2007年1月4日
『天才の精神病理』
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本日の一冊は、古代ギリシアの時代から言い習わされてきたという、「天才と狂気」の問題に、精神医学の視点から取り組んだ名著。
精神医学を専門とする2人の著者が、ニュートン、ダーウィン、フロイト、ヴィトゲンシュタイン、ボーア、ウィーナーといった6人の天才科学者を徹底分析。
その思考と行動から、彼らの持つ精神病理を明らかにした、じつに興味深い一冊です。
なぜニュートンは微分法、色彩理論、万有引力などの原理原則を発見することができたのか、その動機は一体何だったのか。
なぜダーウィンは事実を重視し、自分の仮説に修正を加えることをいとわなかったのか。
彼らの成し遂げた偉大な発見と、それを生んだ精神病理との関係が、見事なまでに表現されており、いかに知性が精神と結びついているのか、思い知らされる内容でした。
天才たちが思わず取ってしまう行動とその裏に隠された精神病理、それを生み出した家族との関係…。
科学に興味のある人はもちろんですが、教育・マネジメントに携わる人にとっても、深い示唆が得られる一冊だと思います。
絶版とのことで、中古でしか手に入りませんが、ぜひ手に入れて読んでみてください。
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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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<アイザック・ニュートン>
彼の知的世界の本質をなす特徴は、われわれ精神科医の目から眺め
ると、分裂病圏に属する病者に固有な世界の捉え方にきわめてよく
似てくる。彼らも世界の本質を無媒介的、直観的に捉える。そして、
確実性は自己にとっては自明なのであるが、それを論理的に他者に
説明することは不可能で、妄想的ともいえる特異なやり方で、包括
的に世界の全体を説明してみせるのである
ニュートンは終生独身であり、生涯の大部分をケンブリッジ大学の
学寮の一室に起居してすごした。孤立に強く、うるおいのない環境
に耐えられる分裂病質的特徴は、ニュートンの生涯の最も明確な刻
印である
彼は生涯、接触する人物が自分にとって敵か味方かに敏感であった
<チャールズ・ダーウィン>
事実から出発する帰納性、自己の限界を意識した良心性、理論構成
の融通性、総合性が彼の学問の世界の基本的特徴である
起床から就寝にいたるまで時計仕掛けのような規則正しい秩序があ
り、病気のときを除いては死ぬまでこの習慣を頑固に守り通した。
また一度は実験してみないと気の済まぬ強迫的ともいえる実験癖が
あった
このような熱中性、徹底性、忍耐強さ、几帳面といった執着性格
(下田光造)の側面や、自己の強固な秩序に囚われる境界内停滞性、
高い自己要求の背後にとり残され自己不全感に悩む残留性などの、
メランコリー型(テレンバッハ)とよばれる側面はうつ病の病前性
格として知られている
共通の目的をもった同性のみの集団生活は、一般にうつ病者の生き
方に最も適ったものである
<ジグムント・フロイト>
幼時にもちえた母との密接な対象関係のおかげで不全感、良心性な
どの自責的な面が発展せず、そのかわり神経症的なものが前面に出
て、外部に対する攻撃の方に傾いたといえよう。彼が危機におちい
る状況は必ず彼の成熟への契機と結びついていた。少年の日の男性
としての自己決定、家庭をもつこと、父となることなど、彼に成熟
を迫る状況のたびに内面の葛藤は高まり、内面の攻撃性が不安をよ
びおこし、退行や回避的行動とともに多彩な神経症症状が発現する
のであった。しかしその中で彼は現実から全面的に撤退したり、葛
藤を無視したり抑圧したりはせず、まさに自己の葛藤状況を自覚す
ることによって危機を乗り越え、現実的解決と神経症理論の学問的
成熟へと自己を導いていったのである
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『天才の精神病理』
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■目次■
序にかえて
アイザック・ニュートン
チャールズ・ダーウィン
ジグムント・フロイト
ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン
ニールス・ボーア
ノーバート・ウィーナー
科学者の精神病理と創造性
あとがき
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