『客はアートでやって来る』山下柚実・著


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【アートで成功した奇跡の宿】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492501800

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1カ月ほど前、知人から「現代アートを使って業績を伸ばしている
すごい旅館がある」という話を聞きました。

知人が言うには、その宿ではそれぞれの部屋に異なる絵が飾られ、
宿泊客は毎回違う絵が見たくて通う。その結果、驚異のリピート率
を誇っているというのです。

「ちょうどその宿に関する本がもうすぐ出る」ということも聞いて
いたので、密かに楽しみにしていました。

本日の一冊は、その温泉旅館、大黒屋のビジネスを、ノンフィクシ
ョン作家の山下柚実さんが徹底レポートした一冊です。

73%がリピーター、年間を通して部屋の6割が埋まるという、栃木
県・那須にある「奇跡の宿」大黒屋。その大黒屋が現代アートをコ
ンセプトに大幅改装、しかも料金を倍にして成功した。

その成功の軌跡は、現在会社経営に苦しむ多くの経営者に、多くの
気づきを与えるに違いありません。

一見、奇想天外な手に見える温泉旅館のアート経営ですが、客を飽
きさせない工夫、提供する商品・サービスの本質に立ち返った見せ
方は、話題となった「旭山動物園」を思わせます。

アート経営導入までにはベテラン従業員の離脱や融資など、かなり
困難も伴ったようですが、ひるまず挑んだ経営者の姿勢には、静か
な感動すら覚えます。

書き手がもっとビジネスに詳しい方だったら、より読み応えのある
内容になったと思いますが、これだけでも十分気づきが得られるこ
とと思います。

経営者の方は、ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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「13本ですから、単純計算で1300万円。銀行に融資をしてほしいと
申し込みました。しかし、まるで相手にしてくれないんです。アー
トを購入するための資金なんて前例がない、危なくて貸せない、と
断られてしまったんです」

大黒屋という温泉旅館の「空気」をつくり出しているアート。その
言葉どおり、食事に使われる陶器類にも、アーティストたちの作品
が使われている。皿やコーヒーカップには平川鐵雄、松田百合子、
若杉直美、若杉集、小川博久、川野恭和ら陶磁器作家たちの作品が
使われ、朝食は、人間国宝の勝城蒼鳳が制作した竹籠の上に料理が
盛られて配膳される

「お金だけで動かされるのは、『奴隷』です。お金をやるから我慢
して働けという指示を、私は従業員にも出したくありません」

明快なコンセプトを掲げることで、この宿のテーマである「健康」
や「文化」「知」「美」を求める客だけが共感し、そうではない客
は足が遠のいていく(中略)お客と直接に接するアートは、同じよ
うな「美意識」を持った客に宿泊してもらうための、重要な選別機
として働いているのだ

「村井正誠さんの版画を廊下に飾ったとたん、お客様の反応が変わ
ったんです。それまで端の部屋は、遠くにあるため人気がなかった
のですが、廊下の版画を見て歩くので、端まで自然に歩いていただ
ける。『端の部屋が嫌ではない』というお客様が、急に増えたのです」

「社長は頭がおかしくなったのではないか」「くだらないことに金
を使うのはやめて、その分、給料を上げてくれ」(中略)ベテラン
従業員たちが、何人も辞めていった。現在も残っている当時の従業
員は、たった一人だけ。人手不足に陥り、社長の室井自身が厨房で
皿洗いをすることもあった

この改装は、大黒屋にとってリスクをともなう「賭け」でもあった。
なぜなら、当時8000円前後だった湯治宿の宿泊費を、一気に倍額の
1万6000円に増額し、しかも部屋数を10部屋から6部屋に減らすと
いう、新たな挑戦ともいえる計画だったからだ

「たかが大学受験ですが、その時の私はまさに背水の陣でした。あ
の時、初めて『人生は1点差、2点差で決まる』ということを知り
ました。『たった2点』と言った自分を、伊藤先生は叱ってくれた。
小さな差として見過ごしているものの中に、じつは大きな違いが含
まれていることを、身をもって知ったんです」

世界のアート市場の規模は、日本の比ではない。オイルマネーや急
成長する中国経済などを背景に、現在世界の億万長者は約900万人
に達していると言われる。その新富裕層の関心の一端が、アートへ
と向かっているからだ。アート市場は、年率で25%の急成長ぶりだ

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『客はアートでやって来る』山下柚実・著
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492501800
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◆目次◆

プロローグ
第1章 「アートスタイル経営」を掲げる温泉宿へ
第2章 現代アートのある風景
第3章 保養とアートの宿
第4章 「アートスタイル経営」の原点
第5章 「傍」を「楽」にする仕事――大黒屋に集う人々
第6章 アートが求められる時代
第7章 志から生まれた「清潔な経営」
エピローグ

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