『「会社のアカスリ」で利益10倍!』酒巻久・著


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本日の一冊は、キヤノンの常務取締役生産本部長を経て、99年、キヤノン電子社長に就任、環境経営の徹底で経常利益を約10倍に伸ばした著者が、その「ムダ削減」ノウハウを公開した一冊。

いわく、「環境」を軸に据えた企業経営は、企業の「社会的責任」を果たすだけではなく、「社員の意識、誇り」を高くし、その結果「企業利益が伸びる」――。

ここだけを読むと、偶然、環境への取り組みと会社の成長が重なったのではないか、と疑ってしまいますが、実際のムダ削減の取り組みを読むと、その徹底ぶりに驚かされます。

ムダな生産スペースの削減や物流対策など、抜本的なものから、事務用品費の削減、蛍光灯の切り換えといった瑣末なものまで、じつに幅広い取り組みが紹介されており、ムダの多い職場なら、どれかひとつ試すだけでもすぐに効果が期待できそうです。

立ち会議の実施、小型化装置の内製、VE教育など、社員の創造性を高め、モチベーションを高めるための仕組みも見逃せません。

そして何よりも、一冊を通して学んだのは、人間の創造性を信じる、著者の姿勢。

ダイヤモンドはカットして磨くことで輝きを増すといいますが、本書の醍醐味は、コスト削減を学ぶことにより、モノ作りの魂や本質をより深く学べること。

決して人間をあきらめない。これこそが、今年の経営に必要なことではないかと思います。

ムダを削減し、本質を極めていく。その大切さに気づくためにも、ぜひ本書を読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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◆環境のためにできる対策
1.化石燃料の代替品を探す
2.リデュース(廃棄物の発生抑制)、リユース(製品・部品の再  使用)、リサイクル(再生資源の利用)
3.経済の発展スピードを落とす

この「すべてを半分に」という「TSS 1/2」活動のなかで、まず力を入れたのは、「ムダな生産スペースの削減」だった。必要以上に大きな生産スペースは、照明、冷暖房はもとより、人や物の移動でも大きなムダを生む

事務用品は値段が安く、消費や買い替えが容易なだけに、オフィスのゴミ増加の温床になりやすい

オフィスの紙対策で一番大事なことは、何といってもリデュース(発生抑制)であり、「ほんとうに必要なもの以外は紙の書類や資料を作らない」という姿勢

◆オフィスのエネルギー節減
照明:蛍光灯は「高効率インバーター方式」へ切り換える
OA機器:「省電力設定」と「電源オフ」を徹底する
空調:エネルギー効率の低い設備・機器は取り換える

ライン生産がいい、セル生産がいい、と満足した時点で、そのシステムにはアカがつきはじめる。経営は常に「現時点での最適解」を求め続ける仕事

間締めを進めて設備やスペースのムダをなくせば、そのぶん、照明や冷暖房、動力などの省エネ(=環境負荷低減)になるし、人・物の移動距離が短くなり、運搬のムダ、待ちのムダ、移動のムダなども削減できる

不良や製品事故の7割は、設計に問題がある。残りの3割は生産部門のミスだが、それもよくよく調べてみれば、そのうちの7割(全体の約2割)は設計に原因があることが多い

名機といわれるものは、どれも簡単で扱いやすい。利用者の立場に立った優しい設計がしてあるからだ。それは一言でいえば、「Simple is beautiful」。設計者としての個性や独創性というのは、それをわがものとした上に初めて築かれるのである

◆特に効果の大きかった物流対策
1.納品便の運行変更
2.工場バンニング
3.個建輸送の導入
4.積載効率の向上
5.製品梱包トレーのリユース
6.ダンボールレス輸送

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『「会社のアカスリ」で利益10倍!』朝日新聞出版 酒巻久・著
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◆目次◆

まえがき
序章 「環境経営」は一石三鳥を実現する
オフィス――まず、個人のゴミ箱をゼロにする
工場――「不良品の削減」が環境と利益に直結する
設計・調達――リデュース(発生抑制)が最も重要
物流――もっとも多く「利益」が埋まっている
社員――全社員に「当事者意識」を持たせる方法
利益率10%は、3年で到達できる――あとがきに代えて

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