2008年5月14日
『情緒と日本人』岡潔・著
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【天才数学者が遺した言葉】
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本日の一冊は、世界的数学者にして憂国のエッセイスト、故・岡潔さんによる珠玉の言葉集。
氏の著書から現在に通ずる教訓を集め、一冊の本にまとめたもので、内容は、「情緒」の大切さとその育み方に関するものが主となっています。
「情緒」というと、道徳教育ととられるかもしれませんが、著者が、そして本書を選んだ土井が問題にしているのは、この「情緒」が、人の生き方や働き方、さらには社会にまで影響を及ぼしているので
はないか、ということ。
本書を読む限り、現在のさまざまな企業不祥事や殺人、自殺などの社会問題が、すべてここから来ているのではないかと思われるのです。
現在の世の中で、「愛」を否定する人はないと思いますが、著者いわく、「愛は自他対立する。愛を連続的に変化させるといつの間にか憎しみに変わる」。
だからこそ人には「情」が大切であると著者は説いているのです。
ほかにも、現在のわれわれが過度に重視している「時間」に対し、「時間とは時の簡単な模型にすぎない」と説き、現在ブームとなっている社会貢献に対しても、「このくにの善行は『少しも打算、分
別の入らない行為』のことであって、無償かどうかをも分別しない」と説く。
いささか古い本ではありますが、それだけに現在の社会にはない価値観を教えてくれる、貴重な一冊だと思います。
個人的におもしろかったのは、巻末にある著者と松下幸之助の対談。
「私はすべてを肯定するのですよ」と語る松下に対して、「さすがに実業家らしいですね」と岡が皮肉を言うなど、価値観の違う2人のバトルは一読の価値ありです。
人間にとって最終的に問題となるのは、どんな理想を掲げて生きるのかということ。本書は、そのヒントとなる一冊だと思います。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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人はその人の過去の全部である
いったい、情緒の中心をまとめているものはなんでしょうか。表現
することばがむずかしいのですが、しいていうならば愛だと思います
情緒の濁りはいけない。情緒は喜怒哀楽によって濁ります。とくに、
人を恨むというようなことをするとひどく濁ります
時の中に人は住んでいます。時間とは時の簡単な模型にすぎないのです
情緒の中心の調和がそこなわれると人の心は腐敗する。社会も文化
もあっという間にとめどもなく悪くなってしまう
情と愛(欧米でいう)とは違う。愛も情にちがいないがごく浅いの
であって、情は心が通い合うのであるが、愛は自他対立する。愛を
連続的に変化させるといつの間にか憎しみに変わる。それで仏教で
は愛憎というのである
人として一番大切なことは、他人の情、とりわけ、その悲しみがわ
かることです
このくにの善行は「少しも打算、分別の入らない行為」のことであ
って、無償かどうかをも分別しないのである
心の眼が開いていないと、もののあるなしはわかるが、もののよさ
はわからない。たとえば秋の日射しの深々とした趣はけっしてわか
らないのである
自分というものが本来あるのではなく、自分というものがあると思
っていることがあるだけ
知性は理性と同一ではなく、理想を含んだものだと思うが、はっき
りと理想に気づいたのもギリシャ文化が初めてだった
除草、施肥、耕鋤の三点に相当するものが教育について大切
教育というのは、ものの良さが本当にわかるようにするのが第一義
人の心を知らなければ、物事をやる場合、緻密さがなく粗雑になる
(中略)緻密さが欠けるのはいっさいのものが欠けることにほかならない
趣きを表す字が欠けていては、人の心は育ちません
恋愛の大義名分は自己犠牲であって、自己主張ではない
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『情緒と日本人』岡潔・著
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◆目次◆
はじめに――解説にかえて
第一章 情緒と日本人
第二章 日本民族
第三章 数学と芸術と文学と
第四章 教育
付 章 松下幸之助との対話
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