2011年11月8日
『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』 藤沢数希・著 Vol.2666
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【賛否両論】
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本日の一冊は、欧米の研究機関で計算科学、理論物理学の博士号を取得し、現在は外資系投資銀行でトレーディングに携わっているカリスマブロガーが、経済学の基礎知識をまとめた一冊。
経済学を学んだことのない人にとっては、◯◯学派や××学派の人たちがいろんなことを主張し、互いに否定し合う様子を見て、何を学んでいいか、どれを読んでいいか迷う人があるかもしれませんが、それこそ本書に書かれていることを応用すれば、「そもそも将来の株価や為替を正確に予想できたら、誰も学者なんていうしょうもないサラリーマンを続けるわけがない」わけです。
だから、いろんな人の理論や主張を読んで、実際に起こっていることと照らし合わせながら、自分なりの見方を身につけていけばいい。
本日ご紹介する一冊も、レビューを見る限り賛否両論ですが、それでも本質を突いた議論には、読ませる部分が多くあります。
サブプライムローン問題を、アメリカ政治がポピュリズムに堕した結果と喝破したり、格差の原因を解雇規制に求めたり、「搾取」の本質を違った角度から論じてみたり…。
マスコミの論調をそのまま受け取っている人間にとっては、斬新な主張が多く、違った角度から経済の本質をとらえることができると思います。
第5章「もう代案はありません」で主張している、「所得税と法人税をフラット10%」や、「年金は清算して一度廃止する」「解雇自由化で労働市場を効率的にする」「道州制にして日本にシンガポールをたくさんつくる」「教育バウチャー制度の導入」などは、それこそ賛否両論、議論の余地もあると思いますが、それでも読む価値は十分にあると思います。
これからの日本を考える上で、ぜひ読んでおきたい一冊です。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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2008年の金融危機までアメリカ経済はマクロで見れば非常に好調でしたが、それでも低所得者層へはなかなか恩恵が回りませんでした。そういった国民の不満を紛らわせる安易な方法として、アメリカの政治家は「国民全員にマイホームを」という政策をかかげました。(中略)よくわかっていない評論家が「市場原理主義の暴走」などと簡単に片付けようとしますが、金融危機の芽はこのようなポピュリズムに堕す政治介入の連続から生まれているのです
ネズミ講というのは、それがネズミ講だと人々が気づくまで、誰もが儲かっていると錯覚できるしくみなのです。その破綻の瞬間までに資金を引き上げれば丸儲けです
解雇を避けるための努力とは、新規採用をやめたり、パートや契約社員を整理したりして、従業員の解雇をなるべく避けたかということです。びっくりするかもしれませんが、日本の裁判所は、新卒を採用しないことや非正規社員を解雇することを積極的に奨励しているのです
最近何かと話題の「格差」については、規制緩和や市場原理がその原因だとよくいわれますが、これはまったくのデタラメです。ボリュームの点で、日本における重大な格差は、大企業の中高年正社員や公務員と若年層の非正規社員との格差で、これは市場原理が働かないから引き起こされています
国債の信用とはなんでしょうか? それは結局、国家の徴税権にたどり着きます
僕は効率的な資源配分がゆがみ、それゆえに長期的には潜在成長率が毀損されていくので、政府による財政出動(歳出面の財政政策)にはあまりいい印象を持っていません。また簡単に景気対策といいますが、多くの人が気づいていない大きなコストが発生します。それは将来の選択肢(オプション)がなくなるというコストです
GDPの数字は同じでも、民間が自分でやりたいことにお金を使うのは確実に人々を幸せにします。しかし、政治家や官僚が勝手に自分たちの利権にお金を使えば一時的にGDPは上がるかもしれませんが必ずしも国民が幸せになるとはかぎりません。この点でも政府支出の罪は重いと考えるべきでしょう
多国籍企業に比較的安い賃金で雇用されることが「搾取」というなら、今、世界で急速に成長し豊かになっている発展途上国はむしろ搾取されているからこそ豊かになっているのです
所得税と法人税をフラット10%にして、がんばる人に報いる政治をするという強いメッセージを世界に発すれば、日本はまだまだ優秀な人材や企業を惹きつけることができます
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『日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門』藤沢数希・著 ダイヤモンド社
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◆目次◆
第1章 マネーは踊り続ける
第2章 小一時間でわかる経済学の基礎知識
第3章 マクロ経済政策はなぜ死んだのか?
第4章 グローバリゼーションで貧乏人は得をする
第5章 もう代案はありません
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