『日本の優秀小売企業の底力』 矢作敏行・著 Vol.2705


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【日本の優秀小売企業9社のケーススタディ】
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地方に出張に行くと、東京ではほとんどお目にかからない、地場の有力小売店が目につきます。

ショッピングセンター「ゆめタウン」を展開する広島拠点のイズミ、福島県郡山市に本部を構えるヨークベニマル、「ハード」(金物・工具)と「グリーン」(園芸用品・農業資材)に絞り込んだ専門店を展開する米利(コメリ)…。

これら有力小売の実態をまとめた書籍があれば、ぜひ一度読んでみたいと思っていたのですが、その夢を実現してくれたのが、本日の一冊『日本の優秀小売企業の底力』です。

日本の流通研究の第一人者、矢作敏行氏が、長期財務分析を行い、ケーススタディとして、1.総合スーパー(全国、地域チェーン)、2.食品スーパー、3.コンビニエンスストア、4.ホームセンター、5.家具専門店等、6.家電量販店、7.衣料品専門店、8.百貨店、の8分野から、ベンチマーク企業を選出。

これら8社に、海外で活躍する湖南平和堂を加えて、計9社のケースを分析、その競争優位性の源泉を究明しています。

単発の打ち手に関するものではなく、「持続的競争優位性」にフォーカスした点が、名著『ストーリーとしての競争戦略』と似ており、好感が持てます。

※参考:『ストーリーとしての競争戦略』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4492532706

著者の結論は、<日本の優秀小売企業はそれぞれ独自の組織能力を有しており、それが競争上の「強さ」となっている>ということですが、その競争優位性が何であるかは、本書を読んでのお楽しみ。

各社の取り組みや創意工夫に、ベンチャースピリットをかき立てられる、そんな一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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大量出店を実現するためには、新市場の開拓が急務の課題となっていた。山陽道を東にのぼれば、自ずと関西地区に至る。逆に、関門海峡を渡れば、目と鼻の先に九州地方が広がっていた。イズミの選択は、九州進出だった

個店経営の主役は、パートタイマーである。その地域に暮らし、食生活をよく知っていることや正社員よりも労働コストを抑えることができるためである。ベニマルのパートタイマー比率(8時間換算)は84.7%と同業他社の平均値64.6%を大きく上回っており、パートタイマーも加わった全員参加型の店舗運営が最大の特徴

「チェーンストア経営のコツは、すべての商品カテゴリーではなく、特定商品カテゴリーで一番になること」を実践した結果であった。同業他社が店舗を小型化する際、商品カテゴリーを絞り込まず、ただ単にカテゴリー内品種数や在庫量を削減したのに対して、米利は商品カテゴリー自体を「ハード」と「グリーン」の2つに絞り込んで特徴を出した

コメリは現状打破のため、新規市場開拓に取り組んでいる。既存商品カテゴリーでは住宅リフォーム・建材関連と農業資材の2つに着目している。両市場を合計すると、市場規模は約40兆円にのぼっており、事業機会はまだ存在すると楽観視している

ニトリの狙う郊外店舗物件市場の場合、百貨店のような中心街立地の大型店舗と異なり、不動産市場での流動性が比較的高い。その意味では、ショッピングセンター内のテナント出店を含めて、既存店舗網の希少性はそれほど高いとは言えない。しかし、東南アジアの家具工場や、大規模物流センター網の経営資源としての希少性は、かなり高い

ヤマダ電機は銀行に頼らない市場からの調達に目を向けた。資本市場において、普通社債・転換社債を発行し、6・5億円を調達したほか、1990年、海外投資家向けにスイスフラン建ての転換社債で多額の資金調達を実現した

その後も、ヤマダ電機の機動的な出店戦略は続いた。都心回帰が進むと見ると、テックランド店の面展開を図ると同時に、同一エリア内に都心型のLABIを出店することで物流、人材、広告面での効率性をあげ、コスト面で競争優位性を築いた

PB商品をはじめとした独自商品の売上高比率が50%超の企業は、セブン-イレブン、ニトリ、ファーストリテイリングの3社

◆事例研究の分析結果から導き出される実務的インプリケーション(含意)
※一部紹介
1.市場戦略の有効性は時間軸において相対的である
2.業務システム革新で競争を差異化する
5.店舗規模ではなく、店舗数を評価する
7.小売企業におけるリーダーシップとは、現場主義の企業文化を確立することである

交通の要所に圧倒的な規模を有する大型商業施設のなかには、数十年単位の競争力を維持している例が相当数ある

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『日本の優秀小売企業の底力』矢作敏行・著 日本経済新聞出版社
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◆目次◆

序章 流通パラダイムの転換
第1章 イズミ:地域密着型経営の徹底
第2章 ヨークベニマル:全員参加型の店舗実行能力
第3章 セブン‐イレブン・ジャパン:単品管理に基づく連続的な業務革新
第4章 コメリ:独自業態の開発・展開
第5章 ニトリ:製・販・配統合型バリューチェーンの構築
第6章 ヤマダ電機:機動的な出店戦略と後発の優位性
第7章 ファーストリテイリング:
「スーパーセグメント」を深耕する商品調達ネットワーク
第8章 大丸松坂屋百貨店:店舗運営改革
第9章 湖南平和堂:現地市場への適応化
終章 事例研究のまとめ

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