2007年2月19日
『よき経営者の姿』
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本日の一冊は、一橋大学大学院商学研究家教授の伊丹敬之さんが、経営者の資質や役割、決断について論じた、珍しい一冊です。
経営学者としての立場から、戦後の日本企業と経営者を俯瞰し、現在の経営の問題点を述べているわけですが、これから起業する人にとっても示唆するところの多い内容です。
冒頭で、法隆寺の棟梁・西岡さんに教えてもらった口伝を披露しながらリーダーの条件を述べたり、池宮彰一郎さんの小説を紐解きながら、悪を考え、断行することの必要性を述べたりと、通常のビジネス書の切り口とは違った視点から、経営者の心構えを説いています。
ほかにも、経営者に求められる三つの資質、信頼感を生む三つの条件など、参考にすべき内容がいくつも散見されます。
なかでも、「高い志+2つの場」の話は、既に経営者として活躍している方、これから後継者を育てようとする方にも役立つ内容で、読み応えがありました。
ただ実際には、この手の話はやっぱり現場で経験を積んだ経営者に聞きたいもの。
次回作は、いつもの経営学者らしい切れ味の鋭さを期待したいと思います。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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社長たちに望みたいのは、とにかく自分の頭で考え抜いてほしい、
ということである。そして考え抜くだけの時間をきちんと作ってほ
しい。考えるための体力を温存してほしい。考えるための思考の枠
組みを自分でもつよう自己修練をしてほしい。そして、考え抜くた
めのもっとも重要な情報は現場にあると思ってほしい
◆法隆寺の棟梁・西岡さんのお気に入りの口伝
「百工あれば百念あり。これをひとつに統ぶる。これ匠長の器量な
り。百論ひとつに止まる、これ正なり」
「百論をひとつに止めるの器量なき者は謹み惧れて匠長の座を去れ」
悪を考え、断行する経営者は、組織の中の一部には怨嗟を買うであ
ろう。しかし、高い志をもち組織の長期的将来を考えて、あえて皆
のために断行する気概が経営者には必要である
信頼感は、三つのものが生む。第一に、そもそも決断してくれると
いうこと。それが信頼感を生む。第二には、その決断自体の筋が通
っていて、わかりやすく、正しい可能性が高い、ということである。
つまり、本筋の決断だから、信頼感が生まれる。第三に、状況の変
化とともに決断を安易に変えない、という意味でぶれないことである
人はパンのみにて生くるにあらず、である。正しいと思える理念を
もって人々が働くとき、人々のモチベーションは一段と高まる
◆経営者たる三つの資質
1.エネルギー 2.決断力 3.情と理
「経営を進めて行く時に大事なのは、事に当たってまず冷静に判断
すること、それから情を添えることやな。この順番をちゃんとわき
まえておかんと失敗するんや」(『松下幸之助散策・哲学の庭』)
高い志はまた、その高さゆえに多くの人を惹きつける
人は志の高さに応じて、仕事の場の大きさに応じて、思索の場の深
さに応じて、育つのである
若いころに海外で大きな責任のある立場になるということは、「仕
事の場の大きさ」「思索の場の深さ」という経営者が育つ三つの条
件のうちの二つを満たすような状況になる可能性が高い
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『よき経営者の姿』
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■目次■
プロローグ 社長ごっこはもうやめよう
第1章 顔つき
第2章 仕事
第3章 資質
第4章 育ち方
第5章 失敗
第6章 退き際
エピローグ 新しい経営者世代への期待
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