要性を説いています。
本文をもとに説明すると、「宿業」とは、その人間をとりまく過去の状況と行動のこと。
ここでは、黒人として生まれた「宿業」を持つマイケル・ジャクソンとモハメッド・アリの例が取り上げられ、それぞれについて論じられています。
あえて「カシアス・クレイ」という名前を捨てて改名した「モハメッド・アリ」の事例は、「宿業」を直視できない人々に、大きな感銘を与えることでしょう。
決して逃れられない運命をどう受け止め、生きていけばいいか。
ひとかどの人物になろうとする前に、自分自身を知るためのヒントとして、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「宿業」とは、その人間をとりまく過去の状況と行動のことだ
「人の行為を、その人の心が善いからとか、悪いからとか、簡単にきめてはいけない。人間の善悪などというものは、なかなかわからないものなのだ。いや、世間の善悪の考え方は、そもそもまちがっている。人間の行為というものは、すべて宿業によるもので、自分勝手にできるものではない。この世におこるできごとの、チリの一つまで前世の宿業によらないものはないのだ。そのことをよく考えなさい」(親鸞が唯円に語った言葉)
私たちは、自分の努力や向上心だけでなく、その親の元に生まれたという、決定的な大きな縁、業縁をせおって生きている
世の中というのは、自分の思うとおりにはならない。大きな流れには逆らえない。そのなかで翻弄されて、小さな笹舟のようにもみくちゃにされるのが人間だ
私たちは宿業をせおわされているだけではなく、未業を目の前にしている存在なのである
◆平安?鎌倉時代に人から憧れられ、敬われ、尊ばれた人の条件
1.名門の出身であること
2.金持ちであること
3.知識があるということ
4.芸
仏教では、「愛」という言葉に対して肯定的ではない。何がそうさせるかというと、仏教的な人間の良き生き方というのは、やはり人間が心安らかに生きることだからだろう
彼(マイケル・ジャクソン)は日常的に多量の薬物を必要としたという。過度の整形や、皮膚移植や、漂白作用の反応が、それを必要としたという見方もある。しかし問題は彼が運命をこえて「月をめざした」人間であったことにあるのだろう
人びとの「運命を変えたい」という願望、幸福を求める欲求は無限に広がり、とどまることを知らない。それが続くと、世界はどうなるのか。何を食べても美味しくない、何をしても楽しくない、ということは、これはひとつの地獄ではないのか。倦怠と堕落と悦楽の淵で、堂々めぐりをするだけだ
人間に善人、悪人などという区別はないのだ。すべて他の生命を犠牲にしてしか生きることができない、という、まずその単純な一点においても、すでに私たちは悪人であり、その自覚こそが生きる人間再生の第一歩である
世に抜きん出るということは、敗者を踏み台にして自分が勝者になることを意味する
親鸞の言葉は、ここでわれわれに最後の問いをなげかけてくる。他の生命や人間を犠牲にしてまで、人は生きていることに価値があるのだろうか、と
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『人間の運命』東京書籍 五木寛之・著
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◆目次◆
第一章 運命の声
第二章 運命の扉をたたく
第三章 運命は変えられるか
第四章 人類のせおった運命
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