『悪夢のサイクル』


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本日の一冊は、ジャーナリスト、経済評論家として活躍する著者が、日本で「ワーキングプア」が生まれた背景や、人心が荒廃した理由を明らかにした、注目の一冊です。

前段で格差社会の現状を俯瞰し、自殺者数や刑法犯の増加など、深刻な社会問題の存在を指摘。

アメリカで起きたイースタン航空倒産と、それにともなう従業員の自殺(26人が自殺)、日本の航空会社でも起きた無理なコスト削減と安全性の危機など、格差問題が社会に及ぼす影響の大きさを感じさせる内容です。

中盤からは、なぜ格差の拡大が起きたのか、その理由を、フリードマンのマネタリズムに求め、それがいかにして各国に悲劇をもたらして行ったか、つぶさに検証しています。

内容の中心は、経済理論と日本の政治・経済・社会ですが、これほどまでに理論とそれがもたらした影響をわかりやすく説いた本も珍しいと思います。

日本の政策を導く人々が、いかにあさましい人々なのか思い知らされ、絶望する向きもあると思いますが、最終章の希望に満ちたメッセージを読めば、少しは救われるはずです。

「賢い者が勇気をもって発言をしていく、そういう人々のいる社会が人類を本当にいい方向に導く」

日本がそういう方向に向かっていくことを祈りつつ、筆を置きたいと思います。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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富裕層にのみ、私立進学の道がひらかれているということは、結果
としての平等だけではなく、機会としての平等も今日の私たちの社
会は失っていることになる

規制緩和とは、ほんの一握りの非情でしかも貪欲な人間に、とてつ
もなく金持ちになる素晴らしい機会を与えること(ポール・デンプシー)

規制緩和は、中央と地方の格差をより大きくする

「労働」や「福祉」「医療」「教育」などの分野に対する規制の緩
和は、ひとつひとつ公共性との関係を慎重に検討しながらなされる
べきだった

今日、フリードマンのいわゆるマネタリズムの原則、「競争してい
る市場は安定している」「競争市場は常に公平だ」という前提は、
もう時代の現実に合わなくなっている

「かつて会ったフリードマンは、こうした極貧の中で苦労して生き
ていくユダヤ人たち、その中で病気で死んでいった人たちに対して
涙する人間でした。そしてそのうちのいったい何人がフリードマン
のように立派な家をつくることができたのでしょうか」(伊東光晴氏)

一九八六年から始まったバブルと、国、自治体、企業をあげての借
金競争、そしてバブルの破綻による、自治体、企業、金融機関の不
良債権の山、それを整理すると称しての「規制緩和」「自由化」と
いう「改革」。そのすえの弱小企業の淘汰、雇用の喪失、貧富の差
の拡大、外資の進出……。日本は、ネオリベラリズム・サイクルが
ちょうど一巡しようとしているところなのです

国家でもない、市場でもない、第三の道がある。国家が市場を計画
し、すべてをきめるのではなく、市場が人間を支配するのでもない、
第三の道。それは、人間が市場をつかいこなすという道です

「人を市場に合わせる」のではなく、「市場を人々に合わせて調律
する」ことをしていかねばならないということです。規制とは、そ
のためにおこなうものです

賢い者が勇気をもって発言をしていく、そういう人々のいる社会が
人類を本当にいい方向に導く

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『悪夢のサイクル』
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■目次■

プロローグ
第一章 未来は見通せていた
第二章 なぜ、私たちはルール変更を受けいれたのか
第三章 市場原理主義の起源
第四章 悪夢のサイクル
第五章 日本のシカゴ・ボーイズ
第六章 バブル再考
第七章 戦争との親和性
第八章 人間が市場を

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