『人にはどれだけの物が必要か』鈴木孝夫・著 vol.2492


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【鈴木孝夫、ミニマム生活のすすめ】
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4122034655
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震災や節電の影響で、生活を見直す気運が高まっていますが、本日の一冊は、そんな現在のわれわれに、ピッタリの一冊。

言語学者の鈴木孝夫さんが、『人にはどれだけの物が必要か』というテーマで、自身の生活哲学、持続可能な生き方を紹介した、じつに興味深い内容です。

本書の冒頭には、トルストイが書いた『人にはどれだけの土地が必要か』という寓話が紹介されています。

広い土地を求め、バシキールへと旅立った貧しい百姓のパホームは、そこの村長にこんなことを言われます。

「あなたは好きな場所から、日の出とともに出発して、一日中歩き廻ったあとで同じ場所に戻ってくれば、それだけの土地があなたのものになるのです」

張り切ったパホームは、翌朝まだ暗い内に飛び起きて、東に向かって歩き出す。欲にかられて遠くに来すぎたパホームは、あわてて西
に走り出し、やっとの思いで元の地点に辿り着くが、その時彼は、既に息絶えていた。

「彼の下男はシャベルをとって穴を掘り、この男を土に埋めた。きっかりその穴の大きさだけの土地が、彼に必要な土地のすべてであった」

資本主義の原理に突き動かされ、私たちも、このような生き方をしていないか。

本書は、そんな反省を促してくれる一冊です。

最近は、「断捨離」がブームになっていますが、23万部のベストセラー『人生がときめく片づけの魔法』にもあったように、捨てる行為というのは、「本当に大切なモノを大切にするために、役割を終えたモノを捨てる」ものでなくてはならない。

※参考:『人生がときめく片づけの魔法』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4763131206

そして、本当に大切な物に関しては、長く使い、壊れたら修繕してまた使うという精神が欲しい。

著者の鈴木孝夫さんは、まさにこの考え方を提唱しているのです。

氏のように、「親戚や知人が不用だという物、捨てるという物を遠慮なく貰って使う」「他人がゴミや不用品として道端に捨てた物を、どんどん拾って使う」まではできなくとも、木材や食料、身の回りの自然など、日々お世話になるものを大切にするだけで、解決できる問題はたくさんあります。

この夏、目指したいのは、「不足でも、不満に思わない生き方」。

これを実践するために、ぜひ読んでいただきたい一冊です。

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▼ 本日の赤ペンチェック ▼
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できるだけ物を買わず、捨てず、そして拾い、手をかけて直すという生き方には、良いことがいくつもある。第一に、いま国中の自治体を悩ませているゴミを殆ど出さずに済む。次に物を買わないと、お金が余り要らなくなる

物から目が離れるため、他人の持っている物や流行に全く無関心でいられるから、自分流の個性的な生き方を、思う存分に楽しめる

考えてみれば、木が板や柱として使えるようになるまでには、一般に五十年以上の長い年月が必要なのだから、木材を使った製品は少なくとも同じ年月だけ使わなければ、自然の帳尻が合なくなるわけだ

歴史に残る大文明はどれをとっても、広範囲の原始林を徹底的に収奪し、破壊し、そして消滅させている

エジプトと度重なる戦争を行い、鉄器の高度利用で知られたヒッタイト、ペルシャと長い間戦ったギリシャ、カルタゴと対立し遂にこれを滅したローマ、そして黄河流域に大文明を築いた古代中国、そのどれもがみな、回復不能に近い大森林の消滅を版図の各地に残して、やがて自分も消えていった

窓を閉め切り、エアコンに頼る生活に馴れた都会人は、大木の天空高く張った枝張りのお蔭で、強い日射しが弱められ、根が地中深くから吸い上げた水を、膨大な量の葉が空中に蒸散するため付近の気温が二、三度も下るとか、更には騒音を吸収し、塵埃や煤煙なども吸着除去するといった大木の働きに殆ど関心を示さない

この二つの条件、つまり僅かな人手で多数を管理出来るタイプの動物であること、そしてそれが人間の食べる物を食べないこと、これら二つを満たすものとして、世界のどこでも食用としての家畜には、草食の群棲動物が選ばれる結果になったのである

主として近代の西欧から始まって、日本などにも拡がった人間の自由という考え方は、ひとたび目を人間の活動が繰りひろげられている舞台としての地球の現状に向けると、果して手ばなしで肯定できる公理なのかどうかが大変疑わしくなってくる

もし日本人が前述のような食料の無駄遣いを一切止めて、本当に人間に必要な食料だけを消費することを決心すれば、外国からの食料
資源輸入は大幅に減少する

自分の大学にいながら、目の前の空きカンやゴミに対して無関心でいられるのは、大学が自分のものという意識がないからだ。つまり欲がなさすぎる。欲が小さすぎるのである

私は現在、収入が少ないのにお金が相当余るのです。だって、何も買わない。使わない。拾って、直すから

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『人にはどれだけの物が必要か』鈴木孝夫・著 中央公論新社
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◆目次◆

まえがき
第1部
第一章 私の生き方―買わずに拾う、捨てずに直す
第二章 地球から緑が消える
第三章 家畜には草、ペットには残飯を
第四章 地救原理の導入を
第五章 地球は私のもの、私は地救人
第2部
人にはどれだけのものがいるか
―エネルギー・物質多消費文化への警告
国際化時代の環境問題
「地球化」を迫られる座標軸なき国家・日本
あとがき
私の一日

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