『宮台教授の就活原論』宮台真司・著 Vol.2630


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【就活の原理とは?】
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本日の一冊は、社会学者であり、首都大学東京の就職支援委員長を務めた経験のある宮台真司氏が、まったく新たな視点から就職活動やキャリアを論じた一冊。

いわゆる就活マニュアル本ではなく、「就活の原理」を論じた本で、なぜこれまでの採用方法で組織がうまく行かないのか、なぜ「仕事=人生」の考え方ではダメなのか、なぜ適職を探してもうまく行かないのか、その理由が書かれています。

なかでも興味深かったのは、<皆さんが「自動車メーカーが好きだ」という時、「住宅メーカーが好きだ」を意味しません。でも住宅メーカーに連続変化するのです>というくだり。

つまり、現在のグローバル化に伴う市場変化や経営環境を念頭に置くと、会社が提供する商品やサービス、そして企業文化さえ、変わることがあり得る。

だとすれば、必要なのは「適応」ではなく「適応力」だというのです。

しかしながら、現在の就活で問題なのは、そこに学生の適職幻想が加わること。

リクナビなどの就職情報サイトをを使って、なるべくたくさんの選択肢のなかから「適職」を探す。

仮にそれが見つかったとしても、思っていたのと現実が違っていた、あるいは何らかの事情で会社の事業内容・仕事内容・文化が変わってしまった場合には、辞めてしまう。

いや、仮にうまく行っていたとしても、もっと良い選択肢を求めて失敗してしまう…。

こんなふうに、現在の就活には、ノウハウや人材の質以前の問題点があるのです。

本書は、現在の日本社会が抱える根本的な問題点を指摘し、われわれがどうすれば就職に成功できるのか、幸せなキャリアを築けるのか、間接的なアドバイスをしてくれています。

第8章に「すぐには役立たない就活マニュアル」とあるように、いわゆるノウハウはほとんど書かれていませんが、下手なノウハウ書100冊に勝る考え方が示されています。

就活生はもちろんですが、これからキャリアを築いていこうとするビジネスパーソン全般にもおすすめの一冊です。

ぜひ読んでみてください。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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グローバル化(資本移動の自由化)によって、社会環境の複雑性が上昇する一方で、今まで個人の負担を軽減していた市場や国家が不安定になるので、個人の選択能力と社会環境の複雑性の間を媒介する、共同体ないし共同性が大切になる

皆さんが「自動車メーカーが好きだ」という時、「住宅メーカーが好きだ」を意味しません。でも住宅メーカーに連続変化するのです。皆さんは、会社に就職する時、自動車メーカーに就職するとか、ゲーム機メーカーに就職するとか、思いがちではありませんか。それは、グローバル化=資本移動の自由化ゆえに激しく流動する市場環境や経営環境を念頭に置いた時、非現実的な思い込みなのです

企業も企業文化も、企業存続のために変わるかもしれない。だから「適応」ではなく「適応力」を求めざるを得ないのです

進化生物学の命題としてよく知られるように、「適応」しすぎると「適応力」が落ちます

企業の要求が「適応」から「適応力」へと変化すると就職活動の中身が変化します。とりわけバブル崩壊以降、採用試験が面接重視になったのが典型です。市場環境や経営環境が変化する中、コミュニケーション能力があることが以前よりも重要になったからです

仕事での自己実現機会はとても希少ですが、これを煽ることで、低成長時代の高付加価値化市場に相応しい人材の「動機付けと選別」を行います。そして「仕事での自己実現」競争に敗れた大半の成員には、代わりに「消費での自己実現」を提案するわけです

気がついてみると帰還場所も出撃基地も失っている。つまり本拠地を失っている。これを失った状態で「仕事での自己実現」に向けたリスキーなチャレンジができるはずもない

中高年になると、育児休暇を取得しなかった人ほど、仕事のパフォーマンスが落ち、最終的には育児休暇を多く取得した人のほうが生涯賃金も高くなる

「経済回って社会回らず」は経済を破壊し、「仕事回って家庭回らず」は仕事を破壊する

「スゴイ奴」との出会いこそ「ひとかどの人物」になる王道

むしろ適職志向が強いからこそ会社を辞める

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『宮台教授の就活原論』宮台真司・著 太田出版
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◆目次◆

第1章 なによりも”適応力”が求められている
第2章 仕事は自己実現の最良の方法ではない
第3章 自己実現より”ホームベース”を作れ
第4章 自分にぴったりの仕事なんてない
第5章 CMと就職情報サイトに踊らされない仕事選び
第6章 就職できる人間になる”脱ヘタレ”の心得
第7章 社会がヘタレを生んでいる
第8章 すぐには役立たない就活マニュアル

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