2011年5月13日
『貨幣進化論』岩村充・著 Vol.2487
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【お金はいかにして進化してきたのか】
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本日の一冊は、日本銀行を経て、早稲田大学大学院アジア太平洋研究科教授を務める岩村充さんが、貨幣の歴史を概観し、「成長なき時代」の通貨システムを提案した一冊。
なぜ貨幣が生まれたのか、という話は昔からありますが、本書では、そういった根本から、金融・経済学の発展の歴史、そしてこれからの時代の通貨システムまでを扱っています。
第一章「パンの木の島の物語」で、「腐ってしまうパンの実を蓄える方法」を考察し、そこから一気に貨幣制度の発展のプロセスを見せる、じつに刺激的な一冊です。
先日の震災のショックで、人々は、未来のために蓄えていたお金を手放し、食糧や水を買いためたわけですが、このように人が未来をどう考えるかが変われば、お金の価値も変わってしまいます。
本書には、どうして人間が「蓄える」ようになったのか、なぜ贈り物の習慣ができたのかといった原始的な話から、ケインズやフリードマンをはじめとする著名な経済学者たちの理論、戦後の日本の高度経済成長や、ユーロ統合の話まで、じつにさまざまな話が登場しますが、これがストーリーのように語られていて、じつに興味深い。
大学の経済学の教科書では挫折したという人も、本書ならきっと興味深く読み進めることができるでしょう。
そして、本書の最大の注目ポイントは、「成長なき時代」の通貨システムを提案したラスト。
貨幣自体に金利をつけるという、ゲゼルのアイデアが、電子マネー全盛の今ならできるかもしれない、という主張は、じつに刺激的。
これからの貨幣のあり方を考える上で、大いに参考になりました。
お金の本質を見極める上でも、勉強になる一冊だと思いますので、ぜひ読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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私たちが財布を持ちさえすれば気軽に外出できるのは、貨幣というシステムのおかげなのです
貨幣とは要するに「価値の乗り物」ですから、鉄道と同じで一定の手順を踏めば何でも乗せてしまいます。良いものも悪いものも乗せてしまうのです。ですが、それで貨幣を批判するのはお門違いというものでしょう
親しくしている家族と家族とが、多くの実が得られた年には他の家族に分け与え、少しの実しか得られなかった年には他の家族に分け
てもらうということを始めたのです
「肉の最善の貯蔵倉は仲間のお腹だ」(リチャード・ドーキンス)
助け合いは仲の良い家族の間でないと成立しませんが、パンの実が豊かに実る年と少ししか実らない年が、仲の良い家族の間に限って交互に現れるとは限らない
人々は来年の収穫に対して大きな不安を抱えているときほど、現在財を将来財に交換することに対して慎重になる
ウィリアム・バーンスタインは、世界的ヒットとなった著書『「豊かさ」の誕生』のなかで、成長へのギア・チェンジを生じさせた条件として、1.私有財産権、2.科学的合理主義、3.資本市場、4.迅速で効率的な通信と輸送の手段、という四要素をあげています
ゼロ成長の社会では、リスク分を差し引いた後で考える限り、高い利子率は長期的には持続できない
自由貿易の世界では、財政による景気刺激を行っても効果の一部は他国に流出してしまいます(中略)ブロック経済と財政出動のセットを選択した国々は、ほぼその順番に景気を回復させることに成功
現在の価値と将来の価値を交換するのが金融の本質
「リセット」が普通に予想されるような状況では、人々は蓄積とか投資とかに対して消極的になります
ゲゼルが考えたのは、紙幣にスタンプ貼り付け欄を作っておき、紙幣の保有者に保有期間に応じた枚数のスタンプを購入させ、そのスタンプを貼り付けておかなければ貨幣としての価値が維持できないと定めておくという制度
カエサルのものだけをカエサルに返す。そうした貨幣が競い合う世界の設計に成功したとき、貨幣に新しい未来が開けるはず
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『貨幣進化論』岩村充・著 新潮社
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◆目次◆
はじめに
第一章 パンの木の島の物語
第二章 金本位制への旅
第三章 私たちの時代
第四章 貨幣はどこに行く
おわりに──変化は突然やってくる
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