『ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録』西川善文・著 Vol.2644


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【ラスト・バンカーと呼ばれた男】
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「大きな夢を持っている人の、その夢を実現する橋がつくれればいい」

こう語ったホンダの藤沢武夫さんは、最後までモノづくり企業、ホンダの黒子として、本田宗一郎と従業員を支え続けました。

※参考:『経営に終わりはない』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4167130025

本日紹介する一冊は、黒子として日本経済を支えた「最後の銀行家」、元三井住友銀行頭取、西川善文さんによる回顧録です。

預金集めからキャリアを始め、調査部、審査部を経て、歴史的事件の現場へ。

本書では、著者が関わった安宅産業処理、イトマン事件、磯田一郎追放、住専問題、金融ビッグバン、さくら銀行との合併、小泉・竹中郵政改革などの経緯とその裏側に触れており、まさに「日本経済の裏舞台」を知ることができます。

安宅産業処理に際して、計80社あまりの現場すべてに行った話、薫陶を受けた恩人である故・磯田一郎に引導を渡した話、請われて就任した日本郵政社長時代に苦汁をなめた話…。

そのキャリアのほとんどを、不良債権処理や誰かの後始末のために費やした著者ですが、裏方に徹するその潔い生き方には、本当に頭が下がります。

「リーダーシップとは、直面する難題から逃げないことである」

最後まで逃げなかった男の人生を、味わい尽くすことができる、珠玉のノンフィクションです。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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調査部経験者は大勢いるが、結論を明快にせず無難なレポートをまとめる優等生は、その後見事なくらい出世していない。支店長や部長止まりで役員にはなれなかった

私を人事部長として面接して入行させてくれたのが磯田さんだった。そのとき磯田さんはすでに取締役になっていたが、その後ずっと私は磯田さんの薫陶を受けてバンカーとして育った。私を取り立ててくれたのが磯田さんだったことは間違いない。しかしそれと同時に磯田さんに「とどめを刺した」のも私だった

銀行にとって赤字決算というのは、日本経済に与える影響ももちろんだが、バンカーのプライドとして、やってはいけないものというのが、私たちの身体の中に染みこんでいる。しかし私は、それでもあえて赤字決算にしようと覚悟を決めた

我々の最大の競争相手は、他行でも外国金融機関でもない。それは、時代の変化だ。そして、その中で変化し続ける顧客のニーズやウォンツとの競争だと思う

トップ同士がフェイス・トゥ・フェイスで向き合わなければ、本当の信頼関係は築けない。あの人は誠実に仕事をする、彼なら大丈夫だという信頼があるからビッグビジネスは動くのである

敵はいつまでも敵なのではなく、自らの手で改革できるチャンスがあるのならばためらう必要はない

三つ目が、土地と建物の取得で二四〇〇億円もかかった施設がなぜ、わずか一〇九億円なのかという指摘だ。しかし、これほどビジネスの論理に無知な疑問もない。そもそもかんぽの宿の譲渡案件は、不動産売却ではなく、従業員の雇用確保も含めた「事業譲渡」なのである

傷んだ企業の傷んだ事業と傷んだ資産を建て直すとは、雇用と事業をどこまで守るべきなのかを痛みを持って決断することである。私たちは全能の神ではない。一人の人間としては一人でも多くの従業員の雇用を守り、一円でも多い利益につながるような事業にしたいと願う。だが、その願いを聞いてもらえるほど世の中は寛容ではない。したがって血を流すことはあっても、何を最後の一線として守るかの決断を、神ではないただの人間の集団がしなければならない

リーダーシップとは、直面する難題から逃げないことである。リーダーが逃げないから部下も逃げないし、前のめりで戦う。経営の責任者とはそういうものではないだろうか

バンカーの責務とは、健全な経営をすることによって、お客様から預かったお金をきちんと運用し、内外の経済発展に寄与すると同時に、銀行で働く人々の待遇をできるだけ改善し、その士気を高めて競争力を上げていくことだと考えて、私はここまでやってきた

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『ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録』西川善文・著 講談社
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◆目次◆

第一章 バンカー西川の誕生
第二章 宿命の安宅産業
第三章 磯田一郎の時代
第四章 不良債権と寝た男
第五章 トップダウンとスピード感
第六章 日本郵政社長の苦闘
第七章 裏切りの郵政民営化

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